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金縛り
あの後ろ姿は…
いつも、この席から眺めてた背中。
昨日、見たのと同じ背中だった。
でも、声が違う。
彼の声は、こんなに低くない。
こんなに乾いた声色じゃない。
いつも、聞いてたから間違えるわけないはず。
背中がゆっくり回りはじめて、その横顔が見えた。
そこにあったのは間違いなく、彼の顔。
彼は立ち上がって、こっちにゆっくり近づいてくる。
ほんとに、昨日の再現…
「お前は人殺しだろ。自分だけ逃げるつもりか」
わたしは、また金縛り。
「もう携帯は投げれないな」
彼の右手にはわたしの携帯が握られてる。
「一緒に、こっちの世界にこいよ。なかなかいいとこだぞ」
これが彼?
何かがちがう。
わたしの知ってる彼じゃない。
ゆっくりと、机の下に両手を持っていき…
今だっ。
わたしは思い切りその手を振り上げる。
机が転んで、彼の足元に命中。
わたし、コントロールだけはいいみたい。
その隙に慌てて、教室を飛び出した。
校庭に出たところで、教室を振り返る。
あのときと同じように彼が窓から見ていた。
「また逃げるんだな、卑怯なやつ」
あんなに離れてるのに、声はすぐ耳元で聞こえてくる感じだった。




