思い出
わたしは、彼の机をぼんやり見ながら、いろんなことを思い出してた。
初めて告白された秋の夕日に照らされた公園のベンチ。
周りはカップルばかり。
2人とも、ガチガチに緊張して座ってたね。
最初のデートのとき、帰り道で、ふたりやっと手を繋いだ。
軽く握ってるだけ。
周りは寒いのに2人の手は汗ばんでたよね。
2人で過ごしたクリスマスイブに大晦日、そして誕生日にもらった生まれて初めての指輪。
みんな、いい思い出。
なのになんで、その気持ちが変わっていったの?
自分でも、わからなかった。
ほんとは変わってなんかなくて、
一種の気まぐれ、あるいは好奇心みたいなもの?
わからないから、ちゃんとあなたと話をしたかったんだ。
彼の机に向かって問いかける。
(わがままなやつ)
え!?
微かだけど声がした。
「…だれ?」
教室を見渡すが誰もいない。
「お前は自分勝手で、わがままなやつだな」
今度はちゃんと聞こえた。
声の方向は…
あの机。
「ねえ、だれ? どこにいるの?」
「この声をもう忘れたか…おれだよ」
その声が終わった、と同時に彼の机に人の後ろ姿がうっすら現れた。
次第にしっかりとした輪郭となり、ぼやけた焦点が合ったみたいに、はっきりと見えてきた。




