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子供心

現世で…


彼は父親にずっと虐待を受けつづけた。


母親が亡くなると、その虐待は激しさを増した。


このままじゃ、殺される。

子供心にそう感じたんだろう。


ある日の夜中、父親が寝ている隙に…


彼はそっと家を飛び出した。


夜中の薄暗い道を…


小さな体はふらつきながら歩きつづけた。

見つからない場所、追いかけてこない場所までいかないと。


少年は必死に逃げた。


だが明け方、さすがに力尽きて…


壁にもたれたように倒れてしまう。

ほとんど満足な食事を与えられてなかったのだから、それも当然。


夜が明けて、人通りも多くなってくる。

壁にもたれかかり体育座りしてる子供の姿。


みんな、チラッと一瞬は見る。

が、そこまで…


そんな姿の彼にだれも声をかけなかった。

手を差し伸べなかった。


子供が単に外で寝てるだけ、あるいは

悪いことをして家を追い出されたのか…


(ま、どっちにしろ関わらないのが正解)


(もうっ、こんな朝の忙しい時間に目障り)


心の声だけがして、みんな足早に去る。


彼にはもう「たすけて」

という声さえ絞り出せない。


頭を上げることさえできなかった。


うつろな目で、通り過ぎる人たちの足元をじっと見つめるだけ。


彼に心を開く場所、開いてくれる場所は最後までないまま…



そして、気づいたらこっちにいた。


自分が死んでるなんて、わかっていない。


現世のときの続きが記憶にあるだけ…


瘦せこけた弱々しい身体。


弱々しい目に、すがるような眼差し。


そのとき、おれは彼女のことを思い出して、


「おれは、お前の味方だ」


と彼に声をかけた。



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