独り言
部屋を出ていく彼女の後ろ姿。
その姿を裁判官Jは椅子に座ったまま、じっと見ていた。
ロボットと言っていた仮面の下には…
涙が潤んでいた。
「あの頃と、ちっとも変わってなかったな」
影になって追いかけた彼女の後ろ姿。
彼女との思い出は今も鮮やかに思い出せた。
Jは独り言のようにささやいた。
「ちゃんと最期までおまえを見守ったからな。あとは天国でゆっくりしたらいい。おれのやるべきことは、これですべて終わったよ」
仮面の向こうで、ふっと軽く息をついたとき…
「お疲れーっす」
後ろから声がした。
振り返ると別の仮面がそこに立っていた。
背丈は小さく、さっきの少女と同じくらい。
「ケイ、か。おどかすなよ」
彼はまわりから、Kと呼ばれていた。
裁判官Jの部下として働くようになって、彼についたあだ名。で、
Jの次の裁判官になる、との意味もあった。
「おい、お前もしかして見てたのか?」
「彼女の監視を頼んだのはあなたですよー、最後まで見届けるのは当然っしょ。つか、ジョーカーにもまだ心があったんすね」
といって笑う、K。
「ずっと、あれから見守ってくれてありがとうな」
「いやー、そんな義務みたいなんじゃないっす。 あなたがこだわった気持ちもわかったし。見ていても、ほんといい人だったですねー」
澄んだ声で言う。
少年のようなさわやかな声だった。
「じゃ、そろそろ交代しましょかー?」
「ん、交代? 」
「監視役はもう終わりっす、それが終わったら引退するんでしょ?」
そういえば、そんな話をしたか…
こっちの世界にきた当時、10歳の少年だったK。
突然、親から離れて一人でこっちに来たかわいそうな子供。
普通は誰もがそう思う。
でも…
彼の場合は少し違っていた。




