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お役所

そんな人生に正直、後悔はなかった。


「末期のガンです」


と告白されても死への恐怖は感じなかった。


元々、うちの家系は癌家系と聞いていたし、

実際に、祖父も母親もそれで亡くなった。


わたしは生き抜いたんだって、満足感のほうがあったくらい。


ま、突然の事故と違って…


ガンだったから余命もだいたいわかってたし、

その間にいろいろと考えることもできた。


少しずつ死ぬ準備ができたから。


事故で、突然に死んでしまった彼と違って…



ゆっくりと列は前に進んでいき、

いつの間にか建物のなかへ。


女の子が呼ばれて、その部屋に入っていく。


周りに目をやると…

他にも似たような部屋がいくつも並び、

その前に死んだものたちが順番を待ってる。


お役所で、手続きをして呼ばれるのを待っているときとか、

健康診断にきて順番に診てもらうまで、ドキドキしているのに似た感覚。


それにしても、多い数…


毎日、こんなにたくさんの人間を含めた、

生命ってものが消えていってるんだ。


改めて驚いてしまうけど…


こうやって地球上の数の調和ってやつが保たれてるんだろう。


そのぶんだけ、新たな生があっちでは芽生えることによって、か。


妙に真剣に考えてしまった、わたし。

ま、中身はおばあちゃんだし…


それも当然。


きっと今って険しそうな顔してるだろうな。

これじゃ、面接なら一発でアウトだよ。


って思ってた、その時に名前が呼ばれた。


タイミング、悪すぎでしょーー!


(ん? でも、女の子まだでてきてないよね、いいのかな)


と考えつつ、わたしは部屋に入っていった。

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