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この声

「あの指輪は、もういらないよな?」


この声は…彼の声。


えっ? 

わたしは耳を疑った。


「あれは、わたしの宝物。なのに、どうして?」


後ろから、また声がする。


「おれたちは、もう終わったんだ。あんな過去のものいるかよ」


さっきまで聞いてた彼の声、だけどなんか冷たい。


わたしは思わず問いかける。


「ねえ、あなたは彼なの?」


「お前、それもわからないのか」


わかるよ、わかってる、そんなことくらい。

…けど、さっきまでと違うの。


「あの指輪を返して、あれはわたしの宝物よ。あなたに奪う権利はない」


「宝物か。そんなもん、あいつにもらったらいいだろ」


あいつって、あの人のこと?

空き地でのやり取りを見てたんだ。

じゃあ、わかったでしょ。

ふたりはもう関係ないんだよ?


「あの人も殺そうとしてたんだね」


「もちろんだろ、お前たちのせいでおれは死んだ」


さっきと、ぜんぜん言ってることが矛盾してる。

声は彼の声だけど…中身は元に戻ってる感じ。


「ねえ、どうしたの? わたしを、ずっと守ってくれるんじゃなかったの?」


目の前に、彼が現れた。


「あんなやり取りを見せられて、そんなことできるか」


あんなやり取りって…手をつないだこと?


「あれは、感謝の意味。それだけだよ」


「おれは、これから先もずっと、あんな場面を見させられるんだろ。もう、うんざりだ」


「そんなことない。わたしは今も、あなたが好きなの!」


「死人を好きって…この世にいない人間はみんな、そのうち忘れられていくだけさ」


彼は吐き捨てるように言う。


わたしは、違う!

そう叫びたかった。


でも…

たしかに、これから先、ずっとひとりでは生きていけない。彼の言うとおりかもしれない。


反論できないわたしは、彼につぶやく。


「…じゃ、やっぱりわたしは死ねばいいんだね」



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