帰り道
さらに…
彼の優しい声が心に届いた。
「いつも、そばにいるんだ。愛するひとのそばにいて、その人生を見守るんだから…おれはこれからも幸せなんだからな」
夕日が消え、影が消えていく。
同時に声も止まった。
あなただけ言いたいこと言って…
消えるなんて、あなたも自分勝手だよ。
わたしはひとり立ったまま。
でも、背中から抱きしめられてる温もりを感じる。
あのとき落ちているときに感じた風のように。
わたしの心はまだまだ苦しいまま。
でも、わたしも死んだらだめなんだね。
死んだら彼に怒られる。
わたしは、生きていくんだ。
罪を感じるなら生きて、返すべき。
前のわたしは、さっき死んだんだ。
今からは…
新しいわたしに生まれ変わるんだ。
帰り道、日がすっかり落ちて街頭が照らされる。
振り向くと長く伸びる、わたしの影。
それを見つけてわたしは彼が死んでから初めて笑った。
自分の影に笑顔で言った。
「ずっとわたしを見守っててね。あなたががっかりしないよう、しっかりと生きていくよ」
わたしはゆっくり歩き出す。
影はちゃんとついてきてくれる。
二人でデートをしてたときのことを思い出した。
あなたは、わたしのゆっくり歩くペースに合わせていつも歩いてくれた。
「なんか、あのころみたいだね」
影にささやく。
懐かしい感覚を思い出しながら…
わたしはいつもよりゆっくり家路に向かった。




