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決めた
これは…
わたしの足の影が、わたしより先に進んでる。
その通りに、後からわたしの足が進む。
わたしは、後ろを振り向いた。
彼はいない。
ただ、さっきと同じ黒い物体が目に入った。
それは…
わたしの影。
影がわたしの体を操っている。
足を止めようとするが、体は反応しない。
「あと、少し、あと少しで全てが終わるんだ。早くいけよ」
少しいらついた声。
確かに、影のほうから聞こえた。
彼はわたしの影になってとりついたのか。
それじゃ、逃げれないのも当然だね。
わたしは、自分の立場を理解した。
そして…納得した。
じゃあ、一緒に死ねるんだね。
ひとりじゃない、彼と一緒なんだ。
そう思ったら怖さが少しずつおさまってきた。
わたしは、顔を上げた。
向こうから大型のトラックが走ってきてる。
あれだ、わたしは決めた。
影に操られないで、自分の意志で道路に飛び出す。
「やった、おれの勝ちだな」
彼の声がした。
勝ち??
わたしは、負けたの?
何に?
トラックがすぐ前に近づく。
クラクションの音が耳を突き刺す。
そのとき、また暖かい風が吹いて…
わたしの体を押し返した。
「やめろっ!」
叫び声がわたしの耳に届いた。




