ナイフ
三年のクラス替えで一緒になったあの人。
彼と違って積極的でクラスの人気者で…
いつも周りまで楽しくさせる
ムードメーカー的な存在。
彼はその横でいつも微笑んでた。
少しシャイな彼とは対照的。
でも、二人は親友でお互いを認めていた。
いつも二人は一緒にいた。
そんな二人の関係がいいなと思って、
二人を見てたはずだった。
わかってたけど、行動は矛盾。
いつからか、あの人が気になりはじめ
視線はそっちにばかり。
あの人は、それに気づいた。
いや、わたしが気づかせたんだ。
告白をされて、わたしは結局、
その気持ちを受け入れた。
「ぼくから話すよ」
と言われたが、これはわたしの問題。
あの人はもう話はついたからと言ったが、
わたしの気持ちは納得していない。
自分がちゃんと伝えないと。
さっきの彼の笑顔を見てますます
その思いは強くなった。
罵倒されたら、どれだけすっきりしただろう。
覚悟は決まった。
彼に自分ではっきり伝えよう。
彼の足音が近づいてくる。
彼が戻ってくる。
ドアが開いた。
わたしは真っ直ぐ彼を見た。
彼は変わらず笑顔。
ただ…
その右手にはナイフが握られていた。
わたしは、声がでない。
彼はそのまま近づいてくる。
罵倒とかじゃなく、これが彼の
怒りの表現の仕方なんだ。
わたしは、携帯を慌てて取り出す。
「あいつに、連絡か…」
えっ…違う。
警察にかけたかっただけ。
完全に彼を逆上させてる。
少しずつ、近寄ってくる。
逃げ場はない。
「お願いだから、近づかないで」
わたしが悪いのに、なんかセリフ
が矛盾してる。
「完全に嫌われたな」
彼は小さくつぶやく。
そんなんじゃない。
嫌いなら、会いにこなかった。
会って話したかった。
わたしの、わからないこの心が
わかるかと思ったから。
わたしは、まだ迷ってるんだ。
だから、話したかったのに…
こんなこと、考えてなかった。
でも、わたしが彼から離れて
あの人に気持ちがいったんだから
この状況も仕方ないか。
でも…
わたし、まだ死にたくない。
とっさに、持ってた携帯を彼に投げつけた。
携帯が彼の顔に当たる。
鈍い音がした。
あっ、と思ったが彼が顔をおさえたすきに、
ドアに走り、そのまま階段を降りる。
追いかけてくる気配はない。
わたしは、玄関を出た。
走りながら一度だけ、振り返った。
窓からわたしを見てる彼の姿が…
そこにあった。




