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温もり
わたしは落ちていく。
指輪をぎゅっと握りしめる。
これが、わたしの遺品になるなら…
わたしは、きっと幸せだよ。
落ちる速度がだんだん加速。
と思ったとき、背中に風を感じた。
下から風が吹いてくる。
とっても、強い風。
でも、暖かい空気が。
落ちる速度がゆっくりになる。
木の葉がひらひらと舞い落ちるように…
わたしの体がゆっくりと落ちていく。
2階を通り過ぎるときには…
まるでだれかが背中を抱きかかえている、
そんな感覚だった。
そして、寝かされるようにそっとわたしの体は芝生の上に、止まる。
これは、やっぱり幻覚?
だから、わたしは死なないようになってるの?
わけがわからなかった。
わたしは、ゆっくりと立ち上がりもう一度、家に戻った。
鍵は開いている。
部屋に入ると、机の引き出しは開いたままだし、窓も開けっ放し。
幻覚じゃ、ないみたい。
じゃ、あれは何だったの。
さっき感じた暖かい空気。
あれは人の温もりに似ていた。




