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掴んだ

キラリと光るものが宙を舞う。


あれは、彼からもらった最初の指輪。

すーっと窓が開き指輪がゆらりと、そこに向かう。


「こんなもん、もういらないよな」


いや、違う。あれはわたしの宝物。

別れたからって、捨てられるわけない。

初めての指輪なのに…


やっぱり、こいつは彼だ。

認めたくないけど、完全にわたしの性格を見抜いてる。


わたしは、指輪を追いかける。

ベランダから少し離れたところを、ゆらゆら。

手を伸ばすが届かない。


わたしは、ベランダに片足をかける。

下は見ないように。


「あと少しだぞ、頑張れよー」

と彼は楽しそうに声をかける。


言われないでも頑張ってる。

こっちは必死なんだ。


あの指輪はわたしの思い出。

人生、初めての指輪。


あの後にも、もらったけど…

あれは特別なんだから。


片足を完全にベランダにかけ、またぐようにして、手を伸ばす。


あと少し…


そのとき、スーって風が吹いた。

指輪がこっちに揺れて…掴んだ!


「あいつまた、邪魔しやがって」


ビリビリッ。


指輪に電流が流れた感覚。

思わず手を開く。


あ、落ちていく。

指輪に手を伸ばす。

体重が前にかかる。

指輪をまた掴んだ。

と、同時にわたしの身体のバランスが崩れた。


「そんな、ボロボロのがらくたに、ばかなやつ。じゃな」


がらくたじゃない。

あなたがくれたのに。

これはわたしの宝物。


何年たっても人生初の指輪はもう、もらえないんだよ。乙女心、わかってないな。


わたしは、体を支えきれない。

このままじゃ落ちていく。


やっぱり、やつの思い通りか。

ま、いいよ。

この指輪と一緒ならね。


わたしの身体は宙に投げ出された。



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