手招き
家に到着し、鍵を開ける。
ほっ。
崩れるように、玄関に思わず座り込む。
すると…
「おかえり」
この声はやつ。
だけど、身体は疲れきって彼の足元を見るのがやっと。幽霊なのに、足あるんだね。
彼はにたにた笑いながら、言う。
「さっきは、あと少しだったな。肝心なとこで、邪魔が入った」
邪魔って、なに?
もしや、これも幻覚?
なんかさっきより、彼が黒っぽく見える。
気のせい?
彼はわたしを手招きする。
「ま、上がりなよ。まだ誰も帰ってこないよな」
自分の家みたいに言う。
やっぱり、彼なんだ。
家のことを知ってる。
たしかに今日は、両親とも帰りが遅い。
「ここって、6階だったよな?」
何が言いたいかすぐに悟った。
次は、飛び降り自殺か。
「さっきで慣れただろ」
わたしは答えないで、自分の部屋に向かう。
わたしの部屋の窓の向こうはベランダ。
でも、彼なら知ってるはず、わたしが高所恐怖症だって。
自分の力じゃ無理。
すると、彼は言った。
「制服を、脱げよ」
思いがけないセリフ。
何を言ってる、こいつ。
幽霊が犯せるの?
「おれたちが付き合ってたの、知ってるの、あいつだけだろ?」
たしかに、友達も親も知らない。
「それじゃ自殺の理由もわからないだろし、面白くないから…襲われてベランダに逃げて落ちた、のがリアリティあるよな」
なるほどね、この変にこだわりあるというか、
賢いというか、彼らしい発想だよ。
もちろんわたしは無視。
すると、制服がビリビリと避けていく。
「これくらいの力はあるんだよな」
いわゆる、ポルターガイスト現象ってやつ?
上半身がはだけ、スカートも切り裂かれて…
たしかに、襲われた感じに見える。
でも、肝心のわたしが動かないと意味ないよ。
ギシッ…ギシッ…
わたしの机の引き出しが少しずつ開いてる。
あれは鍵がかかってたはず。
あ!




