彼の家
足元はふらり、ふらり。
やっと目的地に到着。
エレベーターのボタンを押す。
6階のボタンが点灯。
上へと動き始めると…
立ってるだけなのに体がさっきよりも、
ふらふらと揺れて止まらない。
エレベーターは止まる。
が、わたしの体は揺れたまま。
でも、もうあと戻りはできない。
ゆっくり、ゆっくり進んで…
彼の家の前まで、来た。
なかには彼が待っている。
親はまだ帰っていないはず。
行きなれた彼の家。
でも、玄関の前で止まったまま。
なかなか、チャイムが鳴らせない。
これじゃ不審者。
そのとき…
コツコツ、
誰かが歩いてくる足音。
反射的にチャイムに手を伸ばした。
彼はいつもの笑顔で、
わたしを出迎える。
彼の部屋に通され、
いつもの場所に座る。
周りを見渡す。
落ち着く場所。
二年間、見てきた景色。
彼が正面に座る。
わたしは小さく会釈。
明らかにいつもと違う反応。
彼もわかってるはず。
「で、話って…?」
表情はいつもと変わらない。
…あえて聞いてくるんだ。
きっと、知ってるはずなのに。
わたしは、無言。
言ったらきっと、泣く。
彼でなくわたしが…
あなたは悪くない。
わたしが悪いだけ。
あなたの親友を好きになった。
わたしはあなたを裏切った。
あの人はそのことをあなたに話した
と言った。
だから、あなたにはもう関わるな
と言った。
でも、ちゃんとしたいから。
連絡してこうやって来たけど…
あなたは、いつもの笑顔。
なんて、辛すぎる。
ずっと黙って下を向いてるわたしに
彼が声をかける。
「よかったな、あいつはいいやつだ」
なんて返したらいいの。
彼の顔、まともに見られない。
「のど、乾いただろ。待ってて」
彼は立ち上がって部屋をでていく。
ゆっくり顔を上げて後ろ姿を眺める。
見慣れた背中。
いつも、あの背中に抱きついてた。
見慣れた腕。
いつも、あの腕をつかんで手を
しっかり握っていた。
一年のときに、付き合って
もう二年が過ぎたんだ。
高校を卒業したら、結婚したい
早く高校を卒業したい。
その日まであと3ヶ月だった。
あと少し…
本気で思ってたのに。
わたしはわたしの心が
わからない。
自分でも、信じれない。
他の人を好きになるなんて
思ってもなかった。




