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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最後の咆哮~ベルリン1945~

作者: 黒鷹商会

初めて投稿ですが出来の方はご容赦を願います。感想はどうぞよろしくお願いします。

雷鳴の嵐のような砲撃がやんだ。それまでの轟音がウソのような無音の世界。



土砂と粉塵の舞うのが収まった視界の先には廃墟のベルリンの町が広がる。



「来るぞ!戦闘準備!」



車内には彼を含めて5名。全員が所属の違う寄せ集めで編成されているがベテラン揃いだ。

(そういったらこの戦車もだがな)そう戦車長は胸の中で苦笑しながら思った。



乗っている戦車はⅥ号戦車B型ティーガーⅡポルシェ砲塔型。通称『ケーニヒスティーガー(王虎)』

被弾して遺棄された物を再生させた中古品。



燃料をよく食うのが玉に傷だが稼働率が高く機動力も見かけよりも良好な頼もしい戦車だ。



そう思いつつキューポラを覗いているとお客さんが来た。



「砲塔10時、T-34多数!急げ!」



エンジン音が高まり砲塔が回る。廃墟となった町の通りをT-34の群れが進んでいる。



「撃て!」



砲手が発射レバーを引き、轟音と共に砲尾が後ろに突き出すように後座して薬莢を吐き出した。



発射された88mmの砲弾は車体に命中しT-34を撃破する。



「次、砲塔零時!連続射撃!」



「ヤボール!ヘルコマンダー!」



照準鏡を覗いている砲手が返答する。発射。命中。排莢。再び装填。発射。



またたくまにT-34の群れを次々とスクラップに変えた。



ハッチから身を出して双眼鏡で周囲を確認した。廃墟の向こうに戦車の群れが見えた。



「続けて射撃!JS-2が混じっているぞ!JS-2から殺れ!」



「ヤ――!」



砲手が答えたと同時に発砲。JS-2に命中。車体から噴き出した爆炎が砲塔を天高く放り上がった。

発砲のたびに衝撃が砲塔を揺さぶる。



装填手の「装填!」という叫びとともに再び発砲。



発砲を続けているとT-34の砲弾が命中した。T-34の放った85mmの砲の射撃が砲塔に命中した。



衝撃で砲塔内に埃や硝煙が舞い上がる。戦車長は略帽を被った頭を思い切り壁面にブチ当てた。



だがティーガーⅡの装甲を貫くのには充分ではなかった。



「被害報告!」



車長の言葉の代わりに砲手は命中させたT-34に砲撃を放った。



その後、鋼鉄の虎は赤い野獣の群れを次々と撃破していき一方的な殺戮を展開した。







「何台、撃破した?」



戦車長が聞いた。眼前には10輌以上の戦車がスクラップの塊に変わっていた。



「10まで数えましたがそれ以上は覚えていません。ですが通算撃破数は100輌を超えましたね」



砲手が答えた。



「そうか・・・・・・諸君。100輌撃破で丁度いい。総統が死んだ今、祖国には果たす義務は果たしたと思う。これからどうするかは諸君達の自由だ。各自、好きにして欲しい」



「戦車長はどうします?」



装填手は聞いた。



「私は・・・・・・コイツが好きだからな。それにベルリンは故郷だ。最後まで付き合うさ」



「なら、私も残りますね。ずっと突撃砲に乗ってましたから最後にこんな上等な戦車に乗れて最高です」



国防軍の突撃砲乗りの装填手は人を喰ったような剽軽な笑みを浮かべながら言った。



「私はSSでしかも白軍(ロシア帝国軍)出身ですから捕まれば嬲り殺しですからね。それにアカ共は嫌いですし」



白軍(ロシア帝国軍)出身の東部戦線帰り武装SSの砲手が言った。



「露助に捕まってシベリアで木を数えたくないですから最後まで付き合います」



ヘルマン・ゲーリング師団の操縦手が生真面目そうに言った



「ベルリンを枕に討ち死にも悪くないです。まぁ、最後に海を見たかったですが」



第1海軍歩兵師団の無線手が苦笑しながら言った。



「・・・・・・・全員、バカばっかりだな」



そう苦笑しながら国防軍の戦車長は言った。



「それは車長もですよ。言いっこ無しです」



装填手が笑いながら言った。



「ッ!車長!敵の部隊が此方に向かっています。編成はJS-2とJSU-152の混成。連中、アニマルハンターの部隊を送り込んで来やがった!」



敵の無線を傍受してた無線手が叫んだ。



「装填手。残弾は?」



「30発程です。あと1戦分はあります」



装填手はそう言いながら弾を込めた。



「そうか。諸君。行くぞ!パンツァー・フォー!」




時に1945年5月1日。ベルリンでの出来事。

初めての投稿です。小説の出来に関してはご容赦を願います。感想は大歓迎です。


因みに彼等は何とか無事にベルリンから脱出に成功。

一行は連合軍に投降する為、ライン川を目指し波乱万丈の道中ながら無事に投降した。

そして戦後の彼等の歩み。


ユンカー出身の戦車長は実家の農場を継ぎワイン作りを営む。

後に“パンツァー・リート”という名前の白ワインを販売する。


砲手は戦後、反共産主義で朝鮮戦争やベトナム戦争に参加。

北ベトナムの捕虜になり自分を捕虜にしたベトナム女性兵と結婚。

北ベトナムの機甲部隊を率いてアメリカと戦い、後にベトナム社会主義共和国の機甲教育官になる。


装填手は戦後、ドイツ連邦軍に在籍し無事に階級章を置く事が出来た。


ヘルマン・ゲーリング師団の操縦手。ルフトハンザドイツ航空のパイロットになった。


第1海軍歩兵師団の無線手。貨物船の船長になった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きを読んでみたいなぁ… ベルリンからの脱出劇とその後を短編連作みたいな感じで
[良い点] 初投稿とは思えない程の文章力 [一言] 僕も戦車が大好きなくちでして、とても面白く読ませて頂きありがとうございます。 個人的にはティーガーⅡのヘンツェル砲搭型が好きです。 質問ですが、主人…
2014/01/18 21:18 退会済み
管理
[良い点] 戦車、戦記への愛が伝わってきます。 がっつり濃厚な専門用語世界ですが、文章量が多くないので私の頭がオーバーヒートする前に読み終わるのが丁度いいです。 [一言] 漢の書く世界を垣間見せていた…
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