第七話
やばいな・・・
廊下ではヴィルヘルムさんと華欧が戦闘をしていた
・・・・・・別にそれ自体が問題ではない
問題はその戦闘の内容だ
「どうした?終わりか?」
「・・・まだだ、もう一度・・・」
戦闘は華欧が圧倒的に優勢だった・・・・・・
昨日聞いた情報では、二人とも同じ六年生で、華欧が総合では学年三席でヴィルヘルムさんが学年次席で、実技では華欧が学年主席、ヴィルヘルムさんが学年次席と聞いた
しかしこの試合はそうとは思えないほど圧倒的だった
「そんな攻撃では、俺に傷一つ付けれないぞ」
「そうか・・・ではこれならどうだ」
ヴィルヘルムさんの足元に黄色い魔方陣が浮かび上がる
「集まれ風の精霊よ、固まりなして力となれ
来たれ雷の精霊よ、我にあだなす者を滅ぼせ、轟け雷」
これは風の亜種、雷の魔法だ
「そうきたか・・・」
華欧の足元に赤色の魔法陣が浮かび上がる
「来たれ火の精霊よ、我にあだなす者を焼き尽くせ、爆ぜろ灼」
華欧の周りが炎で包まれる
・・・そういえば魔法が発動すると足元に魔法陣が浮かび上がるんだったな・・・
戦闘に集中していると案外気が付かないものだ・・・
・・・と、今はそんなこと考えている場合じゃなかった
ヴィルヘルムさんが放った雷魔法は華欧の周りに広がった炎の前にかき消された
これが華欧の実力か・・・
デュートリヒさん達が戦うなと言った理由が分かった・・・
強すぎるんだ・・・華欧は・・・
ヴィルヘルムさんが本気で戦っても勝てない
勝てないどころか全く歯が立たないなんて・・・
「仕方が無い・・・」
ヴィルヘルムさんが華欧に向かって突進する
無謀すぎる気もするがヴィルヘルムさんも馬鹿ではない
何か策があるはずだ・・・
「そうくるか・・・いいぞ、来い!迎え撃ってやる」
華欧は魔具を構えて迎え撃つつもりだ
ここで余談、華欧の魔具は刀だ、ヴィルヘルムさんの魔具は長剣だ
リーチは断然ヴィルヘルムさんの方が長い。
ヴィルヘルムさんは華欧のそばに来ると魔具を構える
対して華欧はヴィルヘルムさんに真上から刀を振り下ろす
ヴィルヘルムさんはそれを剣でいさめると・・・
「お前なんかに構っていられるか・・・」
速足でその場を去っていった
・・・え?、逃げた?
「さっきのあれ、逃げてるよね・・・」
クラルも驚いた表情をしている
「まさか・・・あれも作戦だろ・・・」
作戦であってほしい。まさか敵前逃亡なんて事をするわけが・・・
「ちっ・・・逃げられたか・・・」
華欧がいらだったように言う
やっぱり逃げたんですよね・・・
「だったら仕方が無い・・・そこにいる雑魚を潰しすか・・・」
あ・・・ばれてた?
「止まれ華欧、後輩に手出しはさせない」
・・・?誰だろう?誰かが華欧に話しかけている
「おいおい、次はお前かよ・・・お前は俺の実力を知ってるだろ?お前は俺に勝てないことぐらい分かってる賢い奴だと思っていたんだがな・・・」
「なにがあろうと私は生徒会副会長なのだから、目の前で生徒会執行部のメンバーがやられそうになっていたら助けないわけには行かないでしょう」
「ああ、はいはい。そうですね、そうだろうね。まあ実際に戦ったら分かるよな・・・
6年次席が勝てなかった奴に5年次席が勝てるかどうかをなぁ!!」
「「魔具発動!!」」
どうやら戦闘が始まったようだ
廊下から剣と剣の打ち合う音が聞こえてくる
しかし一体誰が戦っているんだ?
話し声から察するに女の人なんだが・・・
ひょこっと顔を出してみる
戦っている女性の方を見てみる
どうやら一回転しているようで背中しか見えない
背中にすらっと伸びたきれいな銀色の髪が美しい・・・
そして二人はまた一回転をした
今度は顔が見える
燃え盛るように美しい緋い瞳、吸い込まれるような唇・・・って俺はなにを言ってるんだ・・・
しかしやはり華欧は強い・・・
段々と押され始めている
女性の足元に茶色い魔法陣が現れる
「来たれ大地の精霊よ、我にあだなす者を砕け」
女性の周りの大地(校舎)が盛り上がる
華欧がそれに気をとられていると・・・
華欧の腹に風魔法が直撃した
「ぐふ・・・なんだ?・・・お前たちか・・・」
華欧が後ろを振り向くと
コンテューヌさんがいた
「まったく、一人で勝てるわけ無いでしょ」
「ごめん、急ぎすぎた」
「もうすぐデュークもくるからそれまでの時間を稼ぎましょう」
・・・この人たち二人掛かりでも勝てないということか、これは・・・
「僕たちも参加したほうが良いんじゃないの?」
後ろで現場を見ていたクラルが聞く
「それよりもやるべきことがありそうだ・・・」
クラルのほうを見ると近づいてくる風紀委員が数名・・・
今の現状ではあの二人の邪魔をさせるわけにはいかない
ならば俺たちで倒すしかないだろう・・・
「そうみたいだね・・・」
クラルも敵に気付く
「僕は生徒会執行部じゃないんだけれど・・・」
クラルは学級委員長だ
学級委員長は他の委員会とは全く違う独自の委員会
学級委員会に入っている
原則委員会対抗戦争に他の委員会が絡むのは禁止されているが
別にばれなければ問題ない
学級委員会も生徒会執行部と同じようなものだしな
「先輩、ここを通らせてもらいます」
リーダー格の奴が話しかける
相手の校章を見る。校章の色は青、つまり二年生か・・・
二年生なら実戦経験は皆無だろう・・・
ならば負けることは無い
「通りたければ俺たちを倒していけ」
「では、力ずくで行かせてもらいます・・・魔具発動!
2年生 桂木 文也、行きます!!」
元気があって良いね
まあ・・・名乗る必要は無いんだけれど・・・
さてどうしようか・・・
相手は4人、しかし全員二年生だ
「ここは僕に任せて」
クラルが自信ありげに言う
しかしクラルは学級委員、わざわざ勝てなくも無い相手に危険を犯すわけにも行かないだろう・・・
「いや、大丈夫だ、クラルは下がってろ・・・」
クラルの前に立つ
「3年生 学年主席 天和京介だ かかって来い・・・魔具発動!!」
俺の手に刀が現れる
風紀委員が三人でかかってくる
どうやらもう一人はクラルを警戒しているようだ・・・
ブン!!
おっと余所見をしている場合じゃない
連携がうまく言ってないといっても相手は三人気を引き締めてかからないと・・・
どうにか各個撃破できないもんかな・・・
相手の攻撃を避けながら隙を探る
しかし面倒くさい、一人専用の魔具持ちがいて間合いが違う
そして専用の魔具を持っているだけあって動きが違う
だが、それでも昨日戦った風紀委員のほうが早い
俺は相手の攻撃を紙一重で避け首筋に一閃、相手は地面に倒れこんだ
「あと二人!!」
声高々に叫ぶ
「ひ、ひぃぃ・・・」
どうやら一人は怯んでくれたようだ・・・
しかしもう一人は全く動じない
さすがは専用魔具持ちだ・・・
こういう時は先に怯んでいる方を倒してしまった方が良いだろう
そのあとにこいつを一対一で倒せば問題ないだろう
怯んでいるほうに電光石火で近づき腹に斬撃を喰らわす
これで二人目もグロッキーだ
残りは一人・・・専用魔具を持っている、名前は・・・桂木だったか・・・
桂木はじっとこっちを伺っている
そして・・・俺の間合いに近づくと一瞬で剣を振く
間一髪でそれを防ぐと無防備になった相手の腹に突きを入れる
これであいつもグロッキーだろう・・・
四人目は・・・クラルによって倒されていたのでここでの戦闘は終了だろう・・・
ガイン、ガイン
廊下で音がする・・・
おっと忘れていた
廊下を覗くとコンティーヌさんとあの女性が華欧との戦闘をまだ続けていた
しかし戦闘の内容はヴィルヘルムさんのときと同じ・・・
華欧が圧倒的に優勢だった・・・
「飽きてきたな・・・そろそろ終わらせるか?」
「だめね、もうこれ以上保ちそうに無いわ」
だめだやられる・・・
そう思った瞬間・・・
「遅れてすまなかったな」
・・・デュートリヒさん参上!!
場の流れは一気にこっちのものとなった
「華欧、ずいぶんやってくれたな・・・」
「デュートリヒのお出ましか・・・」
「今までの借りを全部返してやる、覚悟しろよ」
「お前との連戦は少しきついな、おいとまさせてもらおう」
「この状況で逃げれるとでも?」
「問題は無いだろう・・・なんせ下は風紀委員会が占拠しているからな・・・」
「下?・・・まさか!!」
「じゃあな」
そういって華欧は窓から飛び降りてしたの階に行った・・・
なんて人だ・・・
ミスったら死ぬぞ・・・
「ふう・・・去ってくれたか・・・」
デュートリヒさんがほっとしたようにため息をはく
「ひとまず安全だな・・・」
「そうみたいね・・・」
「ではとりあえず皆教室に戻ってくれ、もうすぐ昼休憩も終わるしな」
そういわれて時計を見る
昼休憩が終わるまであと五分といったところだ・・・
「解散か・・・」
皆散り散りに帰っていく
昼休憩だけでこんなに疲れるのか・・・
だったら放課後はどうなるんだ・・・
先が思いやられる