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詐欺師の手口を真似してみました

作者: 井上さん
掲載日:2026/11/06

名前を借りました



フィクションです

 私は、女神様から予言の力を授かった、貧乏男爵家の娘ノア。


私が受けたいくつかの予言を知った神殿に引き取られて、幼い頃から神殿で暮らしていた。


 婚約者バッファがいたが、バッファには恋人がいた。

侯爵子息で金髪碧眼のバッファと、金髪碧眼の伯爵家令嬢ナンドは幼馴染で、好きあっていたのに、予言の力がほしいバッファの父である侯爵が、私とバッファを無理矢理に婚約させた。




 私は神殿での奉仕をしていて、社交界には出ていない。

バッファとナンドの恋を邪魔する悪女と噂されているらしいが、どうにもできない。


 貴族の令嬢達から聞こえよがしに嫌味を言われる毎日だ。暇だなと思う。

 それに、婚約させた侯爵様に文句を言ってほしい。私には婚約をどうにかする権限はないのだから。




 バッファは、ナンドに予言の力がある振りをさせて、神殿に報告する前の私の予言を横取りした。


「予言を受けたらまず俺に知らせろ。俺が神殿に報告してやる」


 と言い出したから、怪しいとは思っていたのだ。


令嬢達が


「本当は予言を受けたのはナンド様なのに、あの悪女が横取りしたらしいわ」


 と言い出したから、やっぱりな、と思った。




きっと


「ナンドの予言があるから、ノアとは婚約破棄して、ナンドと婚約する」


 とか言い出すんだわ。






※※※


 俺バッファが、忌々しい婚約者のノアから横取りした予言は、最初の3回は当たっていたから、安心してナンドの予言にしてやった。



侯爵夫人が無くした宝石はどこにある


今年の学園の成績優秀者は誰


隣の国の王子が結婚



 隣国の王子の結婚式の招待状が王家に来た事で、ナンドの予言を王家に報告した。






 ノアがまた予言を受けたので、ナンドの予言として王家に報告する。


「王子の運命の相手は、隣国の王子の結婚相手」


「戦がおこっても勝てる」


「王国が繁栄する」




 この国ボルト国の王子ヘンリー殿下は、候補は何人かいたが、正式な婚約者がいなかった。


「隣国ワット王国の王子の結婚相手か…」


「結婚式の招待状をもらったのだ。結婚式に行って奪ってくれば良い」


「戦争になったとしても、勝てるのだ」


「国が繁栄するぞ」


 国王もヘンリー王子も大臣達も貴族達も、誰も何も疑いもしなかった。






 呼ばれた結婚式の日に、ヘンリー王子はワット王国の王子の妻を奪おうとし、阻止された。


「他国の王太子の妻を奪おうとは、戦争でもしたいのか?」


 ワット王国の大臣達から非難されたが


「運命の相手だ寄越せ!戦争も辞さない!」


 ヘンリー王子や側近や護衛達は強気だった。


「予言で勝てるとあるから戦争だ!」


 ヘンリー王子はボルト国に帰ると、戦争の準備を始めた。




最低限の準備をし、ワット王国との国境へ行くと、既にワット王国の騎士団が勢揃いしていた。


 ボルト国は、長く平和だったから、軍事も訓練も緩く、防具も兵站も物資も心許なかった。


 補給路を断たれ、兵力も敵わず、ボルト国は10日で負けた。10日も、よくもったものだ。


ボルト国は、賠償金の支払いで窮乏することになった。




「予言を信じたからだ!」


「予言は嘘だったのだ!」


「詐欺師め!」


 非難されるバッファとナンド。


「あいつめ!嘘ついたな!」


 バッファは、ノアを逆恨みし、殺そうと神殿に向かったが、ノアは既にいなかった。






※※※


 私ノアは、すでに隣国ワット王国へ逃げていた。


 女神様の予言で動くとワット王国のの第2王子に言ったから、戦争の用意をしていたのだ。

 ヘンリー王子達が、ボルト国に帰ってから戦争の準備をしたのに対し、ワット王国は、半月を掛けて準備していた。

 軍事訓練も強化して、どのルートから攻撃されても大丈夫なように、作戦も数多く立てられていた。




 私が最初にワット王国の王城に行った時は、門番が、国王に繋いでくれなかった。

 押し問答してたら、通りがかった美丈夫から声を掛けられた。


「女神様の予言を信じたボルト国が、結婚式に王子の妻を奪いに来る」


 と言っても誰も信じなかったが、第2王子は


「どうして?」


 と聞いた。


「私が受けた女神様からの予言の言葉を奪い、予言者となった令嬢が、国に予言を報告したからです」


「予言を奪う?」


 第2王子ジーメンスに興味を持たれた。私は、ナンドの予言の真実を話した。これから起こるだろう事も。

だから、間に合ったのだ。


 これも、女神様の采配なのだろう。






「良かったのかい?祖国が大変なことになってるよ」


 銀髪に銀色の目をした美丈夫のジーメンス王子が言った。


「私の力を利用するから自業自得です」


 私は特に気にもしていなかった。


「そうだけど」


 ジーメンス王子は、不満そうだ。

私が受けた予言を奪われた事に、ずっと怒っていた。人の気持ちが分かる良い人だと思う。


「女神様が『そう言え』と仰ったのです」


 私は簡単に種明かしをした。


「そうなんだ?」


 ジーメンス王子は首を傾げた。


「いくら王子の運命の相手でも、隣国の王子の妻ですよ?普通の常識があれば奪ったりしませんよ」


「いやでも、運命の相手なら、やっぱり…話し合いはするかも…?」


 ジーメンス王子は、悩みながら言った。


「人の幸せを壊してでも、結婚する?」


 それは、人としてどうなのか?


「そ、そうか…」


「行動にうつした時点で、没落は決定なのです」


「そうだけど…」


「それに、ナンドの予言は当たっているのですよ」


「そうなの!?」


 私の言葉に、ジーメンス王子は驚いた。


「『戦がおこっても勝てる』どこの国とは言ってないのに、自分の国だと思い込んだ」


「確かに」


 ジーメンス王子は頷いた。


「『王国が繁栄する』どこの国とは言ってないのに、自分の国だと思い込んだ」


「確かに」


 ジーメンス王子はまた頷いた。


「ボルト国ではなく、ワット王国のことだったら、当たっているでしょう?」


「そうだな」


「予言とは『将来こうなるから対策しなさいよ』と女神様からの忠告でもあるのに」


 私は言った。


「良い事は大きく、悪い事は小さくするのが、予言を聞いた為政者の態度です。貴方のように」


 私はジーメンス王子を見た。


ジーメンス王子は、兄王太子の妻が攫われないように対策し、戦争の準備をし、ボルト国の侵略から国を守った。


「意味を考えず、傲慢に自己中心的に振る舞ったから…」


 ジーメンス王子は考え込んだ。


「私はよく『侯爵令息との婚約は身分不相応だ』と、貴族からも平民からも石を投げられたものです」


 神殿にいた頃が、遠い昔のようだ。


「は!?」


 ジーメンス王子は目を剥いた。

今にもボルト国の人々に、石でも投げそうな勢いだ。


「私が受ける予言で、国内での地位を高めたかった侯爵は子息バッファと私を無理矢理に婚約させた」


「うん。貴族ではよくあることだね」


「子息は元からの恋人ナンドと結婚する為に、私の予言を横取りし、恋人の予言にした」


「あぁ…」


「その時に、女神様が『私の予言を婚約者の恋人に譲りなさい』と仰ったのです」


「そうなんだ?」


「最初は、本当に当たっていたのですよ。だから、元婚約者も恋人も予言を信じた。でもそれが、女神様の罠だった」


「でも、何で女神様が罠を?」


「人の私利私欲の為に、女神様が利用されるのを喜ぶとでも?」


 私は無表情に言った。


「まぁ…そうだね」


 ジーメンス王子は、怖気づいたような顔をした。


「貴方も気を付けることね」


 私が言うと


「肝に銘じておく」


 ジーメンス王子は神妙な顔で頷いた。



読んでいただきありがとうございます


詐欺師って、相手を信じ込ませるために、最初は成功させて、信じたら失敗するように仕向けるらしいです?

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