第9話 向こう側から来た王
夜。
探索者ギルド本部。
館内は、
騒然としていた。
「最大級ゲート、
発生確定!」
「場所は湾岸第七区!」
「避難指示を最優先で!」
管制室のモニターに、
赤い警告が点滅する。
桜庭源次は、
画面を見つめていた。
「……来たか」
松岡が駆け寄る。
「通常の魔物とは、
反応が違います」
「知性体です」
桜庭は、
静かに言う。
「魔王クラスだな」
湾岸第七区。
巨大な歪み。
空が裂けたように、
黒い渦が回転している。
周囲の建物は、
すでに半壊。
探索者部隊が、
必死に防衛線を張っていた。
だが。
ゲートから現れたのは、
人型の影。
漆黒の鎧。
赤く光る眼。
足音一つで、
地面が割れる。
「王だ……」
誰かが、
呟いた。
影は、
ゆっくりと前を向く。
「この世界に、
勇者はいるか」
言葉が、
直接脳に響く。
探索者たちは、
凍り付いた。
その頃。
葛城家。
亮は、
テレビの速報を見ていた。
「湾岸第七区で、
正体不明の巨大存在が――」
亮は、
リモコンを置く。
「……来たな」
あみが、
不安そうに見る。
「行くの?」
「行く」
迷いは無かった。
「帰ってきて」
「必ず」
亮は、
フードを被る。
夜の街を駆ける。
現場。
探索者部隊が、
次々と吹き飛ばされていた。
影は、
一切本気を出していない。
「失せろ」
衝撃波。
防壁が、
紙のように砕ける。
そこへ。
「――止まれ」
低い声。
影が、
振り向く。
フードの男。
「勇者か」
「元、だ」
亮は、
剣を抜く。
空気が、
張り詰める。
「貴様は、
我を斬ったか」
「……ああ」
影は、
笑った。
「ならば、
試そう」
剣と剣が、
ぶつかる。
衝撃で、
ビルの窓が割れる。
亮は、
確信する。
――本体ではない。
だが。
分身でこの強さ。
影は、
後退する。
「面白い」
「再び、
遊んでやろう」
影は、
ゲートへ戻る。
静寂。
亮は、
剣を下ろす。
「……戦争だな」




