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第4話 近すぎる違和感

 


 朝。


 


 キッチンに、

 フライパンの音が響いている。


 


 葛城あみは、

 エプロン姿で卵を焼いていた。


 


「お兄ちゃん、

 今日はギルドの訓練あるから、

 夜遅くなるかも」


 


「無理するなよ」


 


 亮はコーヒーを飲みながら答える。


 


「うん」


 


 何気ない会話。


 


 だが、

 あみの視線は、

 何度も兄へ向かう。


 


 最近。


 


 兄の様子が、

 おかしい。


 


 スマホを見る時間が増えた。

 ぼんやりしていることが多い。


 


 そして。


 


 戦闘の話になると、

 微妙に詳しすぎる。


 


「ねえ、お兄ちゃん」


 


 あみは、

 フライパンを置く。


 


「なに?」


 


「……もしさ」


 


 一瞬、

 言葉を選ぶ。


 


「すっごく強い人が、

 身近にいたらさ」


 


 亮は黙る。


 


「それ、

 どうすると思う?」


 


 亮は、

 視線を逸らす。


 


「さあな。

 放っておくんじゃないか」


 


「ほんと?」


 


 あみは、

 兄を見る。


 


「私は……」


 


 少しだけ、

 唇を噛む。


 


「ちゃんと知りたい」


 


 胸が、

 痛む。


 


「……なんでだ」


 


「だって、

 家族だもん」


 


 それ以上、

 何も言えなかった。


 


 


 その日の夕方。


 


 ギルド訓練場。


 


 あみは、

 模擬戦に参加していた。


 


 相手は、

 同じDランクの男性。


 


「行きます!」


 


 短剣を構え、

 踏み込む。


 


 だが。


 


 足を取られ、

 体勢を崩す。


 


「しまっ――」


 


 次の瞬間。


 


 背中を、

 誰かに支えられた。


 


「……え?」


 


 周囲を見渡す。


 


 誰もいない。


 


「今……」


 


 気のせい?


 


 だが、

 確かに。


 


 温かい手の感触があった。


 


 


 夜。


 


 あみは、

 帰宅する。


 


 亮は、

 ソファに座っていた。


 


「おかえり」


 


「ただいま」


 


 靴を脱ぎながら、

 あみは兄を見る。


 


「ねえ」


 


「ん?」


 


「今日さ、

 訓練で転びそうになったんだけど」


 


 亮の指が、

 僅かに動く。


 


「誰かに支えられた気がした」


 


 沈黙。


 


「……気のせいだろ」


 


 亮はそう言う。


 


 だが。


 


 あみは確信する。


 


 この人は、

 何かを隠している。


 


 


 その夜。


 


 亮は、

 一人でベランダに立つ。


 


「……もう限界かもな」


 


 呟く。


 


 守るために隠す。


 


 だが。


 


 隠すことで、

 傷つけている。


 


 どちらが正しいのか、

 分からない。


 


 亮は、

 空を見上げる。


 


 答えは、

 まだ出ない。



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