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第3話 見つける者たち

 


 探索者ギルド本部。


 


 最上階の会議室には、

 重たい空気が流れていた。


 


 壁一面のモニターに、

 一つの動画が映し出されている。


 


 犬型魔物が現れ、

 次の瞬間、消滅する。


 


 剣は見えない。

 攻撃動作も曖昧。


 


 だが、

 “結果”だけは明白だった。


 


「……Cランク想定の魔物を、

 一撃か」


 


 低い声で呟いたのは、

 桜庭源次。


 


 探索者ギルド長。


 


 白髪混じりの短髪。

 背筋の伸びた体。


 


 かつてSランクとして

 最前線に立っていた男だ。


 


「解析班の報告は?」


 


 桜庭の問いに、

 職員が答える。


 


「映像加工なし。

 合成ではありません」


 


「フレーム単位で確認しても、

 攻撃の瞬間が映っていません」


 


「速度が、

 測定限界を超えています」


 


 会議室がざわつく。


 


「異世界帰還者か……」


 


 誰かが呟く。


 


 桜庭は腕を組む。


 


「可能性は高い。

 それも、上位個体だ」


 


 異世界帰還者。


 


 ごく少数しか存在しない。


 


 向こうの世界で、

 本格的な戦争を経験し、

 生き延びた者。


 


 だが。


 


 ここまでの力を示した例は、

 確認されていない。


 


「松岡君」


 


 桜庭は、

 会議室の端に立つ女性を見る。


 


「はい」


 


 松岡優子。


 


 ギルド案内嬢であり、

 元Bランクダイバー。


 


「配信者、小野裕子。

 彼女から話を聞け」


 


「同時に、

 動画の撮影地点を特定しろ」


 


「穏便に、だ」


 


 松岡は頷く。


 


「了解しました」


 


 


 一方。


 


 葛城家。


 


 亮は、

 スマートフォンを見つめていた。


 


 例の動画。


 


 再生数は、

 五百万を超えている。


 


「……増えすぎだろ」


 


 胃が重い。


 


 コメント欄。


 


〈本物だ〉

〈ギルドは何してる〉

〈探せ〉


 


「探すな」


 


 小さく呟く。


 


 だが、

 現実は逆方向へ進んでいる。


 


「お兄ちゃん」


 


 あみが声をかける。


 


「この人さ、

 すごくない?」


 


 画面を向けられる。


 


 例の背中。


 


 亮は視線を逸らす。


 


「……さあな」


 


「なんか、

 お兄ちゃんに雰囲気似てる」


 


 心臓が跳ねる。


 


「気のせいだ」


 


 即答した。


 


 あみは首を傾げる。


 


「そうかなあ……」


 


 亮は内心で、

 冷や汗をかく。


 


 バレるのは、

 時間の問題かもしれない。


 


 


 その頃。


 


 松岡優子は、

 ギルド内の面談室にいた。


 


 向かいに座るのは、

 小野裕子。


 


「今日は、

 お時間ありがとうございます」


 


「い、いえ……」


 


 裕子は落ち着かない様子だ。


 


「動画に映っている人物について、

 何か心当たりは?」


 


「……ありません」


 


 本当だ。


 


 顔も見えなかった。


 


「撮影場所は、

 倉庫街のどこですか?」


 


 裕子は地図を指差す。


 


「この辺りです」


 


 松岡は、

 頷く。


 


「危険ですので、

 当面、単独配信は控えてください」


 


「……はい」


 


 面談が終わる。


 


 松岡は歩きながら、

 考える。


 


 倉庫街周辺。


 


 生活圏が近い人物。


 


 ギルド未登録。


 


 条件に合う者は、

 ほとんどいない。


 


「……面白い」


 


 そう呟いた。


 


 


 同じ頃。


 


 亮は、

 ベランダで夜風に当たっていた。


 


「……来るなよ」


 


 誰に向けた言葉か、

 自分でも分からない。


 


 だが。


 


 すでに、

 歯車は回り始めている。



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