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第1話 帰還勇者は名を捨てる

 


 朝の通勤ラッシュは、

 今日も騒がしい。


 駅前広場を埋め尽くす人の波。

 スーツの肩がぶつかり、

 スマートフォンの光が揺れる。


 どこにでもある日常。


 葛城亮は、

 その中を歩いていた。


 黒髪。

 平凡な服装。

 平均的な体格。


 誰が見ても、

 普通の青年。


 


「……平和だな」


 


 小さく呟く。


 この世界は平和だ。

 少なくとも、

 表向きは。


 


 亮は知っている。


 この世界の裏側で、

 確実に何かが蠢いていることを。


 


 彼は異世界から帰還した勇者だ。


 剣を握り、

 仲間と戦い、

 魔王を討った。


 


 今もその力はある。


 だが、

 すべて隠している。


 


 理由は一つ。


 


 もう、

 戦いたくない。


 


 英雄になりたくない。

 期待されたくない。

 誰かの希望になりたくない。


 


 普通に生きたい。


 


 それだけだ。


 


 だから彼は、

 能力を完全に隠すスキルを選んだ。


 


 【完全隠蔽】


 


 誰が見ても、

 ただの一般人。


 


 それが、

 葛城亮の現在だ。


 


 アパートの扉を開ける。


 


「お兄ちゃん、おかえり!」


 


 妹のあみが笑う。


 


「ただいま」


 


 この日常を、

 守りたい。


 


 そのためなら、

 自分が傷つくのは構わない。


 


 その夜。


 


 亮は一人、

 倉庫街へ向かう。


 


 黒い霧。

 ゲートの兆候。


 


「……出てこい」


 


 魔物が現れる。


 


 一瞬。


 


 見えない剣が走る。


 


 魔物は消える。


 


「……これでいい」


 


 誰にも知られず。

 誰にも感謝されず。


 


 それでいい。


 


 だが。


 


 この夜、

 一人の少女が

 カメラを回していた。


 


 そして、

 世界は少しずつ、

 狂い始める。


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