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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

友人以上恋人未満の曖昧な彼らの日常

友人の家で巨乳のグラビア雑誌を見つけて押し倒されたのを自称彼女に問い詰められることになったのだが



どうしてこうなったのだろうか。

ぐつぐつ煮える鍋のあるテーブルに正座の俺と、隣には会社の同僚で友人の和馬が座り、むかいには彼女が。


ことの起こりは二十分前、料理上手な和馬が鍋の準備をしてくれているのを俺はぼんやりと待っていたのだが「そういえば、こいつのエロの趣味を知らないな」とふと思いついた。

友人づきあいをはじめて一年、なんとなく、そういった話題に触れなかったのが、そのとき急に気になって家捜し開始。

本棚のいちばん下、カーテンをめくって獲物を発見。

巨乳の美女が水着でセクシーポーズをとる写真ばかり掲載された雑誌で「ふーん、分かりやすい趣味だし、紙派か」とにやついていたら、鍋を持ってきた和馬が「あー!それ!」と絶叫。

べつに成人男子がエロ雑誌やエッチなグッズを持っているのは健全だし、水着写真なのだからかわいいものだが、和馬は鍋をガスコンロの上に置くと、顔を真っ赤に喚きちらし、取り返そうと。

「ばっか!これくらいで初心だな!男子中学生かよ!」とけらけら笑って、俺のほうが上背があるに雑誌を高く掲げたり、避けたり、手で払ったり。

二人で男子高生のようにじゃあっていたところ、和馬がテーブルに足をぶつけ、倒れかかってきた。

予想外の動きをされて俺はかわすことができず、共々、床にばったーん!

女相手ならラッキースケベというか、和馬に押し倒される格好となり、なんともいえず二人で見つめあっていたら「和馬くん!やっぱり今日、きちゃった!」と玄関の扉が開いて、浮き浮きとした女性の声が。

二人同時に玄関のほうを見ると、見知らぬ女性が笑みを強ばらせて硬直し、ワインを落として割らしたもので。


で、今に至る。

状況からして、和馬の彼女が、さっきの状況を誤解して尋問しているように見えるが、ほんとうに恋人なのか怪しいところ。

だって和馬は大学をでてから彼女はいないと告げていたし。

「じつは彼女いました!」というには、今の和馬の亡霊でも眺めているような怯えた表情はそぐわない。

むしろ嘘でないほうが戦慄もので、目の前の相手、自称彼女は一体、何者なのか。

そりゃあ巻きこまれた身としては説明してもらう権利があるとはいえ「えーと、こちらのかたは?」と気安く聞ける状況ではとてもない。

裁いて断罪する気満々の自称彼女を前にして、罪状をいい渡されるのを待つ犯罪者のような思いで肩を縮める。


ガスコンロの火も止められないまま、煮詰まっている鍋を前にしてどれだけ沈黙がつづいたことか。

やっと自称彼女が「彼はあなたにとってなんなの?と口を切り、とたんに和馬は身を乗りだし「こいつこそ運命の人だ!」と熱弁。


「会社の面接のとき、スマホを忘れてパニックになっちゃったんだよ俺。

事前に考えていた面接の受け答えがスマホにはいっていたからさ。

面接まではまだ時間があったけど、家に取りに帰ったら間にあわないし、あがり症だから直前までメモを見ておかないと、本番で頭が真っ白になるだろうし。

どうしようどうしようって慌てふためいても、まわりは知らんふり。

そりゃ俺はライバルだしな、それに、みんなも就活に苦心して、人にかまっている余裕がなくて当たり前だ。

でも、吾郎がだいじょうぶ?どうしたの?って声をかけて、俺の話を聞いてくれた。

そしたら、すこし落ちつて『数え切れないほど練習したなら体が覚えている。自分を信じてあげて』って励まされて元気がでてさ。

さらに持参のハーブティーを飲ませてもらって、ほどよく肩から力がぬけて、面接では自然体に近く話ができた・・。

大学ではラグビーをやっていた筋肉質な男がハーブティーをくれるなんて、ギャップにときめいたこともあって、いや、もう、おっぱ・・・ごほんほごほんっ!

わ、忘れられなかったけど、連絡先を交換し忘れて、面接で親切にしてもらったそれきり。

かと思ったら、入社式で再会するなんて、これはもう運命だろ?

吾郎も覚えていてくれたから、すぐに仲良くなって、おかげでまわりと、すんなり溶けこむことができた。

俺、田舎者で人見知りだから、どうしても腰が引けるのを、陽気で人懐こいラガーマンが輪にはいれるよう、さりげなくサポートしてくれて、ほんと助かったやら、ありがたかったやら。

だけじゃなくて、吾郎はいっぱい友人知人がいるのに、面接での縁があってか俺を贔屓して、こうやって二人だけで遊んでくれる。

俺なんかどうして?って聞いたら、二人とも思いは同じだったよ・・・。

まあ、俺の場合はおっぱ・・ごほんごほん!だれからも好かれる爽やかラガーマンを独り占めできて、もったいないほどに思えるけど。

それでも、どうか認めてくれないか・・!

吾郎は今までの子たちとちがう!申し分のない運命の人だろ!?なあ!」


「ハーブティーのことを、そんな重要なこととして記憶していたのか・・・」と面映いような、ただ「おっぱ」が引っかかるような。

大体、浮気の弁解にしてはしっくりとこないのが、腕を組み難しい顔をする自称彼女は熟慮しているよう。

訳が分からないながらに、みょうに緊迫した空気となり、息を詰めていたら、ふと彼女が笑みを漏らした。


「大学デビューに失敗して、四苦八苦していたあなたが、会社では人間関係に困ることなく、仕事に励めているのは彼のおかげなのね・・」


「大学デビューに失敗」と耳にして、つい和馬を見れば、気まずそうに目をそらされた。

「うわーそのときの写真、見てみたい!」と俺がそわそわするのにかまわないで「今まであなたの恋人を見定めてきた、わたしだけど」と遠い目をして語る自称彼女。


「今までの浮わついて卑しく、計算高い女たちとは、たしかにちがう。

そうね、彼にならあなたを任せられるかも」


「二人とも末永くお幸せにね」とほほ笑みかけられてぞっとしながらも、和馬にかるく肘鉄を食らい、慌てて首肯。

その言葉を最後に立ちあがり、玄関に向かったのを二人ともついていき見送ることに。

「彼女がでていったら、やっと事情を聞けるな」とほっとしたのもつかの間、ドアを半分開けてふりかえった自称彼女は、俺と目をあわせてから、やや視線を下げてにっこりと。


「ほんと、和馬くんはおっぱいの大きい子が好きね」


ドアが閉まり、自称彼女が遠ざかるのを待って口を開こうとしたら「いやさあ!彼女、特殊なストーカーなんだよ!」とひどく焦ったように和馬がまくしたてはじめた。


「入学してすぐ、大学デビューに失敗して痛々しいあなたに一目惚れしたって告白されたけど、もちろん断った!

そしたらストーカーになって、尾行や監視しても、いやがらせをしたり、危害を加えようとはしなかったんだよ!

ただ、俺に恋人ができると、さっきみたいに家に乗りこんできて、つきあうに至るまでの経緯や、相手のどこが好きか、吐かされて、そのうえで相手を値踏みされて、交際していいか、だめか決めようとしてさ!

いや、フった相手に交際の許可を得る必要なんかないよ!?

ないけど、決定に従わないと、それまで比較的無害で大人しかったのがどうなるか分からなくて反発できなかった!

なんとか彼女の許可をもらえるような彼女を探したとはいえ、全滅!

結局、自分がフられた腹いせで、どんな相手だろうと許さないつもりなんじゃないかって絶望したよ!

俺は一生、だれとも交際できないし、結婚もできないかもしれないって!

今回は、彼女が誤解して乗りこんできたわけだけど、俺、思いついたんだ!

いろんなタイプの女性がノーを突きつけられた、じゃあ、男が相手ならどうだろうって!

見こみが当たって、彼女はあっさりと俺たちを祝福してくれ、身を引いてくれた!

といっても、しばらくは観察するだろうから、三ヶ月くらい、交際しているふりをしてくれないか!?吾郎!」


一応、最後まで耳をかたむけたものの、ふと目を伏せた俺は、胸を腕で隠して呟いた。


「お前・・俺の体目当てだったんだな・・・」


「わああああ!ちがう!ちがう!ちがうううう!」と小躍りするように慌てふためいて、顔を赤くしたり青くしたり、目を泳がせまくるのが、あまりに滑稽で、笑うのを堪えるのが辛い。

おっぱいに見えるような、柔らかめの胸筋がコンプレックスなのを知っているから、俺が傷ついたとでも思っているのだろう。

もし、胸に惹かれて友人になったとしても、かまわないのだが。

だって面接のとき、ハーブティーをだしたとき、和馬は感謝こそすれ「マッチョがなんつー乙女チック」とほかの人のように冷やかさなかったのだから。

そのあと会社で再会しても吹聴しなかったし、自称彼女に語っていた内容からして、ハーブティーの一件を運命めいた記憶としてとどめてるようだから、俺にとってはそれだけで十分だ。


「面接で人に親切にするなんて、この世も捨てたんもんじゃないって大袈裟なくで思うほど感心して、だから友だちになりたいと思って、た、たしかに、Yシャツの膨らみは無視できなかったけど・・!

Yシャツの膨らみが大きかったから友だちになりたかったんじゃなくて、なにかと縁があって友だちになったら立派なお胸をしていたから得したというか、いや、得というか

、ラッキー、いやいや、うーん、えっと、んんんっ!」


まあ、ただ、恋人がいることを隠していたのがばれて、死にものぐるいで言い訳をするクズ男のように醜態を晒すのがおもしろいから、胸を腕でおおったまま、目に涙を浮かべて、しばらく被害者面することにしよう。



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