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メッセージに驚く

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 チュートリアル4ではコントロールパネルの中からステイタスウィンドウというのを選んで開いた。

 ステイタスウィンドウには僕についての詳細が表記されている。


【ジョブ】魔法剣士(レベル2)

【スキル】二段切り(レベル1 0/100%)

【魔 法】初級治癒(レベル1 0/100%)

【装 備】銅の剣・厚手の服・革のブーツ

【持ち物】ポイッチュ×4

【所持金】0レーメン

【ヴィレクト金貨】2枚



 レベルが上がったことで【二段切り】と【治癒】を覚えた。

 スキルも魔法も使えば使うほどレベルが上がり、新しいものを覚えられるようになるとのことだ。

 以上のレクチャーを受けてチュートリアル4は終わり、ご褒美の100レーメンをもらった。


 続いて、チュートリアル5では薬草を集め、街の道具屋でそれを売った。

 街といっても僕が住んでいるような大きな街ではない。

 王都アバンドールとは比べ物にならないくらい小さな街である。

 でも、どこか似ているところがあるんだよね。

 川や高台の位置などはそっくりだ。

 この仮想空間を参考にしてアバンドールも作られているのかもしれない。


「道具屋はどこにあるのですか?」

「先ほどお渡しした地図で探してください。これからは何度も活用することになりますよ」


 このチュートリアルは目的地を地図で探す練習を兼ねているのだな。

 現在地がここだから……道具屋はあっちか!

 しばらく歩くと、軒に【道具屋グレーン】の看板を出している店を見つけた。

 店先では口ひげを蓄えたおじさんがパイプをふかしている。


「ごめんください。薬草の買い取りをお願いします」

「あいよ」


 おじさんは僕から薬草を受け取ってはかりで重さを測っている。


「ぜんぶで50レーメンだね」

「わかりました。ここでの商売は長いんですか?」

「…………」


 あれ、聞こえなかったのかな?


「ここでのご商売は長いのですか?」


 もういちど聞き返してみたけど、やっぱりおじさんは答えてくれなかった。

 代わりにミネルバさんが説明してくれる。


「道具屋の店主は簡単な受け答えしかできないのです」

「つまり、会話とかは無理ってこと?」

「そうなりますね。私のようにセドリック様とコミュニケーションがとれるキャラクターは限られています」

「ふーん……」

「それでも、人々には積極的に話しかけてください」

「どうしてですか?」

「この世界を探索するためのヒントをくれるからです。人々の声に耳を傾けるのは重要なことです。それは仮想世界でも現実世界でも同じことではありませんか?」


 そうかもしれないなあ。


「お待たせしました。薬草の代金、50レーメンです」


 おじさんが僕にお金を手渡してくれた。


【チュートリアル5 はじめてのおつかい 完了】


 今回のご褒美は傷薬×3だった。


「傷薬はポイッチュよりずっと効き目があります。怪我の具合に合わせて使い分けてください」


 ファイヤーボールで火傷したときなどは傷薬の方がよさそうだ。


「次で最後のチュートリアルになりますが――」


 ミネルバさんが言いかけたときウィンドウが開いた。


【外部より呼び出しを受けています】

 ログアウトしますか? ▶はい いいえ 


 またか……。

 どうして僕をそっとしておいてくれないのだろう?


「用事が出来てしまったようです。続きはまたこんどお願いします」


 ミネルバさんに一礼して、僕はログアウトボタンを押した。



【黎明の神器】を脱ぐと、ニヤニヤと笑みをたたえるノエルの姿があった。


「もう夕食の時間?」

「それはもう少し先でございます」

「だったらどうして呼んだんだよ?」

「今しがた、リューネ嬢よりメッセージが届きました」

「リューネ嬢?」


 そんな知り合いがいたっけ?


「セドリック様は健忘症けんぼうしょうですか? きょうのお茶の時間にお会いしたばかりではないですか!」

「ああ、あの娘さんか」


【黎明の神器】のことで頭がいっぱいだから、すっかり忘れていたよ。

 それにしても意外だな。

 彼女がメッセージを寄こすとは思わなかった。


「きっときょうのお礼でしょうね。ひょっとすると次のデートのお誘いかもしれませんよ」

「どうしてノエルがウキウキしているんだよ?」

「それはまあ、そういうお年頃ですから。他人の恋愛でも興味はあります」

「まったく……」


 ため息をつきながら僕は手紙を開いた。


 セドリック・バッカランド様へ


 本日はお茶会にお招きいただき、ありがとうございました。

 よろしければ、明日、郊外へ遠乗りへ出かけませんか?

 お返事をお待ちしております。


                   リューネ・エンゲルス


 用件だけの、情緒じょうちょの欠片もない手紙である。


「セドリック様、なんと書かれていますか?」


 ワクテカしているノエルに手紙を見せた。

 見られて困るような内容じゃないからね。

 手紙を一瞥したノエルが眉をさげているぞ。


「簡素なお手紙ですね……。でもでも、デートのお誘いじゃないですか! どうするんですか?」


 女性からデートに誘うのは不作法なんて国もあるようだが、わが国では一般的なことである。

 昔はそんなことはなかったという老人もいるので、これも人口比率が影響しているのだろう。

 リューネ嬢から誘ってくるなんて意外であり、うれしくもあったけど、僕の答えは決まっていた。


「パスで」

「なにを言っているんですか! そんなことは認められません!」

「なんでノエルが決めるんだよ。僕は【黎明の神器】の調査で忙しいの」

「なりません。セドリック様もバッカランド家の一員としての自覚をお持ちください」

「わかった。なるべく善処するから今回は見逃してよ!」


 チュートリアルの続きを受けたいし、レベル上げだってやってみたい。

 だけど、ノエルは許してくれなかった。


「メドナ様と侯爵に言いつけますよ」

「そんな! どうして急に厳しくなるんだよ!」

「セドリック様には立派な領主になってもらわなくては困ります。そのためにも嫁とりは大切なこと」

「僕が立派な領主にならなくたってノエルは困らないだろ?」

「領主になった暁にはメイド長にしてくださる約束ですよ! お忘れですか?」


 うん、そんな約束をした気もする……。


「思い出してくださいましたか? でしたら、すぐリューネ嬢にお返事を書いてくださいませ」

「わかったよぉ……」


 行きたくもない遠乗りで半日は潰れてしまうなあ。

 それだけ時間があればレベル上げができたのに……。

 しぶしぶ書き物机に座り、僕はペンをとるのだった。




~冒険の記録~


【ジョブ】魔法剣士(レベル2)

【スキル】二段切り(レベル1 次のレベルまで0/100%)

【魔 法】初級治癒(レベル1 次のレベルまで0/100%)

【装 備】銅の剣・厚手の服・革のブーツ

【持ち物】ポイッチュ×4、傷薬×3

【所持金】150レーメン

【ヴィレクト金貨】2枚



続きは20時以降に更新予定です

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