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チュートリアル3 終了

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 洞窟のいちばん奥は祭壇さいだんになっており、異形いぎょうの神がまつられていた。

 祭壇の前では三体のゴブリンが祈りを捧げている。

 二体は普通のゴブリンだが、中央で祈っているのはシャーマンのような装束しょうぞくだ。

 あれが噂のゴブリンメイジだな。

 初歩の火炎魔法を使うそうだから、敵としては少し厄介やっかいだ。

 遠距離で見つかれば一方的にやられてしまうから、覚悟を決めて距離を詰めた方がいいだろう。

 剣を握りなおして十数メートルの距離を駆け抜けた。

 足音に気が付いたゴブリンたちだったけど、とっさのことに対応はできていない。

 狙うのはボス格のゴブリンメイジだ。

 攻撃力の高い敵をまずは仕留める!

 振り下ろした剣をゴブリンメイジは長い杖で受け止めた。

 僕が持っているのは銅の剣で、名刀ではない。

 杖を切断するには至らなかった。

 だけど、受け止め方が完ぺきではなかったので刃が横にすべり、ゴブリンメイジの手を負傷させることに成功した。

 チャンスだ!

 叫び声をあげて後ろに飛ぶゴブリンメイジにとどめの一撃を叩き込もうとする。

 だが、二体のゴブリンが横から割り込んできてしまった。


「くそっ!」

「ギャッギャッ!」

「グギャ!」


 言葉はわからないが、互いに汚い言葉をののしっているのは理解できた。

 かまうことはない、押し切ってやれ!

 パワーは人間の方が強いのでゴブリンを突き倒して剣をふるう。

 急所にヒット!

 よし、やつはもう戦闘不能だ。


 ブオンッ!


 一息ついたそのとき、前方から火球が飛んできた。


「うわっち!」


 思わず左手で顔をかばったけど、手の甲に火ぶくれができている。

 厚手の服もチリチリと煙を上げているぞ。

 ゴブリンメイジのファイヤーボールだな。


「くそがあっ!」


 片手で剣を持ち直し、モゴモゴと呪文を唱えているゴブリンメイジの頭部を突き刺した。


「ハアッ、ハアッ……」


 疲労で全身が重く感じるけど戦闘はまだ続いている。

 だが、残るゴブリンは一体だけだ。

 こいつらは集団で行動するから怖いのであって、単体ならば恐れることはない。

 すでに四体のゴブリンを葬り去り、僕にも度胸がついている。

 落ち着いてゴブリンのナイフをかわし、腕への斬撃。

 続いてとどめを刺した。


【チュートリアル3 試練の入り口 完了】

【レベルアップしました】


 レベルアップってなんだ?

 よくわからないけど、疲労で考えることが億劫おっくうだ。

 僕がその場に座り込むと、ミネルバさんが現れた。


「おつかれさまでした。見事【試練の入り口】をクリアしましたね」

「ありがとうございます。うぅっ!」


 ファイヤーボールをくらった左手がズキズキと痛む。

 かなりの深手を負ってしまったな。

 でも、こんなときこそポイッチュだ。

 片手でどうにかポイッチュの包み紙を開け、口の中ん放り込んだ。


「モグモグ……」


 あれ、痛みが消えないぞ。

 ダメージが大きいから一個だけでは対処できないようだ。

 けっきょく、傷口を完治させるには五個のポイッチュが必要だった。

 ポイッチュは便利だけど、ソフトキャンディを続けて五つも食べるのは大変だったよ。

 口の中が甘ったるいし、お腹もいっぱいだ。

 でも、おかげで火傷やけどあとはすっかり消えてしまった。


「治療は終わりましたね?」

「はい、完治です」

「では祭壇の下の箱を開けてヴィレクト金貨を手に入れてください」


 祭壇の下を調べると木箱があった。

 開けて見るとピカピカと光り輝く金貨と革のブーツが入っている。


「ブーツはチュートリアル達成のご褒美です。サイズはぴったりのはずですからセドリック様がお使いください」


 足にはサンダルしかはいていなかったのでブーツはありがたい。

 さっそく履き替えてみると、ミネルバさんの言葉どおり僕の足にぴったりだった。

 ブーツを履いてしまうと僕は金貨を手に取った。

 表面はツルツルと光沢があり、一枚には剣を構えた戦士、もう一枚には盾を構えた戦士の意匠が刻まれている。

 それぞれがずっしりと重く、かなりの価値がありそうだ。


「それらの金貨はセドリック様のものです。売ってもいいですし、コレクションしてもかまいません」

「コレクションですか?」

「ヴィレクト金貨は全部で四八種類ございます。すべてを集めると特別なアイテムと交換が可能です」


 それはおもしろそうだな。

 だったら使わずにコレクションしておくか。


「ところで、さっき【レベルアップ】という表示が出てきたのですが、どういう意味でしょうか?」

「エビダスの世界ではレベル制を採用しております。戦えば戦うほど経験値がたまり、レベルが上がるのです。レベルが上がれば身体能力や魔力が強化されます。同じようにスキルも使えば使うほど強化されます」

「スキル?」


 また新しい単語だ。


「ちょうどいい機会です。レベルやスキルについてはチュートリアル4で学べますよ。このまま続けますか?」


 夕飯までにはまだ時間の猶予があるはずだ。

 できることなら、このまま続けたい。

 本当はご飯なんて要らないんだけど、行かないとメドナ兄さんがうるさいからなあ……。

 こんなことなら実家を出てアパートメントでも借りてもらえばよかったよ。

 まあいいや、いざとなればノエルが呼びに来てくれるはずだ。

 それまではもう少し【黎明の神器】を楽しむとしよう。

 コントロールパネルを開き、僕はチュートリアル4の実行を選択した。


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