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ジョブを決めよう

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「こんにちは、セドリック様。チュートリアルを続ける準備はできましたか?」

「お願いします。次はジョブを選ぶんですよね?」


 ワクワクしながら僕は頭をさげた。

 ミネルバさんはひとつうなずくと、手をふってコントロールパネルを開く。

 そこには戦士、魔法使い、治癒士、格闘家などのイラストが載っている。


「これは……」

「ジョブといいましても一般的な職業ではありません。エビダスでは誰もが基本的な戦闘技術を身につけることが求められます。そのスタイルを決めるのです」


 エビダスは魔物や猛獣も跋扈ばっこする危険な地帯が多いそうだ。

 戦闘技術が必須だというのもうなずけるが……。


「エビダスというのは文明が生まれる前の原始的な世界なのですか?」

「そうではございません。いまでもアップデートは繰り返され、現実の一歩先行く世界となっております」

「現実の一歩先を?」

「そうです。神々はいまでもエビダスの世界で実験を繰り返しながら、あなたがたの世界を構築しているのです。ジョブを選ぶというのは古来のしきたりがそのまま残ったようなものです」


 それを聞いて安心した。

 お坊ちゃま育ちに原始的な生活は辛いからね。


「さあ、セドリック様。ジョブを選んでください」

「はあ……」


 いきなり言われても迷ってしまうぞ。

 どれにしようか……。

 現実世界において、剣術はそれほど得意じゃない。

 バッカランド侯爵家の子弟として有名な先生のレッスンを受けているが、たいした実力ではないのだ。

 魔法も多少は使えるけど、専門の魔導士には到底及ばない。

 また、治癒魔法にいたってはまったく使えなかった。


「ジョブは途中で変えられますか?」

「いえ、いちど決めると永遠に変えることはできません」


 慎重に選ばないといけないなあ……。


「剣士とか槍士といった戦闘系だと、魔法はまったく使えないのですか?」

「まったくではありませんが、ほとんど使えないと考えていただいていいです」

「逆に魔法使いや治癒士は武器の扱いが下手なのですね」

「戦闘系と比べるとパワーが全く違います。装備できないアイテムも多くなります」

「う~ん……」


 どれを選んでいいのかまったく分からないぞ。


「あの、僕に仲間はできるでしょうか? 一緒にエビダスを探索してくれるような仲間は?」


 ミネルバさんは悲しそうに首を横に振った。


「かつては地上に三十存在していた【黎明の神器】ですが、現存しているのは五つだけです。それらの神器も長く使われた形跡はございません」

「つまり、同時に【黎明の神器】を使用していれば、エビダス内でその人と協力できるかもしれないということですね」

「そうですが、いま言ったとおり200年以上も神器は作動していないのです」


 つまり、これを動かしているのは僕だけということか。

 一緒に行動する人がいれば助け合えたのになぁ。

 たとえば、その人が戦士系なら僕が治癒士をやってもよかったのだ。

 だが、それは望めない。


「魔法が使えて、近接戦闘もできるジョブがあったらなあ……」


 愚痴のような僕のつぶやきにミネルバさんが答えてくれた。


「ございますよ」

「あるの!? そんな都合のいいジョブが?」

「魔法剣士です」


 そのまんまのネーミングなんだ。


「剣の技術に加えて簡単な治癒魔法や攻撃魔法もこなします」

「最高じゃない!」


 興奮する僕を落ちつかせるようにミネルバさんは話を続ける。


「ですが、あまり人気のあるジョブとは言えません。それどころかほとんどの人が選んだことを後悔するジョブ、それが魔法剣士です」

「どうして? だって、剣術と魔法の両方をこなせるんでしょう? すごいじゃない」

「どちらも中途半端なのです」


 たった一言で僕は理解してしまった。


「そっかぁ……。つまり剣技は剣士に勝てず、魔法は魔法使いに勝てないジョブ。それが魔法剣士なんだね」

「端的に言えばそうなりますね」


 せっかくいいジョブを見つけたと思ったのに残念だなあ。

 だが、続くミネルバさんの言葉に僕は希望を見出みいだした。


「ですが、剣技は剣士に勝てず、魔法は魔法使いに勝てないというのは正確ではありません。時間はかかりますが、それぞれの術を極めることはできます」

「本当に!?」

「嘘ではございません。ただ、より多くの時間がかかるのです」


 剣士が剣技を極めるのに10の時間がかかるとすれば、魔法剣士は20の時間が必要となり、同じように魔法も10に対して20の時間がかかるらしい。


「でも、それって当然のことだよね。だって両方の技を極めるんだから」

「そのとおりです。成長に時間はかかりますが、二つの技能を極められるお得なジョブとも言えますね」

「よ~し、僕は魔法剣士になるよ!」


 宣言してパネル上のボタンを押し、僕は魔法剣士になった。


「お疲れ様です。これにてチュートリアル2が完了しました。ご褒美にこちらの装備を支給いたします」


 ミネルバさんが出してきたのは【銅の剣】と【分厚い服】だった。

 剣はなまくらだし、服の防御力は低そうだけど、いちおう体裁が整ったといった感じだ。

 よ~し、僕はエビダス一の魔法剣士になってやる!


「続きましてチュートリアル3を受けることができますが……」



【外部より呼び出しを受けています】

 ログアウトしますか? ▶はい いいえ 】


 ミネルバさんの声を遮ったのは、またもや外部からの呼び出しだった。

 もう、いいところなのにぃ!

 でも、ノエルが呼んでいるなら、いったん帰った方がいいだろう。


「続きはまたこんどにして、ログアウトします。用事を終わらせたらすぐに戻ってきますから!」


 僕はミネルバさんに別れを告げてログアウトのボタンを押した。


このお話がおもしろかったら、ブックマークや★での応援をよろしくお願いします!

20時以降に続きを更新予定です。

どうぞ、お楽しみに!

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