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早く続きがしたい!

新作です。

3/3


 困惑する僕にミネルバさんが説明してくれた。


「どなたかは存じませんが、セドリック様を呼んでいる方がいらっしゃいますね」


 きっとノエルだな。


「チュートリアルは切りのいいところです。いちど戻られてはいかがでしょう?」


 本当はもっと続けたいのだけど仕方がない。

 いちど戻ってノエルを安心させるとするか。


「わかりました。戻ることにします」

「それではログアウトを選択してください。コントロールパネルは念じればいつでも開きます」


 コントロールパネルとは、あの半透明な板のことだな。


「それでは、またよろしくお願いします」


 僕はミネルバさんに別れを告げ、ログアウトを選択した。



黎明れいめい神器じんぎ】を脱ぐと、目に涙をためたノエルの顔が見えた。


「セドリック様! よかった……」

「心配をかけたみたいだね。僕はどんな様子だったの?」

「ずっと呼びかけていたのですがお返事はなく、たまに指先がピクピク動くだけでした。それで、失礼とは存じましたが体をゆすりました」


 それで【外部より呼び出しを受けています】の表示が出たんだな。


「私、なにか悪いことをしましたでしょうか?」

「いや、いいんだ。これからもこういうことはあるかもしれない。もし用事ができたら今回のように体をゆすってくれ。すぐに戻ってこられるかはわからないけど……」


 ログアウトにもタイミングは必要だ。


「あの、戻ってくるということは……【黎明の神器】が動いたということでしょうか?」

「そうなんだよ!」


 僕はノエルに【黎明の神器】の世界やミネルバさんについて説明した。


「まだまだほんの一部を体験しただけだけど、本当にすごいんだ。僕はこれからエビダス中を回ってみるつもりさ。というわけで、また行ってくるよ。チュートリアルの続きを受けないと」

「なりません」


【黎明の神器】をかぶろうとする僕の手をノエルが止めた。


「どうして?」

「昼食のお時間です」

「食べたくない。それより【黎明の神器】だよ」


 むこうでポイッチュを食べれば空腹は満たされるだろうし、他にも食べ物はあるかもしれない。

 だが、ノエルは僕をいさめ続ける。


「セドリック様、メドナ様に叱られてもよろしいのですか?」

「うっ、それは……」


 兄さんはマナーに厳しい。

 仮想空間に入り浸りたいという理由で昼食をすっぽかすなど、許してくれるはずがないのだ。

 それに【黎明の神器】のことは誰にも教えたくなかった。

 だって、取り上げられるかもしれないから。

 どうせ僕しか起動できないのなら、僕だけのものにしておきたい。

 いまは……。

 やりつくして、遊び飽きたら倉庫に戻しておくつもりである。

 それまでは僕が独占しておくとしよう。


「さあ、準備をしましょう。今日のメニューにはセドリック様の好きな茄子のグラタンがありますよ」

「うん……」


 たいして食欲はわかなかったけど、僕は身支度を整えるのだった。



 お昼ご飯を食べ終わると僕はノエルを連れて自室に駆け戻った。

 もちろん【黎明の神器】で遊ぶためである。

 僕はノエルに向かって釘を刺す。


「いいかい、【黎明の神器】のことは誰にも内緒だからね。部屋には鍵をかけて、取り次ぎはノエルがやってね」

「承知しました」

「それと、緊急のとき以外は呼び出さないでくれよ。僕は忙しいんだから」

「忙しい?」

「侯爵家の者として【黎明の神器】を探るのは当然の務めなんだ。いいね?」


 本音は【黎明の神器】で遊びたいだけだけど、こう言っておかなければ恰好がつかない。

 素直なノエルはすぐに信用してくれた。


「わかりました。セドリック様、ここは私にお任せくださって、どうかご存分にご探求ください」

「ありがとう。じゃあ、行ってくるね!」


 寝室のベッドに横になると、僕はワクワクしながら【黎明の神器】をかぶった。



 ログインすると、そこは前回ログアウトしたのと同じ場所だった。

 だけどミネルバさんの姿はない。


「ミネルバさん?」


 遠慮がちに呼んでみたけど、返事はなかった。

 チュートリアルの続きを受けるには、どうすればいいのだろう?

 そういえば、コントロールパネルは念じれば出てくる、とミネルバさんは言っていたな。

 あそこに手がかりが書いてあるかもしれない。

 期待を込めてコントロールパネルを呼び出すと、予想どおりだった。


【チュートリアル2 ~ジョブを選ぶ~】


 これを選択すればいいんだな。

 でも、ジョブってなんだろう?

 簡単に言えば職業ってことだけど、エビダスの世界では仕事を決めなければならないのだろうか?

 ちなみに、リアルの僕はいまのところ【無職】だ。

 いずれ父上から小さな領地を譲り受けて【領主】になるのだろう。

 選択肢として、宮廷の役職についたり、軍務に就いたりすることも可能だ。

 もっとも、そんなものに興味はないけどね。

 どうせならリアルで就くことのない職業を選んでみたいなあ。

 とにかく、チュートリアル2を始めてみるか。

 パネルを押すとミネルバさんが現れた。


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