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朗報

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 体を大きく揺さぶられて目覚めた。

 ショボショボする目をこじ開けるとノエルが興奮している。


「たいへんです、セドリック様!」

「なんだよ……、もう少し寝かせといてほしいんだけど……」

「そんなことを言っている場合ですか! お手紙が届いたんですよ!」

「手紙? 誰から……?」

「クォール・ミンダス様からです!」

「クォール? なぁんだ……」


 びっくりしたようにノエルは僕をさらに揺さぶる。


「なぁんだ、じゃありませんよ! 相手は【アバンドールの真珠】ですよ! なに、余裕ぶっこいていらっしゃるのですかぁっ!」

「ん~、昨日からお付き合いをはじめたんだ」

「は?」

「てか、恋人になったんだよ……」


 すでに肉体関係もある。


「へ……? どういうことですかそれはぁあああああっ!?」


 専属メイドは僕を寝かせるつもりなんて、これっぽっちもないようである。

 ノエルが大きな声を出すからすっかり目が覚めてしまったぞ。


「言ったとおりだよ。向こうから告白されて付き合いだしたんだ」

「はあ? 侯爵家とはいえセドリック様は次男ですよ? メドナ様にご嫡男がありますから、お家は絶対に継げません。お顔は整った方ですが、世間知らずのボンクラです。性格は悪くないですが、たまにクズ。育ちが良すぎて庶民の苦労がわからない。自己中心的。金遣いは荒く計画性はゼロ。こんな男のどこがいいんですか?」

「よくもまあ、それだけ悪口を並べられるね」

「だって、クォールさまは【アバンドールの真珠】ですよ。何人の貴公子が告白したと思っているんですか? どれほどの有名人にもなびかなかったクォール様が、よりにもよってセドリック様に告白? 信じられないんですけど!」

「クォールは僕のことを好きって言ってくれたよ」


 ノエルはがっくりと肩を落とした。


「こんな男に尽くせるのは私だけだと思っていたのに……」


 ノエルには感謝しているので、これだけクソミソに言われても腹が立たないんだよなあ……。


「ほら、サルモネールのことで僕がクォールを助けたのがバレちゃっただろう? それがきっかけなんだ」

「セドリック様が遠くに行ってしまったみたいで悲しいです。はい、手紙をどうぞ……」


 ノエルは二通の手紙を渡してきた。


「あれ、クォールのだけじゃない」

「もう一通はリューネ様からですよ」


 リューネからも?

 いったい何の用事だろう?

 とりあえず上にあったクォールの手紙から読んでみるか。



 セドリックへ


 昨日はありがとう。

 一生の思い出に残る素敵な時間をあなたと過ごせました。

 今後とも末永くよろしくね。

 頼まれていた【身体強化薬】ですが、作製の準備が整いましたので、いつでもいらしてください。

                             クォール・ミンダス


 追伸

 時間があれば、できあがった【身体強化薬】を一緒に試してみませんか?

 今日は黒のレースで待っています♡



 昨日も思ったけど、クォールは外見とは裏腹にかなり積極的だ。

 ちょっと見は、清楚なお姉さんって感じなんだけどなあ……。

 で、リューネはなにを言ってきたんだ?



 セドリックへ


 最近、ちっとも顔を見せてくれないのね。

 いちおうお付き合いをしているのだから、たまには手紙くらい寄越しなさい。

 近いうちに、どこかへ出かけましょう。

 返事を待っているわ。

                        リューネ・エンゲルス



 こっちは遊びの催促か……。

 こういうわずらわしいことをしない約束で僕らはお付き合いをはじめたんじゃなかったか?

 まあ、リューネは一緒にいれば楽しいし、冒険の相棒としては最高なんだけどね。

 気の強いところもあるけど、そこがかわいくもある。

【黎明の神器】をプレゼントしたらきっと喜んでくれるだろう。


 その場で二人に返事をしたためた。

 クォールには後でうかがうこと、リューネには謝罪を書いておく。


「これを届けておいて」


 ノエルは浮かない顔で手紙を受け取った。

 僕がモテるのが気に食わないようすである。


「なんだよ、僕に恋人ができるのはいいことだろう? ノエルだってしっかり嫁取りをしろ、って言ったじゃないか」

「そうですが……」

「そうですが、なんだよ?」

「こんなに辛いとは思いませんでした! 私だけのダメご主人様だと思っていたのに……」


 ひょっとして、ノエルが僕を甘やかすのはダメ男にするためか!?


「どうしてそんなにモテるようになったのでしょうねえ?」

「これも【黎明の神器】のおかげかな」

「私は【黎明の神器】が憎い!」


 おいおい、【黎明の神器】を壊さないでくれよ。


「そんなこと言うなって。実はいい話があるんだ。神々は【黎明の神器】を増やすことを決めたんだ」

「それのどこがいいお話なんです?」

「だって、【黎明の神器】がもう一つあればノエルもエビダスへ行けるんだよ。そうすればずっと一緒にいられるじゃないか」

「おおっ!」


 胸の前で両手を合わせ、ノエルは目を輝かせた。


「私も連れて行っていただけるのですね!」

「行ってみたい?」

「行きたいです! だって【黎明の神器】で遊ぶセドリック様は本当に楽しそうなんですもの」

「だったら話は決まりだ。新しい【黎明の神器】を手に入れたらノエルにプレゼントするからね」

「ありがとうございます、セドリック様」

「そのためにはもっと頑張らないと。いままで以上にね」

「私も協力します!」


 よしっ!

 ノエルの協力は取り付けたぞ。

 今日も寝食に加えてトイレの時間も惜しんで頑張るとしよう。


「じゃあ、デイリーミッションをこなしてくる。これも大事なルーチンだからね!」

「いってらっしゃいませ、セドリック様」


 今朝のノエルはじつに気持ちよく僕を送り出してくれた。



 冒険の記録(デイリーミッションを終わらせた結果)


【ジョブ】魔法剣士    (レベル12 → 13)

【スキル】二段切り    (レベル8 次のレベルまで 42/100%)

     火炎剣     (レベル6 次のレベルまで 89/100%)

     霞抜け     (レベル4 次のレベルまで 37/100%)

     スワローテイル (レベル4 次のレベルまで 17/100%)

【魔 法】初級治癒    (レベル6 次のレベルまで 48/100%)

【装 備】燕の剣、鋼の剣、厚手の服、革のブーツ、

     木の腕当て、旅人のマント、旅人の帽子

【持ち物】ポイッチュ×15、傷薬×3、解毒薬×2

【所持金】2369レーメン

【ヴィレクト金貨】3枚


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