重要なお知らせ
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夕食が終わると僕はウキウキで自室に戻った。
それに比較してノエルは寂しそうである。
「セドリック様は楽しそうでいいですね」
「まあね。【黎明の神器】は本当にすごいんだ。ノエルにも体験させてあげたいくらいだよ。そうだ、ちょっとかぶってみる?」
「よろしいんですか!」
「もちろんさ。これはバッカランド家の人間にしか動かせないんだけど、ひょっとしたらってことがあるかもしれない」
楽しいことは共有したいもんなあ。
けれども、ノエルがかぶっても【黎明の神器】は起動しなかった。
「やっぱり無理だったかぁ。残念だ」
「セドリック様があんなに楽しそうだから、私も体験してみたかったです」
「なんとかならないか、僕も考えてみるよ。さて、それじゃあ僕は【黎明の神器】で遊ぶから」
「その前にお風呂です」
「……そうだね」
「あら、きょうはやけに素直ですね。いつもはなんだかんだと理由をつけて嫌がるくせに」
「そんな日もあるんだよ」
クォールとの情事のあとがね……。
「そうだ!」
「どうしました?」
「ジャスミンの香水があるだろう? あれは処分してしまってくれ」
「え? あんなに気に入っていたのに」
「じつはさ――」
僕はクォールとサルモネールとの間にあったいきさつを説明した。
「サルモネールが香水の香りを覚えているとは思えないけど、念には念を入れておきたいんだ。あそこには取り巻きの女たちもいたからね」
「承知しました。もったいないですが仕方がありません」
まだ半分以上残っていたけど、ジャスミンの香水は捨てられることになってしまった。
エビダスの世界に入ると、突然コントロールパネルが開いた。
【緊急アップデートのお知らせ】
エビスタ運営評議会より重要なお知らせです。
私たちはより多くのデータを取得するため【VRヘルメット】の増産を決定いたしました。
具体的な増産量は決まっておりませんが、まずは五つの【VRヘルメット】を届ける準備は完了しております。
詳しくは専属AIよりご説明があります。
わからない単語がいっぱい出てきたなあ。
【VRヘルメット】ってなんだろう?
それと【専属AI】?
「【VRヘルメット】とはセドリック様が【黎明の神器】と呼んでいるもの。専属AIとは私のことです」
ミネルバさんが現れて説明してくれた。
「つまり【黎明の神器】が増えるということですね!」
「そのとおりです。新しい【黎明の神器】を手に入れることができれば、今後はご友人と一緒にエビスタの世界を探検することも可能になりますよ」
「おお! 俄然、やる気が出てきた」
これでノエルに寂しい思いをさせなくてすむぞ。
冒険好きなリューネを誘うのもありだ。
彼女ならエビスタの世界を満喫するだろう。
クォールは……どうかな?
ずっと一緒にいたい、と言っていたから、付き合ってくれるかも。
なにはともあれ、【黎明の神器】を手に入れなければ話にならない。
「ミネルバさん、どうすれば【黎明の神器】を手に入れることができますか?」
「それには、特別な依頼をうけていただかなければなりません。どうぞ掲示板をご覧ください」
【令旨】
ベルガタ山の山腹に魔物の砦が発見された。
この砦の様子を探ってきてもらいたい。
城主の首を討ち取った者には特別な褒章を出すものなり。
報酬:ヴィレクト金貨、経験値、3万レーメン、万能薬、
【黎明の神器・弐式】×5
王太子 ゲセルガ・バウモン
「かなり厄介そうな依頼ですね」
「推奨レベルは20です」
となると、レベル22くらいで臨むのがいいかな。
僕のレベルは9だから到達はまだまだ先だ。
慌てずにこつこつやるしかない。
他の依頼をこなしつつ、地道にレベルを上げていくとしよう。
今晩の依頼はこれが よさそうだ。
【トウモロコシ畑のレッドボアを退治して! 農家のヤロン】
非力な私に代わって、トウモロコシを食い荒らすレッドボアを退治しておくれ!
少なくとも15頭は狩ってもらわないと破産しちまうよ。
報酬:500レーメン、経験値、木の腕当て
こういった依頼をこなしてレベルを上げていくぞ!
夜明け前まで依頼をこなし、僕のステータスはこんな感じになった。
【ジョブ】魔法剣士 (レベル12)
【スキル】二段切り (レベル7 次のレベルまで 30/100%)
火炎剣 (レベル5 次のレベルまで 52/100%)
霞抜け (レベル3 次のレベルまで 74/100%)
スワローテイル (レベル2 次のレベルまで 59/100%)
【魔 法】初級治癒 (レベル5 次のレベルまで 22/100%)
【装 備】鋼の剣、厚手の服、革のブーツ、木の腕当て、旅人のマント、旅人の帽子
【持ち物】ポイッチュ×14、傷薬×3
【所持金】2069レーメン
【ヴィレクト金貨】3枚
レベルが上がるにつれて経験値がたまりにくくなってきた気がする。
今後はさらなる時間が費やされるだろう。
だが、僕は負けない。
ノエルやリューネやクォールとエビスタを楽しむためだ。
死ぬ気で頑張ってみせる!
本日も限界まで【黎明の神器】で遊び、僕は泥のように眠った。
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