表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/22

通過儀礼

1/3


 ログインと同時にコントロールパネルが開いた。


【デイリーミッション ~プルルフを集めろ~】


 ジャム屋のティニが困っています。

 ジャムの材料であるプルルフが足りないのです。

 西の森へ行ってプルルフを30個集めてティニに渡しましょう。


【報酬】経験値、300レーメン、旅人のマント、旅人の帽子



 デイリーミッションというのは本日限定の任務らしい。

 日替わりでこのようなミッションが課されるわけだな。

 おそらく、普通に冒険をするより効率よく経験値やおかねが手に入るのだろう。

 だったらやらない手はないぞ。

 ところで、プルルフってなんだろう?

 コントロールパネルには巨大なブルーベリーのような果実の写真が載っている。

 ジャムにするというくらいだから果物かな?

 だけど、こんな果物は見たことも聞いたこともない。

 きっとエビダス特有の果物なのだろう。


 地図に表示されている西の森へ行くと、プルルフの樹が点在していた。

 写真で見た印象より実物はだいぶ大きい。

 プルーンくらいの大きさと思っていたのだが、じっさいはリンゴくらいある。

 これを30個収穫するにはカゴが必要になるんじゃないか?

 一瞬そう考えたけど、僕には空間収納があることを思い出した。


「端から収納に入れていけば、なんの問題もないな!」


 便利な魔法である、

 農家の人もこれがあれば楽になるだろうに。

 だが、神々は現実世界で空間収納を実装しなかったか……。

 便利すぎるからかなあ?

 それとも技術的な問題?

 世界は日々更新され続けているらしいから、いずれみんなが使える日が来るかもしれないけどね。

 僕はプルルフに手をかけてひとつもいでみる。

 それほど硬くないんだ。

 実を傷つけないよう丁寧に収穫するとしよう。

 匂いは柑橘類ほどつよくない。

 でも、花のように甘く爽やかな香りがするぞ。

 味はどうだろう……?

 やっぱり気になるよね!

 ジャムにするのだから、毒は入っていないと思う。

 たぶん、食べても大丈夫だろう。

 僕はほんの一口かじってみた。


「美味しい!」


 食感はモモに似ているけど、味と香りが違う。

 モモより甘みが強くて、酸味もあるぞ。

 これはクセになりそうな味だ。

 けっきょく、まるごと一個食べてしまった。


「はぁ、美味しかった! さて、デイリーミッションをこなすとしますか。……あれ?」


 突然のめまいに僕はその場に座り込んだ。

 なんでだろう、とても眠たいぞ。

 昨晩はぐっすり眠ったはず……なの……に……。


 ***

 

「ぐわっ!」


 強烈な痛みで目が覚めた。

 なにかが僕の体を噛んでいる?

 振り払おうとするけど、大きな体でのしかかられ、うまく動くことができない。

 魔物か!?

 あ、だめだ……。

 力が全く入らないし、視界が暗くなってきた。

 薄れゆく意識の中で見たのは、二体の巨大な芋虫が僕をかじる姿だった……。


 ***


 気がつくと街の広場だった。


「おお、セドリック様。死んでしまうとは情けない」

「ミネルバさん! 本当に僕は死んでしまったのですか?」

「加熱していないプルルフには強烈な催眠効果があるのですよ。街の外であんなものを食べてはいけませんね」


 やってしまったかぁ……。

 これが現実世界だったら完全にアウトだった。


「死の経験はいかがでしたか?」

「本当に怖いものでした。できるならもう二度と味わいたくないですね。ここが仮想世界で助かりました」

「そうですね。ですが、エビスタにも死のペナルティはあるのですよ」

「な、なにがあるのですか?」

「ステータス画面を開いてください」


 ?



【ジョブ】魔法剣士(レベル6)

【スキル】二段切り(レベル3 次のレベルまで0%)

     火炎剣 (レベル2 次のレベルまで0%)

【魔 法】初級治癒(レベル2 次のレベルまで0%)

【装 備】銅の剣、鉄の剣・鋼の剣、厚手の服・革のブーツ

【持ち物】なし

【所持金】236レーメン

【ヴィレクト金貨】3枚


「あぁっ!」


 スキルや魔法の経験値が0%になっているじゃないか!

 それに、所持金が半分になっているぞ。

 なんてこった……。

 そういえば、家臣を助けるのにポイッチュや傷薬は使ってしまったよな。

 治癒魔法が使えるとはいえ、準備が悪すぎたのも反省だ。


「西の森には数種類の魔物がいます。油断しないでくださいませ」


 忠告を与えてミネルバさんは消えてしまった。

 よし、もう同じてつは踏まないぞ。

 まずは要らない装備を売って、ポイッチュや傷薬を買い足して、それからプルルフを集めるのだ。


 兄さんからもらった鋼の剣はエビダスでも問題なく使えた。

 だから、銅の剣や鉄の剣は売ってしまった。

 あちらの装備がこっちでも使えるのはありがたいな。

 使いやすいものを空間収納に入れて持ってくるとしよう。

 特に【厚手の服】は動きにくいからね。

 兄さんに頼んで防御力の高い装備を新調してもらおうかな。

 僕は護衛なんだから、ケチな兄さんもそれくらいなら認めてくれるかもしれない。

 ああ、現実世界と仮想世界の通貨が共通だったら便利だったのになあ。

 お小遣いでいろいろ買い揃えられるし、逆にエビダスで稼いだかねを使ってアバンドールで豪遊できたら楽しそうだ。

 だけど、エビスタではレーメン、アバンドールではグロンである。

 まとまったおかねができたら、金や宝石などに変えるのも手だな。

 それならどちらの世界でも換金できそうだ。

 折をみて、そういう店がないか調べて見るとしよう。

 買い物を終えて僕は再びデイリーミッションに乗り出した。


このお話がおもしろかったら、ブックマークや★での応援をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ