【5】法王
【法王キーワード】
正位置のキーワード
モラル/支援/ルール/許し/精神性/伝統
逆位置のキーワード
偽善/悪用/ズルい/不信/浅はかさ/背信行為
イメージカラー:赤
神殿の中庭に鳥の囀りが響いている。
大司教(86)は執務室に置かれた朱塗りの椅子に腰掛けて王宮から届いたツヴァイ家の顛末書に目を通していた。
咳の鎮静用にいれたエルダーフラワーシロップを氷水で割った飲み物が机に置かれカラリと涼し気な音を立てている。
大司教の真っ白な髪に目が隠れるようなほさほさ眉は某犬種を連想させるが好々爺に見えて以外と喰えない所がある。
「既に話は耳に入っているんだがな。」
ホッホッホ…と笑いながら読み終わった顛末書を丁寧に畳むと椅子に深く腰掛けた。
アァルがツヴァイ家から神殿に逃げ込んでからそれなりの月日が経っているツヴァイ家が腐り落ちるのを王家は待っていたのかも知れないのだか…。
奪爵されたツヴァイ家の人間が頼ってきた場合は相応の劣悪な環境でのみ受け入れるよう国内外の宗教関連施設に根回してある。
プライドだけは高いようなので恐らくあの連中が耐えられないと思う。
奪爵によりアァルの立ち場が微妙になるが隠居した旧ツヴァイ家の血族がどう動くか次第だ。
空になったグラスを見た神官から新しく入れ直すか聞かれたが断った。
森に魔法使いが戻ってきたらしい、エルダーフラワーシロップは魔法使いから入手したものだ。
森に戻ってきた魔法使いは特徴からその時に神官兵を返り討ちにして魔女狩を諦めさせた大魔女だろう…幼い見た目はあの頃から全く変わらない見た目に騙されて手出しすると今度こそ国が滅びかねない。
神殿と魔法使いは80年前に大規模な魔女狩が行われたこともあり関係性は今まで良好とは言えなかった。
咳止めのシロップを分けてもらえる関係性まで回復できたのは奇跡だと思う。
実は大司教は魔女狩の最中にアンズに会ったことがある。
子供の頃に神殿の勉強から逃げるために使用していた抜け道があったのだが傷だらけで追手から逃げる少女を逃がすために道を教えただけだ。
「アンタの事、忘れない。」
明るいオレンジ色の髪と歯を出して笑う笑顔が眩しく見えた。
大司教からすると一生に一度だけ神殿に対して背いた事だ。
忘れないと言っていたアンズはもう覚えて居ないだろうが…
女教皇が内なる声に耳を傾けるのに対し法王は年長者の意見を聞けというカード。
故に大司教のお爺さまは各宗派に連絡を取り目的達成のために相談しています。
ゼーレ会議みたいな感じかな?
次回は【6】恋人
アァルの義妹リィゥのお話