【2】女教皇
【女教皇キーワード】
正位置のキーワード
洞察力/清らかさ/繊細さ/経験/学び/キャリア
逆位置のキーワード
批判的/狭い視野/潔癖すぎ/厳しすぎ/空回り/未熟/
イメージカラー:白黒 青
神殿の一室でアァル・ツヴァイは親族から届いた実家の現状について書かれた資料を読み深いため息をついた。
聖女見習いとして与えられた部屋は白い壁に黒い窓枠の実にシンプルな部屋だったが個室なのはある程度配慮がされているのだと思うし華美に飾られた部屋より居心地は良かった。
神殿には母が身罷ったときに身の安全を確保するために聖女見習いとして入信させて頂いた。
入婿の父が愛人と娘を張り切って家に入れツヴァイ家の乗っ取りと思われる行動をとっていたから、母の親族はブチギレだったのだけれど。
母方の親族に身を寄せる話もあったが正直誰が敵で誰が味方か判らない状況なら神殿が一番安全に感じたという事もあるわ。
裏で母の親族が色々蠢いていて実家についての情報提供も母の親族から定期的に届いている恐らく母方フィルターがかかっているから鵜呑みにしてはいけないと感じているの。
継母と義妹から迷惑をかけられる前に離脱に成功して現在は神職関係者が通う学校で学んだりして聖女見習いとしてスキルの向上に努めるようにしているの。
このまま神殿暮らししても良いし還俗する事になってもここで学んだ事は後々役に立つと思われるし。
軽食の干した棗椰子を口にして再び資料に目を戻す。
愚かな父は商会で真面目に働いていた魔術師をスクロールの複写ができるようになった事を理由に解雇したらしい。
複写を重ねた結果スクロールに術式の掠れ等が生じてまともに発動しない物がでてリコール騒ぎになっているみたい。
愚かね、本当に愚かよね。
オリジナルをちゃんと確保した上での複写じゃない。
例えば複写用のオリジナルを描く作業の合間に新しい術式の研究時間を与えてキャリアアップを図らせるなんて…あの短絡的な父には想像できなかったのかしらね。
追い出した魔術師を見つけるか代わりの魔術師を見つけるか…スクロール事業は仕切り直しになるけどリコール後の商会に余力あるかしら…
アァル自身はツヴァイの名を捨て神殿で生涯暮らすことも視野にいれていたが一部それを良しとしない者達の意見がある事は理解している。
…そろそろ奉仕の時間だわ。
アァルは聖女の着る青衣に袖を通しながら机に残している王家の蝋封が付いた書簡を眺めた。
母が生きている頃に王家から王子の婚約者候補の話があったらしいことは聞いていたがツヴァイ家から距離を取っている今は率先して関わりたい話ではない。
貴族社会の煩わしさから離れると戻る気が起こらないのが最大の理由だが王家に返事をしない訳にはいかないため次の休憩時間に対応を考える事にした。
今はツヴァイ家や王家と適切な距離を保つにはどうすれば良いのかしらね。
白い壁に黒い柱が目立つ廊下を歩きながらどう立ち回るかを思案した。
聖女アァル
ちょっと潔癖気味な風紀委員系乙女。
魔術師が意志を持って外側に発信するのに対し女教皇は静かに内側に向かう感じ。
愚者、魔術師のデッキからは初手離れた位置に配置。
アァルは世俗から隔離されているが学べる環境は充実している神殿での生活を好ましく思っているようなので暫くは引きこもり継続な模様。
次回【3】女帝
トリァ王妃は王子の嫁候補だったアァルが出奔した事で周囲が騒がしいようです。