愛音の歌
愛音は自作の曲をアカペラで歌い始める。
愛音が歌い始めると、闇の存在が愛音にも呪いをかけようとした。すると、母がその存在に魔法をかける。
「やめなさい!」
黄金色の光が手のひらから溢れ出し、弾き返した。闇の存在がひるんだ隙に兄が結界を張る。
愛音は再び歌い始めた。
「誰かが呼んでる
ほら……耳をすまして
心を開いて
奪われた心を
取り戻して
君を助けたい
君を救いたい
笑顔をこの世界に
取り戻そう」
闇の存在は頭を抱えて苦しみ始め、体の持ち主から出て行こうとした。その時突然雲行きが怪しくなり、ポツポツと雨が振り始めた。
母が皆の呪いを解き、皆は再び動けるようになった。
「あ、動くようになった! ありがとうございます!」
まずソフィアがお礼を伝える。
「僕もだ! ありがとうございます!」
「俺も、ありがとう、愛音ママ!」
3人の魔法が破られて、闇の存在は悔しそうにした。
「くそ! あの魔女やるな……あの魔女を倒せば……」
「やめたほうが良い、あの魔女。かなりの実力だ」
楽器が濡れないように魔法をかけると、再び皆で楽器を奏で始め、愛音も共に歌う。愛音、奏太、ソフィア、ロナルドのハーモニーが大きな光の渦となり、闇の存在達を苦しめた。
凛は皆の音色を風の魔法に乗せて、世界中へ広げていく。
日本から広がり、スウェーデンのソフィアの家族の元へ。アメリカのロナルドの家族の元へも、広がり記憶の病にかかった者たちに浸透して行った。
「あれ? 今まで私、どうしていたのかしら?」
まるで夢から覚めたようにしっかりとし始める。そして、愛音達が捕まった施設にある小箱が愛音達の音楽により開放された。
☆ ☆ ☆
「大変だー! 箱が!」
施設のスタッフ達は騒ぎ始めた。
「どうした?」
「箱が勝手に開き出した!」
「何だって?」
愛音達の音楽の魔力で閉じこめられていた沢山の人の記憶が、一気に溢れ出した。その勢いは凄まじく……施設を破壊した。
「う……」
愛音達の力に弾き飛ばされ、床に突っ伏している彼らは目を覚ますと、正気に戻っていた。
「……帰ろう、家へ」
「そうだな。何でこんな所にいるんだ?」
「分からない……夢を見ていたのかもしれない」




