両親の正体
「まさか! 入って来た?」
大知が身構えると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「外は大丈夫だよ。今のうちに倒しに行けるよ」
のほほんとした様子で現れたのは父だった。父はいつもかけてるメガネを外していた。
「パパ? メガネは?」
「ああ、あるよ」
父はいつものメガネを凛に見せた。
「外の人達は僕が閉じ込めたから大丈夫」
「え?」
皆で外を覗くと操られた人々は、地面から生えてきた植物のつるに囲まれて身動きが取れなくなっていた。
「え? あれ、パパが?」
「うん。メガネを外すと精霊の力が使えるんだ」
「そうだったの……?」
愛音はもうついていけない。
「パパまで……魔法使いだったの?」
凛が聞くと父は首を横に振った。
「いいや。魔法使いは槙子さんだけだよ。僕の家系は精霊王に守られているんだ」
「そうだったんだ……」
大知はやや放心気味だ。
「話もしていたいが……今のうちに戦いに行こう」
「そうね! 腕がなるわ。さあ皆、楽器を外へ出すわよ」
母が手を動かし呪文を唱えると、ハープと胡弓が宙に浮き瞬間移動をした。外へ移動したようだ。次に、奏太のピアノを外へ移動させた。
「ママ! 凄い!」
「このくらいならどうって事ないわよ。凛、あなたも魔法使いよね?」
「うん、風の魔法だよ」
「風の魔法。素敵ね」
外には閉じ込められた人々が植物の隙間から腕を出し、今にも出ようとしていた。しかし、つるは頑丈な為外には出られない。
愛音達は外へ出て音楽を奏で始めた。美しい調べが辺りに響き渡る。
周りには操られた総理大臣や、世界中に散らばっていた闇の存在が集まって来ていた。
「来たわね!」
どこからかぎつけたのかテレビカメラも現れた。
愛音達は音楽に集中して行く。皆の演奏に合わせて愛音は歌い始める。
「やめろ!」
「やめてくれ!」
闇の存在達は苦しみだし、体の持ち主から出て行こうとする。
その時、リーダーが呪いの魔法を皆に向かって放った。
「これで、もう邪魔は出来ない!」
闇の存在のリーダーは勝ち誇ったように笑っている。
「え? 指が石に?」
最初にソフィアの指が石にされてしまう。
「ソフィア! あ、僕もだ!」
次にロナルドが、呪いを受ける。そして、奏太にもかけられてしまう。
「皆! あ!」
指だけが石になり演奏することは叶わなくなってしまった。
「何ということでしょう! 彼らの指が総理大臣によって石になってしまいました!」
テレビ局のリポーターが興奮気味に伝えている。
(総理大臣じゃなくて、闇の存在だけどね)
愛音は心の中で呟いた。
「皆に……何するのよ……」
静かに怒りを感じながら、愛音は深く息を吸い込んだ。




