選択
「その通りじゃ」
先生はアンナに向かってうなずいた。
「どうして日本だけ皇室なんですか?」
「それはじゃな。はるか遠い昔、日本神話の神々から天皇制度が始まったからじゃ」
「他の国は王国なのに?」
ピーターは首をかしげている。
「そうじゃな。日本は王国にはならなかった。天皇は王様よりも上の身分なのじゃよ」
(知らなかった! 何か私まで勉強してるみたい)
愛音は皆の中にいながらも誰にも気づかれずに、様子を見ていた。
「先生! 天皇陛下は神様ですか?」
レオが質問した。
「いや、神の子孫と言われているが……神ではないのじゃよ……しかし、これも全て日本神話として語られていることじゃ」
「聖書も日本神話も、世界中の神話で語られていることはほぼ事実じゃ。脚色されている所もあるし、信じる者は少ないがの」
そこで場面は変わり、愛音は別の記憶の中にいた。
1ヶ月後の結果発表の日。どの国へ産まれるか決まる日に愛音は来ていた。
アンナは真ん中に、ジェイは右隣り、レオは左隣りに座り、その隣りにピーターその後ろにウルリーカが座っている。
「それでは発表する。日本人はアンナ、レオ、ジェイ」
“わぁ!”と嬉しそうな声があがる。
「アメリカ人はピーター。スウェーデン人はウルリーカ」
“ああ……”と落胆する声が聞こえる。他の者達もそれぞれの国を発表された。
「ピーターにウルリーカは日本人の資質があるのじゃが、日本ではない国の方が生きやすいのではないかと、判断されたのじゃよ。だから、気を落とす必要はないのじゃ」
ピーターとウルリーカは黙ってうなずいた。
「さて、ここからが大切じゃ。これから君達に産まれる西暦、性別や家庭環境、親を決めてもらう」
「私達が決めるんですか?」
アンナが先生に尋ねる。
「左様じゃ。君達が1番産まれた目的を達成しやすい性別、家族構成、親を決めるんじゃよ」
一人一人の前に、履歴書のような親の候補のプロフィールが書かれた用紙が置かれる。
アンナはとある夫婦に目を留めた。
「父親は植物園で働き、母親はハーブショップの店員……」
ジェイにも同じ用紙が置かれていた。
「あのさ、アンナ」
「何?」
「その……生まれ変わったらさ、アンナの兄貴になっても良い?」
「え?」
「近くで守りたいからさ」
「うん、良いよ」
「良かった……」
「俺は、幼なじみ希望、ちょうどアンナの家族の隣の家に良さそうな家族が住んでるんだ」
「レオ……」
「アンナの近くに産まれて、また恋人になる」
「レオ……嬉しい」
2人は視線を交わし微笑み合う。
「全く、隙あらば見せつけてくれちゃって」
ジェイは兄貴希望は早まったかもと独り言を言った。
「う〜ん……スウェーデン。スウェーデンは構わないけど、誰にしよう? やっぱり豊かな自然と関わる家が良いかしら……」
ウルリーカはブツブツと独り言を話している。ふと、牧場を営んでいる家族が目に留まる。
「あ! 良さそうかも……」
ピーターは履歴書を前に頭を抱える。
「アメリカ……僕の目的……地球の人達を助けること。僕がしたいこと……」
うなりながらピーターは履歴書を見ていると、ある夫婦が気になった。夫婦は宇宙開発の技術者だった。
「宇宙に関わる仕事をしている夫婦か……宇宙種族を信じているかも……それに、それなりに裕福みたいだし、やりたいことやるならお金は必要だしな……」
ピーターはその夫婦に決めたようだ。