和やかな時間
テーブルにカリカリに焼かれたベーコンエッグと、食パンやロールパン、サラダなどが置かれた。
皆で朝食を食べ終えると、パパが興味深そうにソフィアとロナルドに声をかけた。
「日本語は分かるのかい?」
「分かります。得意です」
「話せます」
2人は流暢に日本語を話してみせた。
「君達は、愛音達とどういう繋がりなんだい?」
「僕達は、音楽で繋がってます」
「音楽?」
「ええ。愛音と、奏太、私とロナルド皆はフーチューブで配信してます」
「へぇ……そうなんだね」
ニコニコと人が良さそうな笑顔を浮かべながら、返事をする。
「樹さん。そろそろ……」
「ああ、そうだね。もっと話したいけど、そろそろ仕事へ行かないと……しばらくいるんだろう?」
「はい、そのつもりです」
「じゃあ、また夜に」
皆に笑顔を向けながらパパは仕事へ向かった。
「お兄ちゃん、大学は?」
「しばらく休むって連絡したよ」
「大丈夫なの?」
「うん。取りあえずはね」
「大知。大学休むの?」
何も知らない母は大知に怪訝そうな顔を向ける。
「うん。えーっとさ、やむを得ない事情?」
「……何か考えがあるのね?」
母は大知の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「うん。とても大切なことなんだ」
「分かったわ」
「愛音は?」
愛音は自分にも聞かれると思わなかったため、驚いてしまう。
「え?」
「高校行くの?」
「うん……世の中が今こんな状態だし、単位は大丈夫だから私も少しの間休むよ」
「分かったわ。凛はどうするの?」
「うーん……私も休む」
「そう」
母は愛音と凛の学校へ連絡を入れた。
「さて。皆に伝えないといけないことがあるの」
母がそう言った時玄関のドアをドンドンと叩く音が聞こえた。外の様子を覗くと、家の周りに操られた人々がびっしりと囲んでいた。
「来たわね……」
母は静かに言うと皆に向き直った。
「今まで隠していてごめんなさいね」
そう言うと愛音の近くへ寄ると、愛音の喉に手を当てた。すると、愛音の喉が光輝き歌声が戻って来た。
「ママ!? どういうこと?」
「魔法使いなのよ、私」
「マ、ママが魔法使い? 私と同じ?」
凛が驚いて目を白黒させている。
「知らなかった……普通の人間だとばかり……」
大知も驚きを隠せないようだ。
「どうして隠してたの?」
「危険だから……ちょっと待って」
母は辺りの様子を伺うようにしている。
その時玄関のドアが開いた。
母は渋々と言った様子で大知の話を受け入れた。




