一ヶ月
地底世界で過ごす時間はとても和やかで穏やかで……あっという間に過ぎて行き、気づけば一ヶ月程経っていた。
「流石に……長くいすぎたかな?」
朝食を食べながら奏太は皆に話を振る。
「そうだね……地上も気になるし……」
愛音がチラリと奏太に視線を向ける。
「それについては、大丈夫じゃよ」
先生はにこやかに微笑みながら答えた。
「何でですか?」
「これを」
皆の前にスクリーンを映し出し、地上の様子を見せた。
映ったのは地上の街の様子だ。人々は以前の様に生活をしている。
「どういうことですか?」
ロナルドが質問をする。
「皆が突然姿を消して、地上ではもちろん騒ぎになっていた。しかし、一ヶ月ほど経ったことで皆への関心も薄れて来ている。闇の存在の動きも相変わらずじゃが、何より君達を敵対視しているから、戻るのを待っているようじゃ」
「それまでは、あまり動かず、君達が戻るのを見計らって君達と地球人類にダメージを与えようとしているのじゃ」
「そうなんですか」
「そういえば、パパやママ達、心配してるよね?」
ソフィアは心配そうな瞳を皆へ向ける。
「そうだな……っていうかもう、今更だよ」
ロナルドもやらかしたと言わんばかりの表情をする。
「今まで誰一人として言わなかったのも不思議だけど……」
「目の前のことでいっぱいいっぱいだったからね」
愛音が言うと凛が肩をすくめる。
「まぁ、家の親なら大丈夫だよ」
大知は楽観的だ。
「捜索願い出されたりして……」
奏太は不安そうだ。
「家は……どうかな?」
ロナルドは少し寂しげな表情を見せる。
「……きっと、心配してるわ」
隣りにいたソフィアはロナルドの手を優しく握った。
「ありがとう……ソフィア」
ソフィアは返事をする代わりに、包み込むような笑顔でロナルドを見つめた。
「そろそろ地上へ戻るか?」
大知は皆へ問いかける。
「そうね……」
「戻ろうか」
ソフィアとロナルドは返事をする。
「うん、戻ろう」
「私も。帰りたい」
「うん、俺も」
続いて愛音に凛、奏太も返事をする。
「では、明朝に戻るとしよう」
翌朝になり、先生に皆は別れの挨拶をしていた。
「先生、ありがとうございました!」
「お世話になりました!」
「またいつでも来て良いからな」
「はい! でも、どうやって来たら良いか分かりません」
「その時は、わしを呼んでおくれ」
「どうやって?」
「そうじゃ、大知。それを地上で使えるようにしよう」
「え? あ!」