地底人の先生
「この間は皆捕まって大変じゃったけど、今はどうしてるのかな?」
モニターに皆の姿を映し出すと、皆は楽器を弾いていた。
「ふむふむ。頑張ってるな。しかし……愛音は可哀想じゃな……闇の存在に歌声を奪われるなど。皆と戦いたいのに戦えないのは辛いじゃろう」
モニターから目をそらし、しばらくの間考え込んでいた。
「リーダーは恐らく……これまで以上に強いだろう……このままでは皆は……」
地上では、音色に人が集まり動画が撮影され始めた。
「ねぇ、あれって、愛音と奏太じゃない? それにソフィアもいる。胡弓弾いてるのは……分からないけど、とにかく演奏凄いから見て!」
「本当だね! こんな所で演奏するなんてどうしたんだろう?!」
女子高生らしい子が友達と興奮気味に話している。
テレビ局も到着し、あまりの騒ぎに総理に取り憑いた闇の存在が姿を現した。
「この騒ぎは何ですか?」
「総理!」
守衛に止められるも総理は愛音達の近くへやって来た。その瞳は施設にいた人と同じように、何も映していなかった。
総理は禍々しい雰囲気を放っている。
「こんな所で演奏されては困ります」
総理が結界に近づくとぐにゃりと結界が歪んだ。
「なっ! 何で?」
大知はすかさず結界を張り直す。
総理は人の恐怖の気持ちを餌にし、計り知れないほど強くなっていた。
「……邪魔ですね」
総理は結界を難なく通り抜けた。記憶を失った者たちは操られ、総理官邸に集まった。愛音達の周りにゾンビのように群がり、愛音達はゾンビのような人々に囲まれてしまい、動けなくなってしまう。
「そこまでじゃ!」
何の前触れもなく地底人の先生が姿を現した。
突然現れた地底人にテレビ局が撮影をしようとした。ところが、地底人の力により、カメラは壊れてしまい撮影不可能になってしまった。
「あれ? カメラが映らない。どうなってるんだ?」
「スマホの撮影も出来ない。どうなってるの?」
地底人の先生は、総理に向かい手のひらを向ける。すると、総理は後ろへ弾き飛ばされた。
「総理!」
警備員が総理にかけよる。
「うっ……」
痛みにより動けないようだが、大した怪我はしていない。
「皆、大丈夫かの?」
「先生!」
「時間がない。説明はあとじゃ。ひとまずわしと共に行こう!」
地底人の先生が手を空へかざし、呪文を呟くと愛音、奏太、大知、凛、ソフィア、ロナルドは一瞬にして姿を消した。




