発見
愛音と奏太は2人でこっそり地下へ向かった。監視されているため、適当な言い訳を考えなければいけない。
「友達が捕まったんです。会わせてください!」
「駄目です」
氷のように冷え切った瞳を愛音と奏太に向けて、スタッフは冷たく言い放つ。
(友達っていうのは嘘だけど)
どうにかして地下を見たい2人は上の階へ戻るふりをして歩き回っていた所、偶然ドアが少し開いていた部屋を見てしまった。
「奏ちゃん!」
ヒソヒソ声で愛音は奏太に囁く。
「何?」
「見て、この部屋」
「あ」
2人は部屋の中にある大量の小箱に目を奪われた。部屋には指輪ケース程の小箱が積み上げられている。
「何かな? あれ」
「うーん……きっと見つけたらヤバいやつ?」
「そうだよね。こんな地下に沢山置いてあるんだもん」
「にしても、不用心だよね」
「何が入っているのかな?」
愛音が部屋へ入ろうとドアを更に開けると、小箱がカタカタと振動し始めた。
「え? 何?」
『助けて……出して……』
思わず愛音はドアを閉めた。
「聞こえた? 奏ちゃん?」
「うん」
「今の……何?」
「とにかく、相当やばいのは分かった。行こう、愛音。見つからないうちに」
「そうだね」
愛音と奏太は上の階へ戻ると、ソフィアとロナルド、大知に小箱のことを伝えた。
「めちゃくちゃ怪しいじゃん」
大知が鼻息を荒くする。
「だよね」
「小箱……何が入っているのかな? 愛音はどう思う?」
ソフィアに聞かれ、愛音は考え込む。
「そうだね……闇の存在が隠したい物。都合が悪い物……」
「奪われた記憶だったりして?」
奏太が小声で囁く。
「え?」
「薬を飲むと悪化する、ワクチンもそう。闇の存在が作り出した物だから……」
「まぁ、確かに何で記憶を抜き取るんだと思ってはいたよ」
大知が真剣な眼差しをする。
「だよね。抜かれた記憶をどうするつもりなんだ?」
ロナルドが宙を見つめながら考えている。
「記憶がなくなり自分が誰かさえ分からない。そんな状態の人間は抜け殻のようなもなのだからな。操りやすくもなるよ」
大知は苦虫を噛み潰したような顔で拳を握りしめた。
「私、歌ってみる」
「愛音……」
「ほら、皆楽器取られちゃったでしょ? 私には歌があるし、やれるのは私しかいないから」
「ごめんな、愛音。1人で危険な目に合わせて」
奏太は愛音の手を優しく握った。
「愛音のことはオレ達で守ろう」
大知が皆に言うとソフィアとロナルドは頷いた。
愛音達は沢山の人が集まる場所へ移動した。そして、歌い始めると楽器の時と同じように弱い闇の存在は消えて行った。不快そうな顔をしたスタッフには、ある程度強い闇の存在が憑いていた。
「そんなことをしても無駄です」
スタッフは突然愛音に向かい手の平を向けると、闇の魔法をかけた。一瞬の出来事に誰も動けなかった。
「……っ」
愛音は歌声を奪われてしまった。




