抵抗
「俺はピアノを弾いている時に政府の人間が来たんだ。あとは、ロナルドと同じだよ」
「そうか。なあ、これからどうする? 逃げようとしても無駄だと釘刺されたしな」
「だからと言って、このまま捕まっている訳には行かないよ」
「奴らの隙を付いて……」
「しぃ」
人差し指を口に近づけ、静かにするジェスチャーをしながら周りの様子を伺い、奏太が小声で話す。
「愛音達と話せたら良いけど」
「皆のそれぞれの力で倒せないかな?」
そんな話をしてから数日後。逃げようとする者が現れた。彼はすぐに捕まり別室へ連れて行かれ、薬を飲まされてしまった。更に地下室へ連れて行かれ、まるで罪人のように監視されてしまう。
「聞いた? 逃げようとした人がいるって?」
「うん。地下へ連れて行かれたって。薬を無理やり飲まされたみたい」
愛音達と同じ部屋の人達が噂をしている。
「本当ですか?」
愛音は彼女達に近寄る。
「え? そうみたいですよ」
「ありがとうございます」
愛音はお礼を言い皆に連絡を入れ、奏太、大知、ロナルド、ソフィアと談話室で会った。
「この状況をなんとかしないと」
ヒソヒソと皆で固まって話している。
「皆で音楽を奏でない? 私は歌うから」
「うん、やってみよう」
奏太がそう言うと他の皆も頷いた。
皆は楽器を持ち出し、外へ出ると建物の前で演奏を始めた。
しかし、力の弱い闇の存在は苦しみだし、取り憑いた人間から出て行ったものの、ある程度の力のある闇の存在はびくともしなかった。
更にその闇の存在に楽器を取り上げられてしまい、彼らのフーチューブも消されてしまった。
「どうしたら良いんだ!……監視も更に厳しくなっちゃったな」
ロナルドが談話室でうなだれる。こうしている今も遠くからこちらを見ているスタッフがいる。
「そうね……彼らの弱点でも見つけられたら良いのに……」
ソフィアはロナルドの隣に座り励まそうとする。
「私、行ってみる」
「え?」
「何をするつもり? 愛音?」
奏太が心配そうに聞く。
「弱点を探りに行くの」
「危ないよ、愛音」
「そうだよ。何かあったらどうするんだ?」
「大丈夫、奏ちゃんにお兄ちゃん。気を付けて行くから」
「……俺も行く」
「奏ちゃん?」
「愛音を1人で行かせる訳に行かないよ」
真剣な眼差しで愛音を見つめると愛音は嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、奏ちゃん」
「頼んだ、奏太」
「大知さん。大丈夫です。愛音のことは任せてください」




