兄弟でお出かけのはず……
あれはまだ愛音がまだ奏太への気持ちに気づく前のこと。日曜日、3人で出かけようという話になった。
「どこに行く?」
「皆で遊園地行かない?」
愛音が提案すると2人は“良いよ”と返事をした。
遊園地は親子連れやカップルで賑わっている。皆で色々な乗り物に乗っていると、女の子の声が聞こえてきた。
「奏太! 次、あれ乗ろうよ!」
「え……うん、良いよ」
声のした方を振り向くと、奏太が見たことない女の子と一緒にいた。
(え? 奏ちゃん?)
「あ、奏太!」
愛音が声をかけられずにいると、気付いた大知が声をかけた。奏太が大知の声の方を見ると、愛音の姿が視線に映り銅像のように固まった。
「え? 愛音」
「奏ちゃん……」
「あ、これは違うんだ。この子はいとこで……」
「そうなんだ。別に関係ないし」
「愛音……」
悲しげな瞳を揺らす奏太に愛音の心が痛む。
「奏太! 誰? その子達」
すっと奏太の腕に少女は腕を絡める。
(え? 何か嫌……)
「せっかくだからさ、皆で周らない?」
大知は何故かそんなことを言う。
(え? お兄ちゃん?)
「良いよ」
「ちょっと! 奏太!」
少女は明らかに不機嫌になった。
愛音は奏太といとこの少女が気になりぼんやりしていていた。凛と大知は2人で乗り物に乗っている。そこへ知らない男性が近付いてきた。
「君さ、1人?」
「え?」
茶髪にピアスを大量に付けたチャラそうな男性が、愛音に声をかけた。
「いえ、1人じゃありません」
「一緒に遊ばない?」
「……困ります」
「良いじゃん。その友達も一緒にさ……」
「愛音!」
普段大きな声なんて滅多に出さない奏太が、離れた所から叫んだ。周りの人が奏太を見るが、奏太は愛音しか見えていない。
「奏ちゃん!」
奏太は軽やかに走って来ると、男性の前に立ち塞がった。
「何だよ。彼氏連れかよ」
チッと舌打ちをして彼は引き下がった。
(良かった……)
「愛音。大丈夫?」
奏太は愛音のことを見つめると、心配そうにまつ毛を揺らした。
「大丈夫だよ。ありがとう、助けてくれて」
「ううん」
「愛音、行こう」
奏太は愛音の手を引くと歩き出す。
「どこへ?」
「お化け屋敷」
「えぇ? 怖いから良いよ。ねぇ、あの子は?」
「……トイレ」
「え? 良いの? ほっといて」
「良いよ」
「でも……」
「愛音。……黙って」
「え? 奏ちゃん?」
かすかに低い奏太の声色に愛音は震えた。
(怒らせたかな?)
2人でお化け屋敷へ入ると、薄暗く不気味な雰囲気が漂う。歩いていると突然ひんやりとした何かが愛音の頬に触れた。
「きゃっ!」




