両親の秘密
槙子と樹が出会ったのは、22年前のこと。
槙子はハーブショップで働いていた。そこへ現れたのが植物園で働く男性、樹。槙子はハーブを持って来た樹と出会った。
「こんにちはー!」
槙子がハーブに水やりをしていると、入り口から声が聞こえた。
「はーい!」
槙子が駆け寄ると、長身で眼鏡をかけた真面目そうな男性が、ハーブの苗を台車に乗せて立っていた。
「ハーブ入荷しました!」
「あ。お疲れ様です!」
樹は槙子を目にした瞬間、身動きがとれなくなり、固まってしまった。槙子は雪のような白い肌にサラサラの黒髪を一つにしばっていた。クールビューティな女性だ。
樹は一目惚れをした。
何度も顔を合わせるうちに2人は惹かれ合い、一緒に出かける仲になった。植物好き通しの出逢いは心地よくて、楽しい時間を過ごすことが出来た。
ある日のデートの時のこと。2人はボートのある公園に行った。樹はそこで槙子に告白をするつもりだ。手漕ぎボートにのりながら、樹は槙子に想いを告げた。
「槙子さん、僕と付き合ってください!」
「樹さん……ありがとう。でも、ごめんなさい。あなたのことは好きだけど……秘密があるの」
「秘密?」
「ええ。今は言えないしそれを黙ってあなたと付き合うのは出来ないの。ごめんなさい」
樹は好きになった槙子に振られてしまうが、樹自身にも誰にも話してない秘密があった。
「……分かった。残念だけど、これまで通りにしよう」
「ええ」
お互いに好きなのに付き合えない……2人にとって辛い日々が始まり、けれどお互いを忘れることができず……。今まで通りがとても苦しくて仕方ないと樹も槙子も感じていた。
やがて、月日が流れ2年後。2人の気持ちは変わらず、2人は秘密を打ち明け合い結婚した。
結婚後2人は話をしていた。
「この秘密は子どもが産まれても伝えるのは止めよう。こんな世の中だから」
「そうね。危ないものね」
「もし、このことが周りに知られたら大変になるからね」
「ええ。本当に。産まれてくる子どもを守る為にも」と、話し合い2人は子ども達には時が来るまで黙っていようということになった。
2人が夫婦になりまもなく、アンナ達が遠い宇宙から両親を選んでいた。2人はアンナ達に選ばれていたなどと思いもせず……アンナ達が産まれてくるその時まで、2人は仲睦まじく暮らしていた。
アンナ達の両親はごく普通の両親ではなかった。その秘密が明かされるのはしばらく先のこと。




