それぞれの覚醒1
ソフィアはニュースの新薬発売に飛び上がった。治験もそこそこにすぐに発売されることになったが、多くの人はこれで助かると飛びついた。
「ママ! あの薬を飲めば良くなるよ!」
「……あなたは誰なの?」
「え?」
「娘だよ」
(早く薬を買いに行かなきゃ)
発売された薬をソフィアはドラッグストアに買いに行く。
「……申し訳ございません。品切れしております」
「……そんな」
薬はあっという間に売り切れてしまい、ソフィアは手に入れることが出来なかった。
(どうしよう……)
ソフィアは家へ帰り羊と話をする。
「どうしよう、薬売り切れてた。ママ、病気なのに……」
ため息を付きながらソフィアは部屋へ行き、ハープを取り出し音色を奏でる。すると、今までよりも音が清らかに澄み渡り、ソフィアの頭に産まれる前の映像が流れた。
(そうだったのね。私)
ソフィアは全てを思い出しながらハープを弾き続け、音は闇を浄化する光を放った。音が気になったのか、母が部屋へやって来た。
「音が聞こえたけど……何の音?」
母が部屋へ入ると、音色が母を浄化して行き、力が抜けたように座り込んでしまう。
「大丈夫? ママ!」
ソフィアは駆け寄り母に寄り添う。
「……ソフィア?」
「良かった! 思い出したのね!」
ソフィアはギュッと力を入れて母を抱きしめる。
「今まで、どうしていたのかしら?」
「記憶が消える病気にかかったのよ」
「そうだったの。辛い思いさせたわね」
「ううん、良かった。本当に」
母が完治し、ソフィアは2人に報告する。
「思い出したの。全て。あなた達も仲間だったのね……久しぶり。アンナにレオ」
「久しぶり、ウルリーカ」
2人はソフィアに返信する。
やがて、スウェーデンから世界中に病が広がりロナルドのいるアメリカへも忍び寄り始めた。
フーチューブではますますスウェーデンのソフィアへの風当たりが強くなる。
『スウェーデン最悪』
『ハープ弾いてるソフィアさんは悪くないよ』
愛音と奏太はかばうが、なかなか収まらない。そこで愛音は緊急ライブで歌うことにした。
注目を集め始めた愛音は奏太と一緒に出演し、歌を披露した。ライブを見ていた視聴者は、酷いことを言う気持ちが抜け落ちて行き、何で悪く言っていたんだろう?と首をかしげていた。
アメリカのロナルドも皆を見守っていた。
ロナルドの両親は宇宙開発技術者をしている。いつも忙しく、ほとんど両親は家にいない為、家政婦がいる。ロナルドの父も病に感染してしまった。
「パパ?」
ロナルドは家に帰っていた父に声をかけようと部屋へ行った。
「誰だ?」
「え? 僕だよ、息子のロナルド」




