告白
「それでさ」
言い辛そうにしながら奏太は話し続ける。
「うん」
「レオとアンナは恋人だったんだよね?」
「うん」
「だからって訳じゃなくて、俺さ……」
「うん」
奏太は顔を強張らせながら震える手で飲み物を一口飲む。
「……愛音のことが……」
「うん」
「……その……」
なかなか言い出せずにいる奏太に、愛音は優しく声をかける。
「奏ちゃん? ゆっくりで良いからね?」
「愛音……」
奏太は大きく深呼吸をすると、愛音をしっかりと見つめた。
「……好き……なんだ。結婚前提に……付き合ってください!」
その瞬間愛音の心臓がドクンと大きな音を立てた。
「嬉しい……奏ちゃん」
向日葵の花が開花したような美しい笑みを愛音は奏太に向け、優しい涙が頬を伝った。
「愛音?」
愛音の涙に奏太は少し戸惑いを見せる。
「……好きだよ。奏ちゃん、宇宙で1番」
「愛音……ありがとう」
外は暑く溶けてしまいそうな程なのに、2人の空気も周りを溶かしてしまいそうだった。2人は恥ずかしがりながらデザートを食べ終えた。
「そういえば……」
奏太は思い出したように愛音に声をかける。
「ん? 何?」
「特殊能力のこと」
「ああ……うん」
「俺はピアノだった」
「うん、そうだよね。奏ちゃん、ピアノで生きていきたいんでしょ?」
「うん」
「……あ! ねえ、奏ちゃん? 2人でフーチューブやらない?」
「え? フーチューブ?」
「そう! 私が歌って、奏ちゃんがピアノ弾くの」
「フーチューブ……」
「どうかな? そうしたら沢山の人に奏ちゃんの演奏聴いてもらえるし、私も歌えるし。ね?」
愛音は輝く瞳を奏太に向ける。
「……そうだね。やってみる」
気乗りしない様子だった奏太は、愛音と一緒ならと提案を受け入れたようだ。
「それじゃ、夏休みに入ったら始めよう?」
「うん」
2人が家へ着く頃には夕陽が傾いていた。
家へ入ると兄に泣きつかれ、うんざりしながら愛音は部屋へ向かった。
(お兄ちゃんには奏ちゃんと付き合うこと黙っておこう)
愛音は凛にだけ奏太とのことを伝えることにした。ちょうどその時ドアの外から声が聞こえる。
「お姉ちゃん?」
「凛?」
「入って良い?」
「良いよ」
「どうだった? デート」
部屋に入りながら凛は聞いてくる。
「……って、返事を聞くまでもない顔してるね。良かったね。お姉ちゃん」
「そんなに顔に出てる?」
「うん、私は世界一の幸せ者ですって顔に書いてある。で? 何があったの?」
「うん……耳かして?」
凛は愛音に顔を近づけると愛音は小声で凛に耳打ちした。
「奏ちゃんと付き合うことになった」
「良かったね!」
思わず大きな声を出しそうになった凛は、慌てて小声で話す。
「うん、ありがとう。それにね、奏ちゃんに可愛いって言ってもらえたよ。凛、ありがとう」
「オシャレして良かったね」
凛は嬉しそうに笑っている。
「うん」
「でも、お兄ちゃんには気をつけてね?」
「うん。シスコンだからね」
「付き合っていること知ったら、黙ってないよね? だって、今日だけでもお姉ちゃんの所に行くって言って大変だったんだよ……」
うんざりした顔で凛は言う。
「それは……お疲れ様」
まるで目に浮かぶようだ。
「どうにかならないかな? あのシスコン」
「彼女作れは良いのにね?」
「ああ……ね? モテるんだから」
凛はやれやれと言った具合に肩をすくめる。
「凛、私と奏ちゃんフーチューブ始めることにしたの」
「え? フーチューブ?」
「そう。私が歌って奏ちゃんは伴奏。奏ちゃんの演奏を皆に知ってもらって、私も皆に歌を聴いてもらうことをするの」
「へぇ……良いね! 絶対に聴くね!」
「ありがとう」




