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地球へ愛のハーモニー  作者: 宮守 美妃
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始まり


 暖かな陽射しが降り注ぎどこからか桜の花びらが舞い降りる、春の日。


 高校生の愛音(あいね)と大学生の兄の大知(だいち)は2人で買い物へ出かけていた。2人は東京の八王子に住み、近くのショッピングモールへ行った帰り道、歩道を歩いていると乗用車が突っ込んで来た。


 止まろうとしない車をすれすれの所で避けた拍子(ひょうし)に転んでしまい、愛音はショックで気を失ってしまう。車は電信柱にぶつかり止まった。どうやら居眠り運転のようだ。


 愛音と運転手はそれぞれ救急車で運ばれ、両親や末っ子の(りん)がかけつける。意識はまだ戻らない。




☆ ☆ ☆




「先生、愛音の状態はどうなんですか?」


 母親が沈痛な面持ちで医者に尋ねる。

「検査の結果、特に問題は見当たりませんが、目を覚まさない原因が分かりません。様子を見ましょう」


 父親は母の肩を慰めるように抱き寄せる。

 


「お姉ちゃん……」


「愛音……ごめん……」

 兄は愛音に呟く。


 愛音は夢を見ていた。何もない真っ白な空間。上下位は分かる。奇妙な場所だ。

「久しぶりじゃな」


 2メートルほどの身長で、茶色の着物を着た白髪が肩まであり、一つに後ろで束ねている男性の老人が現れる。


「誰……ですか?」


「忘れているものは仕方がない。産まれる前に全ての記憶を消したのじゃからな。しかし、時は来た。全てを思い出し覚醒するのじゃ」


 老人は空中にスクリーンを映す。見ると産まれる前の記憶がよみがえって来る。記憶の中へ入り込んで行く。






 会議室のような一室に人々は集まり、映画のスクリーンのような巨大な映像を見ていた。部屋の外には濃紺の宇宙空間に星々が煌きらめいている。


「それでは皆さん、これが2030年の地球の映像です。ご覧ください」

 進行役の女性が話している。


 そこに集まる人々はあらゆる惑星ほしからやって来た地球を愛する宇宙種族達。“地球を守る会”のメンバーだ。

 映し出されていたのは地球を乗っ取りたいと企む闇の宇宙種族達が支配している世界。   


 人々の記憶を吸い取って操り、病気だと言っては薬を与え、地球人は正常な人間がほとんどいなくなってしまっていた。


「ひどい!」

 誰かが叫んだ。

 辺りは重い空気に包まれる。映像は終了し、進行役は再び話し始めた。


「……地球では現在西暦2000年ですが、このような悲惨な未来が地球にやって来ます。この未来を変えて行く為に皆さんにご覧頂きました。さて、皆さん。地球を助ける為に地球に産まれませんか? 転生を志願する方は名乗り出てください」


 しばしの静寂が辺りを包みこんだ。


「私、地球へ行くわ!」

 最初に名乗り出たのは天使系宇宙種族のアンナだった。澄んだ声が響き渡る。


(あ、あれは……私?)


「え? 行くのかい? アンナ?」



「ええ。この未来が来ることを変えられなくても、その後の未来を変えることなら出来るわ。このままでは地球が危ないのよ」


「そう……分かった。俺もこの未来を変えたいしね。俺も行くよ」

 聞き心地の良いやや低音の声が聞こえる。


「レオならそう言うと思った」

 見つめ合い微笑み合う2人は恋人だった。


「待て! オレも行く!」

 名乗りをあげたのは彼女に片思いの友人の男性ジェイ。彼は高めの声をしている。

 3人の背中には光の翼が生えている。天使系宇宙種族は、翼が生えている以外は人間と何ら変わりない。


(私、宇宙種族だったんだ……これは、産まれる前の記憶なの? それにレオって……あの人……)


「あら、あなた達も志願するのね?」

 声をかけてきたのは別の惑星の種族の女性。

 彼女も善なる宇宙種族だ。身長が2メートルぐらいある以外は人間と変わらない。温かみのある低音の声をしている。


「君たちの気がしれないね。地球人なんて愚かじゃないか」

 そう言ってきたの彼も他の惑星の善なる宇宙種族。小人のように小さい姿をしているが人間と変わらない。頭の先から出てるのかと思わせる高音の声をしている。身長が1メートル位。彼は人間が嫌いらしい。


「そうね……確かに人間はいつまでも戦争や争うことを止めようとしないわ。でもね、皆同じ神から産まれたのよ。兄弟も同然じゃない!」


「兄弟? 地球人と?」


「お前さ、行く気ないなら黙ってくれる?」

 とジェイ。


「いいや。行くよ」


「え? 行くの?」とアンナ。


「嘘だろ?」とレオ。


「ハハハハ……」と空笑いしているジェイ。


「信じられない……」と2メートルの女性。


「なんだよ、良いだろ、別に!」

 顔を赤らめる小人のような彼。


「良いけど……」


「うん、まぁ……」


「行きたいなら……」


「誰も止めないわ」


「そうしたら皆で勉強ね。地球について色々学ばないと」

 アンナは皆に向かって微笑んだ。


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