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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
二章 チュートリアルなんてなかった

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模索



 魔法も魔術も発動させるにあたって必要なのは魔力であるのは言うまでもないのだが、それとは別に想像力が必須となる、という部分が地味に人によっては苦労する部分であるのもそうらしかった。

 というのもウェズンはその苦労をあまり理解できていないから、あくまでも周囲の反応だとかでそう認識しているに過ぎない。


 だがしかし、想像力が足りていないと思っていたのと何か違う……といった感じで発動するらしく、そうなると思っていたよりも威力が下がるだとかの弊害もあったりするらしいのだ。

 威力に関しては使用魔力量にもよるけれど、それでも具体的に思っていたイメージ通りの術が発動するのと、何か違うな、というようなのが発動した場合、威力や効果は大分違ってくるらしいのだ。

 授業でテラはそこら辺さらっとしか言わなかった。大体想像力に関してなんて授業でも説明が難しいだろうし、そこを具体的に……とはならなかったんだろうなと思いはしたものの。


 その結果、こうして現在も難儀している生徒が目の前のイルミナである。


 ウェズンにとっても魔法だとか魔術を自分で使う事になったのは此度の人生が初めてではあるけれど、前世のアニメや漫画、ゲームといったもので魔法のエフェクトだとかをそれなりに見てきた事が良かったのだろう。イメージする事に苦労した事はない。

 こういう感じで発動して威力は大体これくらいかな……といった漠然とした考えが術に作用しているのか、あまりに高威力の術を使おうとしない限りは暴発させそうな不安もない。


 まぁ普段はあまり凝ったイメージだとかをせず空気が圧縮するイメージだとか、爆発するイメージだとかを多用しているけれども。なにせ手っ取り早いもので。


 だがしかし、以前イルミナと行動を共にした学外授業でウェズンは魔物相手にちょっとした魔術を使ってみせた。光に寄ってくるタイプの魔物だったので、じゃあ勝手に集まって自滅してもらおうと思った事が発端だったはずだ。

 炎で蝶を模ってそれらで魔物を誘導し、やって来た魔物をそのまま燃やす。

 労力的にとても楽な討伐であったのは言うまでもない。


 恐らくはそれを見たからこそ今回イルミナはウェズンに目をつけたのだろう。


 そういえばあの時、何の術なのあれ? って聞かれてファイアーボールの応用って返したんだった。

 先程イルミナが見せたファイアーボールと比べればそりゃあ自分の事を師匠と呼び始めてもおかしくはない。何せ片や本当にそれ火か? と聞きたくなるような代物で、片や火の玉どころか火の蝶である。

 芸術点とか採点するような機会があれば中々にいいセンいくのではなかろうか。まぁそんな見た目にこだわった術を……となるとそれこそ見た目にこだわりすぎて今度は威力が……という奴だって出てきそうな気がするのだけれど。

 できる奴なら見た目も威力も両方いいとこ取りができるかもしれないが、そうじゃなければどっちかに偏りすぎる結果になりそうだ。


 今はともかく、もし仮にとても平和な世界になったらそういうのもありそうだな……とは思う。

 今はともかく。


 ともあれ、自分の魔術がなんかもう全部同じような見た目の術になってしまうらしいイルミナからすれば、それを改善しないと……! という気持ちがあるのはわからなくもない。

 そして目の前にお手本になりそうな相手がいたら、これだ!! となるのもわかる。


 わかるのだが……


「つまり、魔術に関するレクチャーって事……? え、それ僕がやるの?

 他にもっといい人いなかったの……?」


 正直探せば他にもいるだろ、と思ってしまったのは否定しない。

 イアだって前世で多少なりともゲームに触れた事があるようだし、映画だとかで特殊効果バリバリなやつだってそれなりに見ているはずだ。

 実際イアの使う魔術だって見た目におかしなものはない。見た目・効果・威力そこら辺でどうにかしないと……! と危機感を抱くようなものは何もなかった。


 自分よりも同じ女子同士の方が余計な身構えとかなくていいんじゃないか? とウェズンとしては思うのだが……


「聞いたわ。でもキラッとさせるだとかズバッとやるだとか、効果音ばかりでよくわからなかったのよ……」


 そんな疑問をウェズンが口にすれば、イルミナはさめざめとした表情で返してきた。


 あ、それはわからないな。納得した。

 こう、ズバーッとやってシュババババー、ってなったらなるよ、とか前に何かの話で言われた事を思い出す。あれ何の話の時に出てきたんだったかな……? と記憶を掘り起こしてみるも前後の流れがさっぱりだった。

 全く説明ができない、というわけではないのだがそこそこの頻度で効果音が先立つ説明になってしまうのは一体どういう事なんだろうか。前世の弊害か?

 それとも元々なのだろうか。

 そこら辺はきっと本人に聞いてもわからないのだろうなと思える。


「聞けばイアの幼少期の世話の大半はウェズンがしてたっていうし、魔術に関する事は当時関わってなかったとしてもイアを連れてくるよりはマシかな……って」

「他の候補はいなかったの?」

「正直、あまり」


 ウェズンたちがチームとして行動する時のメンバーは現時点、ウェズンとイアを除くとレイ・イルミナ・ヴァン・ルシアだ。イルミナ本人をそこから更に除外して、残った三名の中から魔術に関する教えをうけろとなると、真っ先にレイが除外される。何せ彼は自分でも魔術よりは物理でいくほうが手っ取り早いと豪語しているので。勿論絶対使わなくて済むならともかく、どこかで使う事になるのは言うまでもないし、使えないよりは使えた方がいざという時の選択肢が増えるので苦手なりに覚えようとはしているけれど、そんな状態のレイと一緒になって魔術を覚えていこうね、とはイルミナからすればならないだろう。


 実力が同じくらいで理解度合も同じくらいならお互いゆっくり成長していきましょうね、が通用するかもしれないけれど、イルミナは魔女の血を引いている。つまりは知識はそれなりにあるわけで。

 理論的な部分をレイに教えるのはできるけど、レイがイルミナの欠けた部分を補えるか……となると正直微妙である。


 ヴァンもまた魔術をそれなりに扱えてはいるけれど、なんというかとてもお手本のような感じなのだ。

 むしろそっちの方が初心者向けでは? と思えるのだけれど術のイメージが完全固定化されているような気がしていざという時応用がきくか……となるとこれもまた微妙。基本はバッチリっぽいので、その部分がどうにかなれば後は各自でどうにか……みたいなやつだ。基本がそもそも危うい状態のイルミナからすれば、ヴァンに教えてもらうのは決して無意味な事ではないはずだ。


 とはいえ、彼は周囲に言いこそしていないが瘴気耐性が一般平均よりだいぶ低そうなので、行き先を指定された先が危険だと判断したなら何があっても行こうとはしないだろう。授業で行くしかない状況ならともかく、今回のように自主的に行き先を選べるとなれば余計に。


 この黒の森とやらの瘴気濃度はそこまで高くないとは思うけれど……イルミナの魔術の練習に付き合うとなれば、失敗した結果瘴気が発生するなんて事もあるだろうし、そうなるとヴァンがイルミナの頼みに付き合う可能性はかなり低くなる。


 ではルシアはどうか、となると。

 正直ウェズンはルシアの実力をはかりかねている。決して弱いとは思わないが、目に見えて強いと言えるほどでもない。恐らくはクラスの中で平均的な感じではないだろうか、と思う。

 魔物退治で学外に出向いた時に魔術を使っているのを見た事はある。ただあの時はどちらかといえば結果重視みたいな感じで発動させていたので、見た目はどうだっただろうか……下手をすればイルミナの魔術みたいに全部似たような見た目で発動させてる可能性もある。そうだ、と断じる事ができるレベルでルシアが魔術を使っているのを見る機会がないので何とも言えないが。


 三日間という短期間にて与えられた課題。

 自分の実力に合わせての魔物退治あたりが無難かと思われるけれど、それ以外の内容だってマトモであれば問題はないだろう。

 魔女の魔術強化、と考えればレポート次第ではどうにか合格をもらえそうではある。


 とはいえそれは、イルミナの魔術が改善されてこの試練とやらをクリアできればの話になるのだけれど。


 前回失敗しているという言葉もあるので油断はできない。

 試練がクリアできずとも、レポートの内容次第では及第点がもらえるといいなぁ……と、始める前から既にウェズンは弱腰であった。いくらイアの教育をそこそこしていたとはいっても、日常生活のあれこれを教えるとの魔術を教えるのとではわけが違う。


 たとえ試練をクリアできなくても、いい線いった、くらいにまではいきたいところ。

 とはいえ、そこら辺はイルミナ次第だ。まぁ、本人もやる気に満ちているようなので、頑張ればどうにか……などと思いつつも、さてどこから手を付ければいいんだろうか、とウェズンは考え始めたのである。

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