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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
二章 チュートリアルなんてなかった

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不安の原因



 今回の調理実習のメンバーだけのグループトークを作りはしたものの、そこで延々何を作るかなんて議題は面倒だったので放課後になってから一先ず教室に残ったままウェズンたちは話し合いをする事にした。

 各々自室でモノリスフィアで連絡を取るのも時と場合によるけれど、ぶっちゃけると文字を打つのが面倒だったというのもある。


 例えば話し合いが終わった後でそういや〇〇はどうするんだっけ? みたいなやつならまだしも、まだ何を作るかも決めていないうちから何作る? なんていちいち入力してられるかという話だ。

 入力そのものは慣れれば画面を見ずともある程度操作可能になるかもしれないが、いかんせん現状でそれは難しかった。


 他のグループは昼休みに話し合っていたり、他のあまり人が来ない場所で話し合う事にしたのか既に教室から立ち去っていて、教室にいるのはウェズンたちだけだ。


「で、何作る?」


 もう根本的な部分すぎてわざわざ口にする必要ある? という気持ちでいっぱいだがそれでもウェズンは確認するように問いかけた。


「何って言われてもな……普段食べてるようなのでいいんじゃねーの?」

 ウェズンの言葉に最初に返したのは意外にもレイだった。

「奇を衒ったものを作って失敗するよりは確かにそうなんだけどさ。ただあの……ちょっと聞きたいんだけど普段何食べてらっしゃる人?」

「なんだお前その普段人がゲテモノ食べてるみたいな聞き方」

「いやそんな喧嘩売るような質問した覚えないけど。ただちょっと考えてほしいんだけど、普段さ、朝と夜に関しては自室で食べる事のが多いじゃん。昼は食堂とか購買で何か買ってくるってのもいるけど。

 普段皆が何食べてるかとか、正直いちいち気にした事がないから普段食べてるものって言われてもさ、自分と同じだと思ってたら全然違ったとかありそうじゃん。

 そうでなくとも多分皆出身地違うだろうし」


 ひく、と口元のあたりを引きつらせていたレイではあるが、しかしウェズンの言葉を聞いて一理あるなと納得する。確かに言われてみれば、そもそも飯時に周囲が何食べてるかなんて細かく見た覚え、少なくともレイにはなかった。そんなものを気にする暇があるならさっさと自分の食事を済ませる方が余程マシだからだ。

 たまに誰かが食べてるやつで目を惹くような美味しそうなのがあれば、何食べてんだ? と聞く事はあるだろう。けれどもそうじゃなければ周囲などそう気にした事もない。


 同じ学園で生活しているとはいえ、しかし生活様式が皆同じというわけではないだろう事を今更のように思い出す。


 これが、個室ではなく集団で一つの部屋を使い生活する、だとかであればもっと早くにその事実に気付いただろう。だが基本は個室で、しかもその部屋も自分の好みでカスタマイズ可能なのだ。更に料理は食堂のメニューから決めるとはいえ、個人の好き好きで選べるわけで。


 そうなると普段食べてる物、と一言で言っても意見が一致するとは限らなかった。


 食堂のメニューから何か作りやすそうなものを……という感じでメニューを決めるにしても、何気に食堂のメニューはそれなりに多い。レパートリーが少なすぎて気付けば毎食同じようなのをローテーションして食べてる……なんて事には今のところなっていないが、多いとなるとそれはそれでやはりここで意見が一致する可能性は低い気がする。


 ウェズンは何となく普段の食生活は前世の記憶もあってか、それなりにバランス良く摂るようにしているけれど、それでも食堂のメニューを見てなんだこれ? というのもいくつかあった。

 馴染みのない名前。どんな料理かわからなくて思わずナビにこれどういう感じのやつ? と聞くことも一度や二度ではなかった。

 あまりにも人気がないメニューはそのうち撤廃される可能性もあるけれど、それでも現時点でメニューにあるという事はそれなりに注文している人がいるのだろう。

 救いと言っていいかはわからないが、和食と呼べるものが普通にあるのがありがたかった。家にいた時は割と洋食メインだったので。


 だが、それ以外にも色々あったのだ。


 メニューにあったコシャリという文字を見て、わぁ前世だったらエジプト料理って言われるやつじゃん……と思ったのも記憶に新しい。

 この世界にかつてエジプトから迷い込んだ異世界人がいたのか、はたまた別世界だけどコシャリが当たり前のようにある世界の人がここで広めたのか……それとも元々この世界に最初からあるものなのか……なんて考えた末に、気にはなったが頼みはしなかった。

 そもそも馴染みがないので。


 ナビに確認してみれば、一応自分が知っているコシャリとほぼ同じだったけれど、エジプトの国民食と言われていようともウェズンは別にエジプトで生活した記憶も経験もないので懐かしいと思う程でもなかったし、どうしても食べたいわけではなかったので。


 それ以外でも名前は何となく知ってる海外の料理のやつだー、なんてのがメニューにはちらほら載っていたのだ。


 なので、普段食べてるやつ、と一言で言われても正直どれです? と思うのは当たり前だった。

 全然見知らぬ名のメニューもあるわけだし。


 ウェズンが知ってる海外の料理がしれっとここに存在しているという事は、もしかしたらゲテモノに該当するようなのも混じっている可能性だってある。

 もしそんなのを普段から食べてますけど? というのがこの中にいた場合、最悪とんでもねぇ物を作り出さなきゃならなくなるのだ。事前の確認は大事である。


 ここでナチュラルに昆虫食が主流です、という人がいた場合、とんでもない事になりそうな予感しかしない。前世でウェズンはイナゴの佃煮とハチノコは食べた事があるけれど、あれだって見た目が見た目なので口にするまでの間結構な勢いで葛藤したのだ。食べたら美味しいと思ったけど。だが見た目でどうしても躊躇するし、妹たちは無理! と口をそろえて叫んでいた。気持ちはわかる。

 一度食べて美味しいものだと認識できても慣れるまでに相当かかったし。ちなみに弟たちは平気で食べれるのもいたけどどう足掻いても無理だったのもいた。


 前世で多少そういうゲテモノと呼ばれそうな物も食べた事がないわけではないので、ウェズン的にはカエルあたりが食材に出てきてもまぁ、どうにか……妥協できるとは思う。鶏肉に近い味って言うし。だがしかし蛆虫入りのチーズとか使うと言われたら間違いなく拒否る自信しかない。

 自分が食べなくていいなら別に何使おうとご自由にと言えるのだが。


 普段食べてるもの……と言われてそれぞれが何とはなしにそれぞれに視線を向ける。

 別に普段何食べてるかくらいは言っても構わないのだが、自分が普通だと思っているものが他者にとってはそうじゃなかった場合を考えると気軽に口に出すのは何となく気が引けたというのもあった。


 そんな雰囲気を感じ取ってしまったが故にウェズンは、それじゃあ、と口を開く。


「何作るっていうか、まず何作れるか、からにしない? それぞれの料理の腕もわからないのにメニュー決めてみたもののやってみたらだめでした、なんて事もありそうだしさ。

 明日、材料持ち寄ってちょっとそれぞれ一品簡単なの作ってみるとか」


「まぁ確かに無難かもしれないね。それでそこそこ良さそうなのがあったらもうそれを調理実習のメニューにしてしまえばいいわけだし」


 即座に頷いたのはヴァンであった。

 簡単な品を一つ、というのであればまぁ前菜に出るようなのでいいだろう。そう判断したというのもある。これで各自フルコースを作ってみよう、とかだったらそれはちょっとと苦言を呈したわけだがそれくらいなら反対する理由もない。


「一応明日場所借りれないか先生に確認してみる」

 言いつつモノリスフィアからテラへと連絡をしてみれば、即座に第四調理室空いてるからそこ使っていいぞと返信がきた。


「……それじゃ、それぞれ材料持ち寄って明日皆でそれぞれ作ってみる、って事で」

 これで場所を借りれなかったら他の場所で作るとか、それ以外の――素直に本番一発勝負としてメニューだけ決めてしまうだとかになっていたわけだが、一応練習を兼ねる事ができそうなので反対意見は出なかった。え、何作ろう、なんて呟きは聞こえたけれど、断固拒否する! なんて駄々をこねる者はいなかった。こねたところでどうしようもないというだけの話だからやらないだけかもしれない。


 明日、皆で場所を借りてそれぞれで一品作るのであれば、やたらと凝った料理を作る事もないだろう。手軽にさらっと作れる物になるはずだ。

 そういうわけなので。

 ウェズンは何を作ろうかと悩んでいるイアを見て、多分大丈夫なはず……と内心で十字を切った。

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