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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
一章 伏線とかは特に必要としていない

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どこからがフラグなのか



 そこそこの日数が経過すれば、それなりに学園生活に慣れも出てくる。

 だがしかし、そうした気の緩みから怪我をする者も現れる頃合いなのか、最近よくテラが身の回りに気を付けるように、という事が増えた。


 ウェズンとしては油断したりするつもりはないし、勿論学外授業だとかで外へ行く時なんかは特に気を付けている。学園内にいる時でも、時々他の教室の乱闘騒ぎが廊下から外へ、みたいに規模が広がったりすることもあるのでそちらも中々に油断できない。


 静かな場所ならともかく、下手に周囲が騒がしい時はそれらの音を適当に聞き流していると本当に危険だったりするのだ。


 それもあって、寮の自室以外では常にそれなりに周囲に気を付けているのだけれど、それでもテラはそういった注意をしていたし、なんなら他の教室の教師も言っているようなのだ。


 なんだろう。要注意週間とかそういうやつでもあるんだろうか。そんな読書週間みたいなノリで物騒な事されても困るんだけど。


 なんて思いながらも、まぁ下手に反抗する必要もない。

 テラのクラスの生徒なんかは案外反抗的なのもいそうだというのに、意外にも皆大人しくその言葉を聞いていた。


 他の教室の生徒の一部が時折何やらにやにやとしていたのが気になって、たまたまそのクラスの知り合いに声をかけてあの人たちは? と聞けば、どうにも今年入った新入生たちは大抵そういった生温かい眼差しで見られているのだとか。

 つまり、ああして訳知り顔でさも自分たちは既に知っていますよ、みたいな感じでいる連中は少なくとも去年かそれよりも前からいる生徒であるという事だった。


 とはいえ、直接聞いても「これからわかるさ」としか言われず、具体的にこれから何が起きるかまでは教えてもらえないらしい。

 先輩にあたる生徒がそうなので、教師に聞いても勿論答えてはくれなかった。


 とはいえ、そういった態度をとられているとなると、これから先何かがありますよ、というのはいくら察しが悪くてもわかる。

 一体何があるんだろう。

 教師は相変わらず気をつけろとしか言わないし、先輩にあたる生徒たちも頑張れよとしか言わないし、新入生に対する何らかの洗礼でもあるのだろうか。

 そう思いはしても、結局何が起きるかなんてさっぱりだった。


「明日の授業は休みだ。明日一日、自由に過ごしてもいいが学園の外に出る事はできない。寮の自室にでもこもってゆっくり休むのをお勧めするぜ」


 授業が終わって言われたテラの言葉に、ウェズンはへぇお休み、と降ってわいた臨時休暇にちょっとそわっとした。

 一応休みがないわけじゃないけれど、皆が皆同じように授業に参加しているわけじゃない。学外授業に出た時は場合によっては何日か向こうで足止めを食らう事もある。だからこそ、座学の授業に関しては地味に大変な事もあるのだが、授業の遅れに関しては他の教室の生徒と合同だったりするし、休みはなんていうかバラバラだったりする。そういうところで何となく前世を思い出した。

 学校卒業して就職か進学で進路別れた友人とは中々休みが合わず会えなかったっけなぁ……そんな気持ちになって、一体どこに向かって思いを馳せているのかもさっぱりではあるが。


 ともあれ、ある程度他の連中と休みがかぶっている、というのが何とはなしに貴重に思えたのである。


 とはいえ、どうにもテラの言い方が気にかかるし、他のクラスの先輩たちの様子もおかしい。


 学園の外に出られない、というのも妙な話だ。

 神の楔にメンテナンスとかそういうのはない。だからこそ、使おうと思えば使えるはずなのだ。

 けれど、学外に行くのはできないと言う。駄目、ではなくできないと言われた事が引っかかった。

 テラの言い方から、明日は部屋で待機しろとしか受け取れない。


 神の楔以外の学園内部の施設だとかの整備がある、とかだろうか。

 けれどもそれにしては……そうだとしても先輩たちの様子はおかしい。


 一体何事なんだろう、と思いながらウェズンはイアが何か原作関連で思い出した事がないだろうかと思って視線を向けた。

 イアは最近よく学外授業で一緒になる事が多かったからか、ルシアと楽しげに談笑しているところだった。


 ルシアは男のはずなのに、こうやって見ているだけなら女生徒に見えるので仲の良い女友達ができたんだな、という風に見えるから不思議だ。

 とはいえ、イアもルシアの性別は分かった上でまるで女友達のような気安さが見受けられる。


 ルシアの態度も、イアの反応も、なんというかこれからくっつきますよといった感じではないのでウェズンはとりあえず放置することにした。

 イアの今の年齢はまだ未成年と言えるけれど、中身は前世持ちだ。彼女の前世が果たして何年生きていたのかはわからないが。

 けれどもまぁ、あまり妹の交友関係にあれこれ口を出す気もない。

 流石にいかにも怪しい相手と関わるようであれば心配するし忠告というか警告じみた事を言ってしまうかもしれないが、見た目はお子様だろうと中身までそうではないのだ。

 なのでウェズンはひとまずイアの事は見守る方針だ。



 ともあれ、授業を終えたのもあってウェズンは適当に学園内をぶらぶら移動した後、寮へ戻った。

 イアに話しかけようにも生憎とルシアや他の生徒と話に花を咲かせていたので、声をかけられなかったとも言う。急用だとかであればそれでも声をかけたかもしれないが、話しかけたとしても内容が内容だ。


 モノリスフィアで通話しようにも、お互いの部屋の世話係にも聞かれる可能性を考えると不味いかもしれない。メール機能もあるけれど、何かの拍子に会話ログを第三者に見られるかもしれない事故などを考えるとそれも避けたかった。


 適当に学園内を移動していると、ウェズンたちと同じように明日は休みで、部屋で大人しくしてろと言われた他のクラスの生徒たちも思い思いに教室から出てきた。

 そうして友人と話しながら通り過ぎて行く。

 その会話の一部がウェズンの耳にも届いて、まぁ、だろうなぁと声に出さずにウェズンも同意していた。


 休みと言われて部屋で大人しくしてろ、なんて言われたって大半は素直に従う事もないだろう。

 これが今日の授業で明日一日動くのもつらい、なんて状態ならともかく、今日の授業はそこまでハードな訓練だとかもなかった。つまりは、大半の生徒たちは元気が有り余った状態である。


 なので明日は休みで学園から出られないにしても、遊ぶ約束などをしている生徒たちがそこかしこにいるのである。

 遊ぶったって何するんだろう……と思いはしたが。まぁ、大抵の生徒たちは学園と寮の往復くらいしかしてなさそうだし、折角だからこの機会に島を探検しよう、なんて事になっても……と思う。

 実際ウェズンも誰かを誘うかどうかはさておき、この機会に島に何があるのかを把握しておきたいなと思っているし。


 幼児かよ……と思わないでもない。

 休日に遊びに行く、というのがこれがまぁ、アミューズメント施設とかならわかる。年齢的にも。

 確かにこの学園にいる生徒たちの年齢は同じようなものではなくそれなりに離れている事もあるけれど、それにしたっていい年なわけだ。公園の砂場で山作ってキャッキャするような年齢でない事だけは確か。


 学外に行けないからってじゃあこの島探検しようぜ、っていうのが遊びになるか……と聞かれると。


 一体どこの田舎の話だとなってしまう。


 まぁ、世界の命運かかってるような状況だし、学園に娯楽施設が整いすぎてたらそれはそれで……となってしまうけれども。


 健全過ぎて一周回って不健全に思えてくるレベル。

 そんな風に考えて、ウェズンの口から知らず乾いた笑いが漏れた。


 かつてこの世界に異世界からやってきたという連中の中には、娯楽系統のものを布教するようなのがいなかったのだろうか。いや、いたとしてもなんて言うか、世界が隔絶された時点で廃止されたりしてそうだなという思いもある。もしかしてアングラとか言われるような裏社会に行けばそういうのあったりするのかな。興味がわいたが、流石に確認してみようとは思わなかった。


 ちょっと前にチューリップ採取した場所以外のところをとりあえず見てくるか……なんて思いながら、ウェズンは今日の所はさっさと休もうと決めて自室へと戻っていったのである。

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