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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
十章 迷走学園生活

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適任者とは



 レジーナの身柄を任せても良い、と思った相手を呼び出したというのもあるのだろう。

 伴侶選びだけであるのなら、この場には男性陣だけが集められていたはずだが、しかしここには女性陣もそこそこいる。

 だからといって、レジーナと同性婚するつもりは女性陣にはないようだ。

 イアとウィルは完全に傍観者としてその様子を眺めているし、ファラムも、

「わたしにはウェズン様がおりますので」

 と早々に無関係を決め込んだ。


 アンネに至っては話を聞いているのかいないのか、爪をヤスリにかけて整えている。

 一見聞いてなさそうだが、それでも面倒を押し付けられそうな事になれば即座に反論をかますだろう事は何となく察せられた。


 なおこの場にイルミナとアクアはいない。

 まぁ、仮にレジーナの面倒見てあげられそう? なんて聞いたところで、むしろあの二人には荷が重すぎるだろう。


 イルミナはもう少し成長すればどうなるかわからないが、あちらは自分の面倒を見るので精一杯。

 アクアはそもそも他人の面倒を見る気がないのがあからさまだ。

 気が向いたらもしかしたら……とは思えるが、正直友人が飼ってるペットを可愛がるくらいが限度な気がする。


 女性陣には最初から望みを持っていなかったのか、メルトとクロナは視線を男性陣へと向けた。


 真っ先に目が合ったのは、ウェズンである。

「すいません、僕は将来ファラムと結婚する予定なので、重婚はちょっと」

「ウェズン様の妻の座を譲るつもりはありませんからね!」


 念を押すようにファラムが言った事で、早々に候補からは外された。


「俺もごめんだぜ」

「レイにはウィルがいるもんね!」


 結婚するかどうかはさておき、確かにこの二人は何だかんだこの先もずっと一緒にいるんだろうなぁ……と思えるので、そこに割り込ませるのはな、とこちらも早々に候補から外された。


「僕もねぇ……将来的な事を考えると政治的な面でちょっと」

 申し訳なさそうな顔をしつつ全く申し訳なさそうじゃない声でヴァンが言う。

 実際彼に押し付けるのはあらゆる点から無しだとウェズンは思うので、ここでごり押しされる事はなかった。


 仮にも一国の王子に、本人は無害だけど有害なオプション付きの女をくっつけるとか流石に問題でしかないし、仮にヴァンがレジーナと結婚したとして、将来的に夫婦喧嘩に発展した時、神の楔を用いた瘴気汚染度上昇などの方法でヴァンが殺されかねない。一番選んじゃダメなやつだった。


「えーっと、ボクもまぁ、無理かなぁ……面倒見るより見てほしい側なんで」

 これもこれで発言的にアウトな事を言っているが、しかし周囲はルシアだもんな……で納得してしまった。

 他人の世話をする事ができなくはないけれど、ルシアの場合それが仕事と割り切れる場合か、自分の意思で好きでやってる相手ならいいが、レジーナの存在はルシアにしてみればあまり良いものではない。


「俺も無理。何かあった時に責任取れないし取るつもりが最初からない」

 アレスが断言する。

 それでも押し付けられた場合、どうなってもいいんだね? と言外に含ませている時点で、こいつに任せたらアウトというのが滲み出ていた。


 ちなみにハイネはこの場にいないので、ウェズンのクラスの中でそこそこ絡む相手はこれで全員が却下されたわけである。


「……世界を救うのは勇者と相場が決まっている、が」

 苦い物を噛んだみたいな顔をして、メルトがこの場にいる学院の生徒に視線を向けた。


 ちなみにここにいる学院の男性メンバーはワイアットとザイン、それからシュヴェルである。


 他にもそれらしき候補がいそうだが、しかし学院側の有望株は大体ワイアットがぶちのめしているので、適任者と呼べそうな相手がいないのである。

 普通に魔物退治に出向くくらいなら安心して任せられる相手は沢山いるが、今回の件を任せるには荷が重すぎる。


「えー、僕に言ってる? 確かに学院に所属して勇者側ではあるけれどさぁ、本当の意味での勇者として考えてごらんよ。適任かい?」

「正直お前は魔王側にいてもおかしくはないな」


 メルトが即答した。むしろこいつなんで勇者の肩書持ってるんだろうと大勢が疑問に思っているくらいなので、誰も反論しないしできない。

 そうでなくとも、危険因子であるのならサクッと殺せばいいじゃん、という意見を真っ先に出したのがワイアットだ。彼に任せたら何かあった時点で即レジーナは死ぬ。流石にそれは可哀そう……と思ったかどうかはさておき、これでワイアットも候補から外れた。むしろ外れて当然である。


「おれも無理っすー。うちには面倒みないといけないチビどもがたくさんいるんでこれ以上面倒見切れないっすー」

 やる気ゼロの声でザイン。ウェズンは彼の事情を一切知らないが、まぁ彼に任せるのはどうなんだろうな……と思う部分もあったので、いやいや、そんな事言わずに、なんてごり押すつもりはない。


「オレが適任に思えるっていうのなら、流石にどうかと思うぜ」


 シュヴェルが真顔でのたまう。

 まぁ、彼自身が望んで進んで立候補した場合はさておき、そうじゃないなら駄目そうだな……と明らかにわかりきっているので、ここもそう言わずにさぁ、とは誰も言えなかった。


 というか。


 そんな風に誰かに押し付けようとした場合、言い出しっぺの法則としてお前がやれよと言葉のブーメランがやってくるのが目に見えているのだ。

 誰もやる気がないし、誰かに押し付け合う気もない。

 人選が限られているといっても、誰一人適任者がいないのである。


「教師とかは?」

 しれっとアレスが生徒にそんな重大な件任せようとしないで大人がやれとばかりに口にしたものの。


「……貴方たちの中で、適任だと思える教師がいるのですか?」


 クロナに静かに問いかけられて。


 ウェズンが思い浮かべたのは、言わずもがな担任であるテラだ。

 だが……


「あ、やっぱなしで」


 アレスが即座に否定した。今の発言なかった事にしといてください、とあまりにも華麗な手の平返しだった。


 まぁそうなるよな、とウェズンだって思う。


 テラは面倒見が悪いわけではないけれど、結構大雑把な部分もあるのでそういった部分がレジーナと相性が悪かったりすれば最悪の展開まっしぐらである。

 ウェズンとてレジーナの事はそこまで詳しくないけれど、それでも今までの言動を思い返してみれば、テラとは友人になれたとしても恋人や結婚相手にはならないだろうなと思えるので。

 というか、友人関係になれたとしても、顔見知り寄りの友人であって、親友とかそこまでにはならなさそう。


 他の教師もなんていうか、アクの強いのばかりなのでレジーナの事は面倒を見る相手というより実験動物扱いされる可能性の方が高く思えてくる。


「精霊たちで面倒見るのは駄目なの?」


 イアの発言は、教師に任せるよりマシに聞こえた。


 レジーナはレスカが作った眷属である。

 彼女の寿命がどれほどあるかはわからないが、そこらの人間よりは長生きするだろう。

 スピカにとってのメルトやクロナのようなものをレスカが望んでいたのなら、末永く自らに仕える相手として作るのだから、そう簡単に死ぬような事はないはずなので。


 であれば、同じく長い時を生きる精霊たちの仲間として迎えてやればいいような気もするのだが……


「そもそも今までの事から、彼女に対してあまり良い感情を持っていない。

 彼女自身が何かをしたわけではないが、生い立ち的な意味と、精霊たちの今までの事情からちょっとな……」


 そう言われてしまえば、これもごり押しはできそうになかった。


 レジーナはレスカから生まれた。

 レスカはスピカの存在を人質のように扱って、精霊たちにも余計な事ができないようにしていた。

 レジーナはレスカ本人でないといっても、言ってしまえば憎い相手の娘のような存在。

 何を思うでもなくしがらみも何もかもを無視して仲良くできるか……となれば、確かに無理そうではある。


「もうさぁ、やっぱ殺した方が手っ取り早いって」


 面倒になったらしきワイアットの発言に、周囲は何も言えなかった。


「いや、しかし……」


 スピカと念話しているのか、メルトの反応はワイアットの意見に賛成するようなものではない。


 スピカにとってのレジーナの存在は何だろう、とふとウェズンは考えてみた。

 レスカとは親友だったとスピカは思っていたわけで。

 その親友に頼った事で、彼女がそれに対して嫌気がさしたのか、はたまた最初から向こうは友人だと思っていなかったのかまではウェズンにはわかりかねるが、スピカにとってレスカの事をまだ友人だと思う気持ちが僅かにでもあるのなら、レジーナの事を簡単に切り捨てたくない、というのはわからないでもない。


 レスカ本人は既に処分された、という話だし、であればもうスピカとレスカが和解して再び仲良くやっていくというのはもう有り得ない未来である。

 レジーナをレスカのかわりにするつもりがスピカになくとも、それでもかつての友人の遺した唯一の存在……と考えれば、まぁ、レジーナすらいなくなれば、スピカの中でレスカにとっての思い出は何もかもが苦いものになってしまうのかもしれない。


 いっそレジーナがレスカの意思をしっかりと継いでこの世界を滅茶苦茶にしてやるー!! とやる気満々であったなら、スピカも自分の世界を守るための決断を下せたかもしれないが、そうではない以上迷いが生じても仕方のない事かもしれない。


 一刻を争うような状況で、決断をすぐしないといけないのならまだしも、レジーナの存在がそこまで悪辣でもないためにそうではない。

 それも迷いが生じる原因になっているのだろう。


 ある程度事情を知ってる相手に任せようにも、適任がいない。


 事情を知らない相手に任せるにしても、事情を説明しないままというわけにはいかないだろう。

 だが、事情を説明した時点でお断り案件。

 まさしく詰んでいるとしか言いようのない状況。



(……いやまてよ? 事情説明しなくても問題のない相手ならいいって事では……?)

『そんな都合のいい相手いるか?』


 ウェズンの思い付きに、オルドが突っ込む。

 ウェズンはそれに答えずに、

「はい。ちょっといいですか」

「どうした?」

「今適任者連れてくるんでちょっと待っててもらっていいですか?」


「いるのか? 適任者が!?」

「今はまだ適任じゃないけど適任にしてきます」

「それ適任者って言えるのか!?」

「無いなら作ればいいじゃない。良く言われてるでしょ」

「そ……えぇ……?」


 思い切り困惑するメルトに、しかしウェズンはそれ以上の事は言わずに席を立った。


「皆は待ってて」


 そう言われてしまえば、野次馬しについていくわけにもいかず。


 一同黙ってウェズンが部屋を出ていくのを見送るしかなかったのであった。

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