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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
十章 迷走学園生活

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お前今までなにしてた



 カッ……!!

 という音が聞こえてきそうな勢いで、光が降り注ぐ。

 肉眼でも見える勢いで集まった瘴気のせいで視界が黒く染まっていたはずが、今度は白く染まる。


 思った以上の眩しさに、ウェズンは目を開けていられなくて反射的に目を閉じていた。


 それでも瞼越しに感じられる明るさは、馬鹿みたいに眩しかった。

 目を閉じているのに太陽を直視した時のようで。


 目を閉じているのにそうまで眩しい状況に、ウェズンは手にしていた武器を落としそうになっていた。ぎゅっと握りしめるつもりでも、目の方に意識が向いていっそ両手で目を更に覆ってこの眩しさから逃れようと考えて――けれど、武器を落としてはいけないと思ったからこそひたすらに目をぎゅっと閉じたまま眩しさに耐えていた。


(どういう事だ……?)


 そして声に出さずにそんな事を思う。


 これがウェズンがオルドの力を借りて威力を増しに増した浄化魔法の効果である、というのならそんな風には思わなかった。

 だがウェズンはまだ浄化魔法を発動させていない。


 詠唱する余裕がないだろう事はわかっていたから、無詠唱で発動させるつもりであったが、しかしまだ発動はさせていないのだ。

 では、ウェズン以外の誰かが発動させた……と考えても不自然すぎるのである。


 アレスやワイアットならそこそこ威力高めの浄化魔法を使う事はできるが、しかしこうまではならない。イアだってそうだ。

 ザインはむしろ自分の浄化魔法でも追い付かなかったので、彼は無理だし、シュヴェルもまぁ同じようなもの。


 この中で一番浄化魔法の力が強いのはウェズンである、という自覚があった。


 だがそのウェズンがまだ浄化魔法を発動させていないのである。



 ではこれは一体……と思うのも当然だろう。

 それ以外の――レジーナがやった、という可能性を考えるが、そもそも瘴気を集めて作った番人に狙われた時点で、浄化魔法を使えば対処可能だったのではないかとも思える。

 しかしレジーナはそんな事をした様子もなければ普通に怯えてまったくもって使い物にならない状態だったので、彼女が今更のようにこうも強大な浄化魔法を発動させたとは考えにくい。


 なんて考えているうちに、呼吸がしやすくなったのを感じる。

 どうやらすっかり完全に浄化されたらしい。


 そこから遅れて瞼越しの馬鹿みたいな眩しさも徐々におさまってきた。

 恐る恐る目を開けてみれば、空が青い。

 この大陸に来た当初は曇り空であったはずが、しかしそれすら吹っ飛ばしたのか旧市街地を中心にぽっかりと丸い青空が広がっているのである。


(空から浄化魔法が……?)

 いやしかし、雲を吹き飛ばしてまで……? 浄化魔法はあくまでも瘴気を浄化するものであって、そんな効果あったか……? という当然の疑問もよぎる。

 しかし、少なくとも今の現象が起きる前まで空はどこまでも続く曇り空であったのは間違いない。

 それが突然、それこそ旧市街地の中心部の穴のようにぽっかりと青空が広がっているのだ。不自然にも程がありすぎる。


「一体なんだったんだ……?」


 眩しさがおさまって、アレスも目を開けたのだろう。

 瘴気を一切感じられない清浄さに困惑した様子である。


 一番影響を受けていたザインはというと、まだ目を閉じたままではあったが、思い切り深呼吸をしていた。先程までは空気も重苦しい感じだったし、そうでなくとも呼吸をするたび瘴気が体内に入り込んでいたようなものだ。瘴気耐性がそこまで高くなかったのであれば、そりゃあ苦しくもなろうというもので。


「おいチビすけ平気か?」

「だからチビって言うな自分の図体がおっきいからって。けほっ」


 イアは瘴気耐性が低いわけではなかったが、流石に突然増した瘴気を体内に取り込むような状況になっていたし、息を一時的に止めたところであまり効果はなかったのだろう。

 そうでなくともイアは小柄なので、全員が同じ量の瘴気にあてられたと考えたなら、イアだって相当瘴気汚染を受けた事になってしまう。

 耐性が低いザインが立っていられなくなるレベルだったので、もしイアの瘴気耐性がザインと同じくらいであったならとっくに倒れていただろうし、そうでなくとも異形化が始まっていたかもしれない。


 見ればアレスもワイアットも無事のようだ。

 ただ、やはり何が起きているのかをわかっているわけではないらしい。


「え、何? 何が起きてるの……?」


 そしてレジーナの反応からして、彼女が何も理解していないのもわかってしまった。


 そうなると、この場にいる誰かが何かをした、というわけではない事だけは確実で。

 まさか神の奇跡だ、などというわけではないだろう。


 そもそもそれならとっくに今頃スピカがこの場に登場していてもおかしくはない。

 けれどスピカが現れそうな気配も予感も何もなかった。


 ただただ困惑するだけの奴しかいないのである。ウェズン含めて。



「まったく……もっとここぞとばかりのところで登場するべきかとも思ってたのにさぁ。

 なんなのお前、ぐだぐだにも程があるだろ?」


 なんて思っていたら。


 呆れたような声と共に、現れたのである。


 スピカではない。

 それどころか、ウェズンにしてみればすっかり忘れ去っていた存在だった。


「リィト……!?」


 そういや以前はちょくちょく姿を見ていたけれど、気付けば見なくなっていたのでウェズンからすればどうしてここに……!? という気持ちだったし、イアもそうだった。


「やぁやぁ久しぶりー。元気そうだね?」


 やや戸惑ったままの者がほとんどの中、ただ一人だけ。


 ワイアットだけが呑気にそう言ってのけた。


「うわ軽いなー、まぁいいけどさ」


 そして気付く。


 そういや、リィトとワイアットは友人だとか言ってなかったっけ……? と。


 学園と学院が敵対していた時であれば、この状況は危機感を持たねばならないところだが。

 しかし今、ワイアットたちと敵対する意味はない。神前試合も既に終えているし、ここで殺し合う必要はない。

 だからこそ、リィトがこちらと敵対する必要も今のところはないわけで。


 とはいっても、突然現れた事にかわりはない。


「なんでここに……?」

「なんでも何も、そういう指示を出されてたからに決まってるだろ?」


 肩を竦めて言うリィトに。


「指示? 誰に?」

「誰ってうちの学院長にだけど?」

「……クロナが?」

「あ、あー、うん、ちょっとそっちの状況教えてもらえる?

 こっちは潜伏していかに存在がバレないようにってそっちに集中してたから、そっちの状況よくわかんないんだよね。ワイアット、とりあえずそっちの学園の面々と今戦ってる感じじゃなさそうだけど?」

「そうだね、現在は顔を見たら殺し合えってわけじゃなくなってる」


 そっちの状況、と言われてもそもそもどこから把握できていないのかがわからず、ウェズンは友人なんだったら……と対応をワイアットに丸投げする事にした。

 任せたぜ! とばかりに親指をぐっと立てて頷くウェズンにワイアットがどこまでそれを理解したかはさておき。


「とりあえず、どこから話せばいいわけ?」

「学院が襲われる手前あたりからかな」

「気持ち的に大分前じゃん」


 まだそこまで日数的に経過したわけでもないはずだが、それでも。


 色々とありすぎたせいで、そこから? という感情はどうしたって消えなかった。


 レスカが学院に襲撃を仕掛けたという話はウェズンも聞いていた。

 結果として学院があった場所は戦闘の影響により崩壊レベルで使い物にならなくなってしまったし、そうなる前に学院の生徒や教師たちは学園がある島に避難してきたのは、ウェズンだけではない、学園の生徒たち全員が知るところである。何故避難してきたか、という理由は知らなくても、既に学院の生徒も学園と同じ島内で学んでいる状況であるのだ。


 度々諍いが起きていても、以前ほど殺伐とはしていない。


 ワイアットからの説明を一通り聞いて、リィトはそういう展開かぁと呟いた。


「それで、そっちは今まで何してたって?」

「何って言っても……あ」


 リィトが手にしていた増幅器が、突然割れた。

 ピキッという音がしたと思ったら、直後粉々である。


「うーん、まぁ、結構な勢いで力開放したもんなぁ……」

 しゃーないしゃーない、と自己完結して、それからリィトは今まで何してたって言われてもそう大した事はやってないよ、と言った。

 そうは言われても、それではいそうですかと納得するわけにもいかない。


 ワイアットが報告二度手間になって学院側と学園側で同じ事聞かれる前に正確に答えな、と言った事で、その可能性が普通にあるとなったのだろう。

 いや本当にそこまで御大層な事してないんだけどなぁ……とリィトはしぶしぶ改めて説明を開始したのである。

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