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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
十章 迷走学園生活

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やってきた番人



 イアから話を聞いたウェズンとアレスは、とりあえず後でイアにも職員室に来るように伝えて、一足先に職員室にやって来ていた。

 学園祭を満喫している周囲に今すぐ知らせなければならない話ではないにしても、教師には話をしておくべきだろう気がしたので。


「――成程な、イアがその外部の奴に絡まれたってのはまぁ、理解した。

 それだけならわざわざこっちに話を持ってくる必要はないが……」


「イアは知らない人だって言ってたので、間違いなく人違いだろうとは思うんですが……」

「番人を送る、っていうのがな……」

「はい」


 人違いだろ、で放置できなかったのがそこである。


 番人。


 ウェズン的にはここ最近ちょこちょこ耳にするようになった言葉だ。


 少し前にテラプロメに行った時に、かの空中移動都市を守護する者もまた番人と呼ばれていたし、そうでなくたってここ最近になって神の楔に封じられていたらしき存在もまた番人だ。


 そこに来て更に番人とやらを仕向けられるとなれば、万が一を考えると放置するわけにもいかない。

 イアに絡んだ相手の言う番人がこちらの思う者でなかったとしても。


 ウェズンとしては関係が皆無、ではないんじゃないかなぁ……と思っているのだが。


 そもそも、番人を送るというのがおかしな話だ。


 番人とは本来守り手のような役割を与えられた者のはずだ。

 都市を守るにしても、門を守るにしても、はたまた聖域と呼ばれるような土地を守る者であったとしても。

 そういうところに番人がいる、というのなら別におかしな話ではない。


 守護者としてみるのなら、おかしいとは思わないはずだが、しかしそれを送り込んでこちらに対して攻撃を仕掛けるような言い分であるのなら、途端におかしく思えてくる。

 これが刺客を送り付けるとかであれば、ウェズンだって違和感を持つ事もなかったし、それならそれで普通に警戒する流れになっていた。

 ところが番人、なんて言われた事でその警戒は一段も二段も上に修正される形となってしまったのである。


 イアにそう言った人物の特徴を聞いたところで、女であるという事は判明しても帽子をかぶり、服装も目立つようなものではなかったが故にハッキリとした特徴がないので、こちらから相手を探すというのも難しい。


 やって来たイアに改めて確認してもそれは変わらなかった。

 髪の色も帽子に隠れてわからず、言えたのは精々目の色くらいだ。

 その目の色だって、赤、と言えたがそれだけで。

 もっと他に特徴らしいものがあればまだしも、それだけの情報ではこちらも探しようがない。


 赤い目をした女、というだけならこの世界に果たしてどれだけいるというのか、という話だ。

 候補が数十人程度で済めばまだしも、それどころではない。地道に探すにしても、探し当てる前に逃げられるか、はたまた向こうから仕掛けてくる方がきっと早い。


「こっちから手の打ちようがないなら、放置一択だろ」


 考えた結果、特にこれといった案もなかったのでテラは早々に決断を下した。

 どうしようもないものに関してはどうにかなるまで放置で。


 消極的な決断と言えばそうかもしれない。

 だが、積極的に物事を解決に導こうにも情報が不足しすぎている。


 そうなれば、結局のところ事態が動くまでは待ちの姿勢でいるしかないのだ。


「しかし……番人、なぁ……」


 テラのなんとも言えない声に、ウェズンたちが言える事はほとんどなかった。


 ――学園祭も学院祭も、その後は特に何があるでもなく、無事に終了した。

 生徒同士でのいがみ合いも殺し合いも特に発生する事もなく、多少のトラブルがあったとはいえそれらは日常的なもので、解決できる範囲での出来事だった。


 どちらの祭りも終わって、日常が戻ってくる。


 そうは言っても既に神前試合も終え、今後に関しては生徒次第だ。


 神前試合に参加するのを目的として入学した者たちであるのなら、このまま卒業する事も可能だし、そうでないならそのまま継続して学園なり学院に滞在も可能。

 ただ、神前試合に関しては既に神が変わった事もあって、以前のように願いを叶えてもらえる可能性が低くなった、という部分はほとんどの生徒が知らないままだったが、それでも方向性が変わった事でその部分が消えた事は伝えられていたためか、ウェズンたちよりも先に在籍していた生徒たちの多くがそのまま卒業する流れとなった。


 残っているのは、やりたい事があって在籍を続けた方が得だと判断した生徒たちだけだ。


 ウェズンはと言えば、進路に関して全く何も考えていなかったため、まだ卒業せずに残る予定である。


 卒業したとして、目的がないのだ。

 イアに魔王にならなければ世界が滅びる、と言われはしたものの既に原作からは間違いなく遠ざかっているはずで、そうじゃなくても神前試合で魔王というポジションでもって戦ったのだから、どのみちもう達成していると考えてもいい。


 そういう意味で言うのなら、原作を元に作られたゲームのようなバッドエンドもないはずだ。

 ただ、じゃあこれでこの先世界が平和であり続けられるか、というのはまた別の話なわけで。


 番人が力を強めた結果神の楔の使用がこの先できなくなる、なんて可能性だってあるかもしれないし、そうでなくともイアに絡んできた相手が言った番人がどういうものかもわからない。

 なんだったらイアの知らない続編みたいなものがあってそっちに突入してシーズン2に移行しました、なんてオチだってありえる。

 まぁもしそうだとしても知りようがないのでどうにもできないが。


 考えても意味がないとわかっていながら、気付くと考えてしまうのは最早癖と言ってもいい。

 情報が中途半端だったから、というのもあるだろう。

 もしイアの言う原作をウェズンも知っていたのなら、ここまであれこれ考える必要なんてなかったのだから。


 どのみち、イアに絡んだ人物の居場所を探そうにもどこにいるとか、そういった情報は一切ない。

 であれば、テラが言うように向こうの出方次第であった。



 ――日々、とにかく油断はしないように……と気をつけていたし、念のため巻き込まれる可能性の高い相手にはさらっと話をしておいたりもした。

 正直それくらいしかできる事はなかったとも言う。



 それが良かったのかはわからない――が。



「もしかしてアレがそうか……?」

「いやお前、アレ神の楔にいた番人じゃないか?」


 殺し合う必要もなくなったので、そうなれば学園と学院の生徒は良き好敵手とも言える。感情を抜きにすれば、という一言がつくけれど。

 それもあってレイは学院の生徒でもあるシュヴェルと手合わせをしていたのだ。

 同じクラスにしろ他のクラスにしろ学園の生徒と戦う事は授業でそれなりな数こなしてきたし、ある程度相手の癖も把握しつつあったが故に、そういうのがまだそこまでない学院の生徒を相手にしたかったのだ。


 神前試合でレイとシュヴェルは戦い合ったのだが、レイはどちらかと言えばワイアットと主に戦っていたのもあって、シュヴェルと攻防を繰り広げたのは最初の一瞬程度だけだった。その後はお互い入り乱れ混戦状態になってアレスがシュヴェルと戦っていた。その時点でレイもワイアットの攻撃を捌いていたのでシュヴェルの相手に戻ろうとか、そういう余裕はなかったので戦った、といっても相手の出方とか癖とかそういったものがまだほとんどわからないために。


 あ、これ丁度いい相手じゃね?


 そういう考えに至るのは、当然の流れでもあったのだ。

 今そう思わなくてもそのうちそういう結論に至ったのは間違いじゃない。


 そして向こうも同じような事を考えていたらしく、ちょっと手合わせしようぜ、の誘いにホイホイ乗ってきた。



 学園の闘技場なり訓練室にしても、学院であっても周囲のヤジが煩そうだなぁ……と思った事もあって、どちらの建物からも遠い島の端っこでお互い力の限り殴り合う、という事をして、満身創痍状態になってここらでやめとくか……となり、二人揃って戻る途中であったのだが。


 道とも呼べないような場所、二人の進行方向に何かが立ち塞がっていた。


 人の形をしているものの、しかし人間ではないと断言できるフォルム。


 丸い頭。ごつい胴体。肩の部分が丸く、そこから伸びる腕は少し細いが、手の部分は大きい。

 球体人形を少し不格好にしたような姿。ゴーレムに似ているが、ゴーレムとは違うと雰囲気で察せられる代物。妙な威圧感があるとでも言おうか。


 レイもシュヴェルも少し前に神の楔に宿る番人と戦った事はあるがために、大きさこそ違えどもそれが番人だと理解できたのだ。


 ただレイは少し前にイアとウェズンから謎の人物に番人送り付けます宣言を受けた話を聞いていたので、神の楔がある場所でもないところにそれがいた、という事からそっちを思い浮かべた。

 シュヴェルはその話を知らなかったので、普通に神の楔の番人としか思っていなかったようだが。


 神の楔にいた番人と見た目こそ同じだが、今目の前にいるソレはレイやシュヴェルよりも大きかった。

 以前戦った番人はもう少し小さかったので、もしかしたら個体差があるのかもしれない。


「確かに神の楔の番人と見た目は同じだけどここにはないだろ。

 それとも、神の楔から離れても行動できるって事か……?」

「あぁ、確かにこの島にも神の楔はあるけど、そこは真っ先に倒したって聞いたな……」


 番人が神の楔から離れて自由に動くのであれば、ここにいたとしてもおかしくはない。

 だが、神の楔の番人の存在が明るみに出ても、そういった話は聞いた事がなかった。


 であれば――


「この島に存在する神の楔にいる番人ではない……って事はだ」

「どこかから来たって事か。……戦うしかないってことか?」

「そうだろうよ。単純に遊びに来ましたってオチはないだろ流石に」

「それもそうか」


 ゴキ、とシュヴェルが首を回し音を鳴らす。


 軽く腕を回して前に進み出ると、番人は片手を前に出した。

 そうして手のひらを上に向けた状態で指を折り曲げる。

 それはどう見てもかかってこい、の合図だった。


「うっかり迷子になった、ってオチはこれでなくなったな」

「そんな間抜けな番人がいてたまるか」


 お互いのその言葉が合図になったわけでもなかったが。


 二人はほとんど同時に番人に攻撃を仕掛けていた。

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― 新着の感想 ―
ちょw いきなりw 話しかけて意思疎通とか、情報収集とかとかとかwww まあ、認知度によって、強さ変動とかの理不尽あるかもだから、見敵必殺の脳筋プレイが最適解なのかもだけども(笑)
ちょw いきなりw 話しかけて意思疎通とか、情報収集とかwww まあ、認知度によって、強さ変動とかの理不尽あるかもだから、脳筋プレイが最適解なのかもだけども(笑)
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