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僕が将来魔王にならないとどうやら世界は滅亡するようです  作者: 猫宮蒼
九章 訪れますは世界の危機

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思ったよりも変わらない



 確認したうえで分かった事なんて、結局今までとそこまで変わった事がない、というだけだ。


 ただ、逃げ出したレスカがいずれまたいらんちょっかいをかけてくる可能性はどうしたって消えなかったためウェズンはそこだけは確認するべく問いかけたものの、スピカは問題ないとあっさり答えた。


「……なんで?」

「わたしたちは神だ。世界を創る事をゆるされた、な。

 では、何にゆるされていると思う?」

「え、そりゃその場合はそれよりもっと上の……」

「あぁ、創造神がいる。つまりは、わたしたちにとっての親と言ってもいい」


「え、って事は神様も両親がいてそっから生まれてるって話?」

「いや、創造神は単体だ。産むのではなく創る」

「あー、大体把握」


 人間みたいに父親母親が必要ってわけではなくて、文字通り創るって事か、とウェズンはざっくりと納得する。前世でもそういうのは創作物でよくある話だったし、理解できないわけではない。


「わたしたちは生まれて間もなく、他の神の創った世界で暮らす事もあれば、そうではない場合もある。

 ただ、成長してある程度力を認められれば自分で世界を創る事もゆるされるわけだ」


 大抵はそうやって自分で創った世界で過ごす流れになる、と言われて規模のでっかいマイホームだなとウェズンは内心で突っ込んだ。

 マイホーム、という言葉が適切なのかは微妙なところだ。

 自宅に家族以外の生命体がやたらいるわけだし。

 いや、世界全てが自宅というわけでもないんだよなこの場合……と考えて、人間の枠組みに当てはめるのがそもそも間違いなのか……? となってしまった。


 いくら人の形をしているといっても、中身までもがそうというわけではない。

 うっかり見た目のせいで同じように考えてしまいがちだが、その考えは危険だな、とウェズンは内心で少しばかり気を引き締める。


「で、今回の件、上からすると割とアウト案件なんだ」

「そうなの?」

「あぁ、多少の助言とか、そういうのは他でもよくあるから問題はない。関わりを制限されてるわけでもないから。

 ただ、自分が創った世界以外を好き勝手するのはダメなんだ。それやっちゃうと他の世界同士での争いに発展するから」

「神様大戦が勃発するってわけか」

「そうなる。

 で、レスカのやらかしはそういう意味ではアウトだから、上に報告すればそれで済む」

「逃げられっぱなしにならないの?」

「上も上で忙しいから、報告がなければ放置だろうけど、わたしはレスカを見逃すつもりはないから既に報告はした」


「仕事が早い」


 感心したようにウェズンが言えば、スピカは眉を下げ、困ったように笑った。


「遅かれ早かれ、レスカは裁かれる。わたしに対しても、上からお叱りはあると思うが……世界を管理するのに相応しくない、という理由で神としての権限を失うまではいかないだろう。精々ちょっと詳しく報告を定期的にやらないといけないとは思うが……」


「それをこっちが直接知る事ができないのは本当に解決できたのかって疑問が出るけど、これ以上被害がないならそれでいいかな」


「そういってもらえると助かる。

 あぁそうだ、ところで――」


 学園と学院の戦い。神前試合。

 変化はそれなりにある。

 そしてそれらに関して、生徒たちにも知らされた情報は勿論あるし、中には真実ではないものも含まれていたけれど。


 スピカとそれらの話をして、いやそこは事実なのかよ、とウェズンが突っ込んだのは神前試合と結界における関連部分である。


 世界の延命、結界の解除、そのための神前試合だったはずだ。

 レスカからスピカに戻った時点でそれはもう必要のないもののはずで。

 だが神前試合は命の奪い合いではないものの、競い合いという形で残った。


 それについてテラはまぁ色々あるんだよ、と詳しくは後で詳細記したやつ確認しろと言っていたわけだが。


 神の楔には、どうやら番人とやらが宿っているらしい。

 今の今まで結界で世界を分断していた楔であり、便利な転移装置でしかなかったブツにそんなもんが宿ってると言われたって、ウェズンだってびっくりである。


 どうにもレスカが仕込んだ嫌がらせのようだが、神前試合を行う事で、彼らの力は抑えられていたのだとか。

 故にわざわざ出てくる事もなかったらしい。

 本来ならば番人の出番はないまま終わるはずだった。


 ところがレスカは世界から逃げ出した時、そこら辺解放したらしく。


「神前試合は、奴らの力を抑える儀式でもあった。それ故になくす事ができない。

 やらないとあいつらの力、馬鹿みたいに増大するから。ちょっと試しに番人呼び出して戦ったけど、相当な強さでな……あれは力を抑えた上で倒さないと、下手をすればこっちがボロ負け確定する。

 神前試合をやればとりあえず抑えられるから、やるしかない。

 毎日何かしないといけないわけじゃなく、十年に一度の神前試合というのであればそう犠牲も出ないし」


「神前試合の殺し合いから競い合い部分はこの先何らかの脅威が出た時のための、とかそれっぽい言葉で飾られてたけど実際マジで脅威なのか……」

「あぁ、正直な経緯を知らせる事になると一体どれだけの長い歴史になるかもわからないから、ざっくり纏めたけどそこは嘘じゃないんだこれが」



「一応モノリスフィアに流れてきた情報確認したけど、思ってたより嘘が少ない」

「嘘じゃないのに嘘くさいのなんでだろうな」

「そう言われましても……」


 正直理由なんて全部でっちあげかと思っていたのに、いざ内容を確認してこうして今スピカから聞いた部分も含めると、確かに言葉を濁した部分もあるけれど割と本当の事を言ってる部分が多すぎて、正直ウェズンは内心で引いた。えっ、でっちあげとかそこまでしてない……だと……!? レスカの事を明かさないままにしても、ならばそこら辺をぼかすべくもっと嘘がまじってたっておかしくないはずなのに。

 真実ではないが概ね事実ってどういう事なんだろう。


「あぁ、そうだ。確かに問題は山積みのままだが、それでもマシになった点はある」

「……何かほかにあったっけ?」


 思わず「うむむ……」と唸りそうになっていたウェズンに、スピカはわざとらしいくらい声を弾ませた。


「神前試合に関してはともかく、それ以外の事は学外の有志の手助けも今まで以上に気軽にできるようになったと言える」

「……そこそんな変化あるっけ……?」


 いまいちピンとこない。


 学外授業と称して確かに各地に出向いては魔物退治に精を出したりもしていたけれど。

 それ以外の事もあるにはあったが、戦う事の方が多かった。

 現地調査とか瘴気汚染度チェックとか、そういったものもあったけれど大体それと魔物退治もセットでついてきたようなものだし。


「今までは生徒しか関われないような部分も、卒業生とか冒険者とか、学園や学院を離れた者も手を出せる部分が増えた。……まぁ、それはやり方を間違えたら死人が増える事になるから慎重に事を進めるという点ではあまり変わらないかもしれないが」

「……まぁ、思ってたより事態が悪化していないし、やる事が増えたとしても減った部分もあるから……結果的に良い方に転がった、って思っておくべきかな」

「あぁ、まだ何も終わっていないがそれでも。

 進展したのだと前向きに思っておくべきだろう」


「悲観しっぱなしよりはマシか……」


「他に何かあれば、また連絡する。全体に連絡できるかはわからないが……」

「内容によりけりだもんな」

「あぁ。レスカがやらかした事でわたしが把握しているもの以外に関しても調べておかないといけないし」


 やる事はたくさんある、と嘆く様子のスピカにウェズンはただ頑張れ、としか言えなかった。

 スピカが自由の身になって間もない。だというのに、既に上に報告して、ついでに神の楔に仕込まれていた番人とも戦っているとか、その他にもいくつかの事を解決させるために動いている様子だし何もしていないわけではないのだ。これ以上あれこれ言われたとして、手が回らなくなる可能性の方が高い。


 それに、と思う。


 とっくにイアが知る原作とやらから遠ざかったようなものだったとはいえ、ここまで来たら別に自分が魔王に選ばれなくても問題ないのではないか、と。

 仮に選ばれたとしても、命の奪い合いではなくなったので気が楽になったのは確かだ。


(ま、気が楽になったからって油断してそこで死んだら意味ないんだけど)


 思った以上に忙しくしているらしいスピカに、これ以上時間を使うのもなとウェズンはそれじゃあそろそろ……と席を立った。


 他に何かあれば、モノリスフィアで連絡をすればいいだろう。なんでか連絡先を入力されてしまったので。


 こちらから連絡をするよりも、向こうから厄介ごとを頼まれる方が先の予感がするのは否定できなかった。


 いやー、でも僕単なる一生徒だし、なんて考えたらそれはそれで何かのフラグになりそうだが、そう考えないようにしたところで。


(結局何かのフラグを立てた気しかしないんだよなぁ……)


 現時点でとても嫌な予感がするとかではないのが救いと言えば救いだろうか。


 レスカの事は上に報告したとの事だが、もしその件が片付いたのであれば。

 それってこっちにも連絡来るんだろうか……?


 神様時間で下手したら解決するのに数千年先なんて可能性もあり得るけれど。


 それに関しては早い段階で片付くといいな、とは思う。

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― 新着の感想 ―
ここまで読んできたがここ最近の展開は結構意外。 もしかして最終回が近い…?
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